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花の都パリの悩み!「大気汚染問題」と「プラスチックゴミ問題」①


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環境に対する意識の高まり
 
 「環境」に関するトピックと言うと、アメリカのトランプ大統領が2015年に採択されたパリ協定から脱退する意思を表明し、世界各国から非難の声が上がったことが記憶に新しい。非難の声が上がったのは、アメリカのCO2排出量が世界でも2番目に多いといった理由が主なものであるが、やはり世界的に環境対策に取り組まなければならないという意識が強く芽生えていることも大きいだろう。
 フランスで最近話題となっている環境に関するトピックとして、「パリでの大気汚染」と「プラスチック容器使用の禁止」があげられる。

パリでの深刻な大気汚染

 花の都“パリ”で中国の北京と並ぶ、深刻な大気汚染が起こっている。いくつかある原因のうち、ヨーロッパ特有とも言えるものとして、「ディーゼル車」や「暖炉や薪ストーブなどの暖房器具」の利用があげられる。具体的にどのように大気汚染の原因となっているのか1つずつ見ていく。

ディーゼル車がもたらす環境への影響
 ヨーロッパでは、陸続きであるため日本よりも国土が広く、長距離ドライブをする人も多いため、燃費の良い「ディーゼル車」が好まれる。「ディーゼル車」は、ガソリン車と比べるとCO2の排出量が少ないと言われているが、その代わりディーゼル車から排出される黒煙にPM(粒子状物質)・NOx(窒素酸化物)と呼ばれる物質が含まれ、それらは大気汚染の原因となっている。環境への影響と共に懸念されているのが、それらの物質による健康被害である。それぞれどういった影響があるのかと言うと、PM(粒子状物質)は呼吸器系の疾患やガンに関連があると言われ、NOx(窒素酸化物)は喘息の原因と知られており、喉や肺にも悪影響があるとされている。
フランスで実施されている自動車の交通量規制

 これまでフランスでは、大気汚染が悪化した際に行う自動車走行規制として、ナンバープレートが偶数であるか奇数であるかによって交通量を制限していた。
 2017年1月より新たに、自動車の種類や生産された年、排気ガスの有害物質の含有量などによって色分けした6種類のステッカーを車のフロントガラスに貼ることが義務付けられ、それを利用した交通規制が行われることとなった。6種類のステッカー分類にあてはまらない様な古い車両は、平日の8時から20時までパリ市内への乗り入れが禁止されている。
 この政策により、大気汚染の原因となっている排気ガスの量を減らすと共に、古い車を減らしていき、少しずつ電気自動車やハイブリッド車などのエコカーにシフトしていくことが期待されている。また、マクロン政権のユロ環境相は今年7月、2040年までにガソリン車・ディーゼル車の製造を禁止することを発表しており、こちらの政策でも電気自動車などのエコカーを推進していく方針を示している。
 このように、フランスでは大気汚染に対して目に見える形で様々な対策を実施している。フランスと比べると、日本の大気汚染レベルはそこまで深刻ではないのかもしれないが世界で決められた条約を遵守したり、日本での規制などを決めるといった取り組みだけではなく、ステッカーのように、国民にとって、「自分は今、環境対策に取り組んでいる」ということが分かりやすい大気汚染対策を実施してみてはどうだろうか。
暖炉がもたらす環境への影響・見送りとなった「暖炉の使用禁止」

 ディーゼル車に続き、大気汚染の原因としてあげられるのが「暖炉」である。暖炉は、使用に伴いPM(粒子状物質)やススが発生し、それは大気汚染の原因となる。
 2014年、パリとその近隣7県で構成されるイル・ド・フランスは、大気汚染を防止するため、パリ市内での暖炉の使用を禁止すると発表した。環境エネルギー当局は、フランスでは毎年42,000人が大気汚染物質が原因で死亡しており、その大気汚染物質の原因の1つであるPM(粒子状物質)の23%は暖炉によるものであるとし、暖炉の使用禁止は、有害な微粒子を削減するためだと主張している。しかし、別の団体は暖炉がもたらす影響は4%で、大半を占めるのは自動車からの排気ガスであると主張し、全く違う数字が並んだ。実際、フランスで暖炉を所有している家庭のうち実際に使用するのは10%程度と言われており、23%という数字に疑問を抱くのは普通である。
また、この法案に対して、暖炉の煙突掃除業者などといった関連会社が
・祝日など年に数回しか使われないものの使用を禁止するとはおかしい
・それならディーゼル車の利用を禁止すべきだ
等と言った理由で猛反対し、当時の環境相であるロワイヤル氏も「ばかげたものだ」と言い放ち、フランス政府は、結果的にその法案を施行せずに見送っている。
 暖炉は、大気中のPMが増加してしまうのにそれほど大きな要因ではなかったのかもしれないが、上記にある大気汚染が原因で亡くなった人数を考えると、早急にPM(粒子状物質)を減らす努力をしなくてはならない状況である。大気汚染対策の技術を含む環境ビジネスなどに取り組んでいる企業はフランス進出のチャンスがあるのではないだろうか。

(2017年10月)



※プラスチックに関する内容は、次回掲載致します。
「花の都パリの悩み!「大気汚染問題」と「プラスチックゴミ問題」②」はこちら

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