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都市部の流行から読み解く、『進化』し続けるタイ ①


タイ・バンコクのデパート内にある人気カフェ「ROAST」

食事よりも高い!?タイのコーヒー
 2016年11月、タイ大手カフェの「Cafe Amazon(カフェ・アメィゾン)」が福島県に第1号店を構えた。Cafe Amazon公式サイトには「単なるカフェではなく、福島の復興に向け、温かい光を照らす場所でありたい」との熱い思いがつづられている。一方、カフェとしてのこだわりも非常に強い。店ではタイから直輸入されたコーヒー豆を使用し、バリスタはタイから招聘するという徹底ぶりだ。
 読者のなかには、「東南アジアのコーヒー」と聞くと、タイよりもまずインドネシアやベトナムを思い浮かべる方が多いかもしれない。しかし、近年タイの人々がコーヒーに傾ける情熱は、単なる「ブーム」と一言でまとめられないものがある。それはコーヒー一杯の値段にも如実に表れている。たとえば、タイでは50バーツもあれば屋台で一食分の食事を楽しむことができる。それにもかかわらず、昨今注目されるタイのコーヒーショップでは、コーヒー一杯がなんと100バーツ前後で提供されているのだ。
 なぜこのようなことが起きているのだろうか。一体、タイの人々は何に対してそれほどの金額を支払っているのだろうか。今回は、タイの人々のコーヒーやカフェに対する姿勢から、タイ社会の「いま」を読み解きたい。

屋台コーヒーからスターバックスへ!タイ・コーヒーの歴史
 国際コーヒー機関(International Coffee Organization)の統計によると、2015~2016年にかけての世界のコーヒー豆の消費量は934万トンで、前年と比べておよそ2.5%増加している。特に目を見張るのが、アジア・オセアニア圏での急速な消費量の増加だ。同機関によれば、2012~2016年におけるアジア・オセアニア圏のコーヒー豆消費量の年平均成長率(CARG)は4.5%で、これは、世界平均(1.9%)のおよそ2.5倍の成長率となっている。なかでも、タイはいまコーヒーブーム「第3の波」が来ているといわれ、注目の国となっている。
 「第1の波」は第二次世界大戦後、コーヒーの大量供給の時代が到来したことを指す。しかし、当時のコーヒーは今日「ガーフェー・ボーラーン(昔のコーヒー)」と呼ばれる飲み物だった。これはコーヒー豆の消費を極力抑えるために、焙煎時に黒糖や黒米などを豆に混ぜ、布製フィルターでドリップした後、練乳を加えて作られるタイの伝統的なコーヒーだ。
 1990年代初頭まで、タイのコーヒーはこのガーフェー・ボーラーンとインスタント・コーヒーの二択だった。しかし、1998年、「第2の波」がスターバックスのタイ進出によってやってきた。これ以降、欧米式の焙煎・抽出方法が一気に普及し、タイの人々はこれまでとは違うコーヒーの味に魅了された。ただし、当時タイの人々の購買力が急速に増していたことを考慮しても、それまで屋台のガーフェー・ボーラーンが20~30バーツ、国内チェーン店で45~60バーツで購入できたコーヒーが、スターバックスでは150バーツ近い金額で提供されるという事実は、タイの人々にとって一種のカルチャー・ショックだった。そのため、屋台のコーヒーや国内の安価なカフェ・ブランドも消えることなく、今日も人々の身近な存在であり続けている。
 このようななか、タイの大手カフェチェーンとして台頭していったのが、冒頭に紹介した「Cafe Amazon」だ。運営会社はタイ最大級企業、石油公社PTT。ガソリンスタンドにドライバー向けカフェとして設置したことによって全国に普及し、圧倒的な店舗数で利用者を増やした。しかし、彼らの強みは店舗の多さだけではない。ドライバーがターゲットであるため、量は多いが懐に優しい値段設定(一杯およそ35~65バーツ)にした。また、味もタイ人の好みを考慮し、昔ながらの甘い味になっている。一方、最近は高級感のあるデパートにも出店し、「The Amazon’s Embrace」としてブランド展開しており、欧米式カフェとタイの伝統的カフェの融合、あるいは「いいとこ取り」をするブランドとして、さらなる成長が予測されている。

 スターバックスに代表される欧米式カフェが進出したことで、タイのカフェは一気にバラエティー豊かなものとなり、これ以上の変化はないかのように見えた。ところが、近年タイにコーヒーブーム「第3の波」が到来し、タイのカルチャーはさらなる洗練とこだわりを見せている。いま、タイに何が起こっているのか。次回コラムで詳しく述べたい。


「都市部の流行から読み解く、『進化』し続けるタイ ②」はこちら


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