バンコクの地震被害を受け地震保険料が値上げ(4月1日)
3月28日にタイで発生した大規模地震を受け、タイの保険業界では自然災害リスクへの対応が見直されており、無料の地震保険は今後提供
されなくなる見通しである。
タイ損害保険協会(TGIA)によると、地震やその他の自然災害リスクの高まりを受け、地震保険は火災保険とは別に取り扱われるように
なり、これまで無料で付帯していた地震補償の提供が停止される予定である。さらに、保険料や自己負担率の引き上げも検討されている。
TGIAは、今回の地震はタイにとって前例のない規模であり、今後は災害が現実的な脅威となることを強調している。従来、地震のような深刻な災害は起こり得ないことが前提とされており、保険会社は販売戦略として、地震や洪水などの災害補償を、建物や高層ビル、住宅の火災保険とセットで提供することが多かった。
今後は、新たな保険方針として、プロジェクトごとのリスク評価の厳格化や高層ビル向け保険の自己負担率の見直しが検討されている。その一つとして、独立した地震保険の導入、保険料の引き上げ、自己負担率の調整などが検討されている。例えば、Dhipaya Insurance社は現在、多くの高層ビルの構造保険に 20% の自己負担を設定しているが、 今後は30%への引き上げや案件ごとの調整を行う可能性があるとしている。
また、まだ建設が開始されていないプロジェクトには、施工会社の資格などをより厳格に評価し、既存の高層ビルに対しては用途や入居者の特性を踏まえたリスク評価がなされる。
今後、気候変動により将来的に災害頻度・規模が増すことが予想されており、政府・民間企業・国民が連携して備える必要がある。保険は
その経済的負担を軽減するために不可欠であり、複数の保険会社と再保険会社が協力してリスクを分散する仕組みの構築が今後ますます重要となるとしている。
トランプ関税の影響でタイの国内総生産が約2%減少する見込み(4月3日)
タイ商工会議所大学(UTCC)は、米国による相互関税により、タイ経済は3,590億バーツの損失が発生し、国内総生産(GDP)が約2%減少する可能性があると発表した。
ドナルド・トランプ大統領が発令した大統領令の付属文書によると、4月9日に発効されるタイに対する相互関税は37%に達する。
UTCC会長は、今回の関税措置は、鉄鋼、鉄鋼製品、アルミニウム、自動車・自動車部品の4製品に影響を及ぼすと述べた。
これらのカテゴリーの2025年の総輸出額は47億3,000万米ドルと予測されていたが、関税の影響で40億8000万ドルに減少し、22億バーツ
相当の損失が生じるとみられている。
また、中国が米国輸出の代替市場を模索していることから、中国製品がタイ市場に流入する可能性も高まり、機械、家具、電子機器、繊維
などへの影響も懸念される。地震による損失も加えると、経済的損失は合計で3,750億バーツ、GDPは2.02%の減少となる見込みである。
こうした背景から、UTCCは今年のGDP成長率予測をわずか1%に引き下げており、政府は生産者を支援するために緊急措置を講じる必要が
あるとしている。
タイ政府が「サイバー犯罪の防止・抑制」、「デジタル資産・仮想通貨取引」に関する緊急法令を改正(4月5日)
タイ政府は、サイバー犯罪の防止と抑制、デジタル資産や仮想通貨などの暗号資産取引に関する2つの緊急法令を改正すると発表した。
2つの法令の修正案は4月8日に内閣に提出され、国家評議会で検討された後、水かけ祭り(4月13~15日)の前に施行する見込みである。
2023年制定のサイバー犯罪の防止と抑制措置に関する緊急法令改正では、金融機関と通信事業者が詐欺被害に対してより大きな責任を負う
ことが義務付けられた。2018年制定のデジタル資産や仮想通貨などの暗号資産取引に関する政令改正は、サイバー犯罪対策の補完として機能
するもので、証券取引委員会と財務省が監督する。
この改正では、損害が証明された場合、裁判を経ずに被害者へ即時返金が可能となる条項が含まれており、返金に関する手続きはマネーロンダリング防止局がガイドラインを示すとしている。なお、これらの改正法令は、王立官報に掲載され次第、即時効力を持つとしている。
Braskem Siamが環境に優しいバイオPEの生産工場の建設を計画(4月7日)
BraskemとSCG Chemicals (SCGC)の合弁会社であるBraskem Siamは、アジア初となる環境に優しいバイオベースポリエチレン(バイオPE)の生産工場を建設する計画を発表した。
同社は、Mitr Phol Bio Fuelからエタノールを購入し、Braskem SiamはSCGC向けにバイオエチレンを生産、SCGCはそれを原料としてリサイクル可能でカーボンフットプリントの低いバイオポリエチレン(Bio-PE)を製造する予定である。
バイオPE は、食品包装、パーソナルケア、玩具など、様々な業界で使用されている。同社は、化石燃料由来のエチレンに代わり農産物由来のエタノールからバイオエチレンを生産する計画を立てており、ラヨーンのマプタプット工業団地での工場建設を検討している。検討中の工場は年間20万トンのバイオエチレン生産を目指しており、工場の完成は2027年を予定している。なお、バイオエチレンの生産にあたって必要なエタノールは年間4億5,000万リットルと見込まれており、同社は国内外からの調達を進めている。
SCGCによると、この新工場はアジアおよびヨーロッパ市場での環境配慮型ポリマー需要の増加に対応すると期待されている。
いすゞのタイ現地代理店が50億バーツのピックアップ基金に期待(4月8日)
政府は、国内ピックアップトラック販売を拡大するために50億バーツの購入支援基金を承認した。停滞する市場と厳しい米国の自動車関税の中で、自動車メーカーと自動車部品メーカーへの救済措置となる。
内閣は中小企業向けのピックアップローン支援として、50億バーツの補助金を割り当てることを承認した。これに対して、いすゞのタイ現地代理店であるTri Petch Isuzu Salesは、政府の50億バーツの補助金がピックアップローンを促進し、売り上げ増加に寄与することを期待している。
ピックアップトラックの生産台数は過去 2 年間で 20 万台減少し、自動車部品メーカーに打撃を与えた。国内販売減少の主な要因は、タイの家計債務の高水準化に基づく厳しい融資基準である。また、米国による自動車・自動車部品への関税引き上げなども悪影響を及ぼす可能性がある。
こういった政府支援も相まって、タイで60年以上事業を展開しているいすゞは、2024年から2028年にかけてタイに320億バーツを投資すると発表している。また、今年からタイで電気ピックアップトラックを生産し、特にノルウェーなどの欧州向けに輸出する予定であるとしている。
建設業界は震災後の課題に直面(4月8日)
サイアム商業銀行(SCB)傘下の経済情報センター(SCB Economic Intelligence Center:EIC)は、3月28日にミャンマーで発生した地震の影響を受けた産業のうち、建設業界に対して、地震後の復旧工事による恩恵を受ける可能性がある一方で、入札規制の厳格化とマンション
開発の減速といった課題に直面していると報告した。
建設業者、建設資材メーカー、サプライヤーは、地震後の復旧・復興に伴って需要の拡大が予想されている。ほとんどの建設現場は地震の
影響を大きくを受けておらず、建設作業は継続している。そのため、2025年の公共・民間建設プロジェクトは大きな混乱なく進むと予想されている。
地震によって自然災害リスクが浮き彫りになったことで、建物の災害耐性が、公共・民間のプロジェクトオーナーにとって、請負業者を選定する際の重要な要素となる。今後、請負業者は入札、建設、最終検査のプロセスでより厳しい審査を受けることになる。また、これには、プロジェクトに関与する主契約者、パートナー企業、下請け業者の資格と経験の評価も含まれる。プロジェクトオーナーは、定められた基準に適合した資材の使用、納期厳守、そして完成後の品質保証などより厳格な施工手順で進める必要がある。
一方、不動産開発業者は今年、戦略を調整し、新規マンションの開発を大幅に削減しているため、それに伴いマンションの建設活動も鈍化
する見通しである。民間建設セクターにおけるコンドミニアムの市場規模はおよそ860億~1,000億バーツで、全体市場の15~17%を占めている。
同センターは、地震の影響を観光、不動産、建設の3つのセクターにわたって分析しており、これら3セクターの経済損失を約300億バーツと試算している。ただし、全セクターにおける信頼回復の速さに応じて影響額は変動する可能性があるとしている。
タイが日本の地理的表示(GI)製品に果物3品を登録(4月8日)
タイ知的財産局(DIP)は今年、日本の地理的表示(GI)製品にさらに3品登録する予定であることを発表した。
同局は、今年第2四半期中に、日本の地理的表示(GI)製品に果物3品の登録申請を行う予定である。対象製品は、ホムトン・ブアデーン・
バナナ(Hom Thong Bua Daeng banana)、ナム・ドク・マイ・シー・トン・ピサヌローク・マンゴー(Nam Dok Mai Si Thong
Phitsanulok mango)、ペッチャブン・スイートタマリンド(Phetchabun sweet tamarind)である。
これまでに日本で登録されたGI製品は、ドイトゥンコーヒー、ドイチャンコーヒー、フアイムン・パイナップルの3品で、これらを含めた9品の地理的表示(GI)製品を国際的に登録している。タイは、地理的条件や伝統的な生産技術を活かして製品の付加価値を高めており、EU諸国、日本、ベトナム、マレーシア、インドネシア、インド、カンボジアを含む33カ国以上で登録されている。
タイ政府は、引き続きGI製品の取り組みを推進することで、地域主導の経済成長を促進し、ソフトパワーの強化を図っていくとしている。
バンチャック社がSAFの投資回収年数を5~7年と予測(4月8日)
エネルギー複合企業のバンチャック・コーポレーションは、持続可能な航空燃料(SAF)の投資回収には5~7年かかると見込んでいる。
同社は、東アジアの一部の国でSAF使用の義務化が先送りされたとの報道がある中でも、投資回収の見通しに対して楽観的な見方を維持している。同社は、SAF市場の変化に対応して、以前の調査で見積もっていた3〜5年の推定回収期間を5〜7年に修正した。同社が100億バーツを
投じたSAF工場は4月25日に試運転を開始する予定で、原料には使用済み食用油を使用するとしている。
同社は、今年半ばにSAFの商業生産を開始し、最大生産能力である1日100万リットルの半分程度の生産を予定している。また同社は、使用
済み食用油の調達に関して飲食店事業者と提携しており、すでに顧客へのSAF販売契約も締結済みであるとしている。
ビジネス開発局とマネーロンダリング対策局がマネーロンダリング防止法を改正(4月9日)
ビジネス開発局(DBD)とマネーロンダリング対策局(Amlo)は、1999 年制定のマネーロンダリング防止法を改正すると発表した。
今回の改正により、名義貸しの定義や無許可外国人事業の内容が明確化され、特に外国人の出資が制限されている業種において、タイ人が
名義を貸した場合にも法的責任が生じる。また、無許可で事業を行う外国人も同様に処罰対象となる。これにより、不正に関わる資産は国に
よって管理されることとなる。
今回の改正の目的は、名義貸しの抑制とマネーロンダリングの防止であり、タイの個人・企業を不正行為から守ることにある。また、タイのビジネス環境の透明性と信頼性の向上を図り、これらの犯罪を助長する法的な欠陥に対処することを目指している。
なお改正法は、4月25日まで一般の意見を募っており、意見公募期間後、法案を閣議に提出し、承認を得た後、下院と上院に提出して更なる審議を行うとしている。
地震によるビル倒壊に関連した鉄鋼会社が投資特権を失う(4月11日)
投資委員会(BOI)は、3月28日の地震で倒壊したタイ国家会計検査院ビルの建設に製品を供給した中国の鉄鋼メーカー、Xin Ke Yuan Steel社に対する投資優遇措置を一時的に取り消したことを発表した。
同社は、2013年にBOIから優遇承認を受け、ラヨーン県の工場でビレットなどの鉄鋼製品を製造しており、3月28日の地震で崩壊した30階建てタイ国家会計検査院ビルの建設業者に棒鋼などの資材を供給していた。現在、崩壊の原因については多数の調査が進行中であるが、粗悪な
鉄鋼製品が基準を満たしていなかったことに対する疑惑が高まっている。
この倒壊により27人が死亡、9人が負傷、67人が依然として行方不明となっている。また、崩壊当時のビル内には、103人の作業員などが
いたと報告されている。
BOIは、この決定について、遡及的なものではなく、工業大臣が中国企業への優遇措置の撤回命令に署名したことを受けたものであるとし、
今後、工業省が同社の工場ライセンスを取り消した場合、同社へのすべての優遇措置を永久に停止する可能性があることを示唆している。