各国情勢コラム
Column

タイのビジネスニュース:2025年4月後半

医療用食品やパーソナライズフードなど高付加価値品市場が有望(4月18日)

 貿易政策・戦略事務局(TPSO)は、タイの医療用食品やパーソナライズフードの輸出が増加していることを発表した。
 パーソナライズフードは、個人の体質や好み、目的に合わせて最適化された食品・飲料である。現在の輸出規模はまだ小さいものの、タイの医療用食品・パーソナライズフード分野は今後、大きな成長が見込まれている。
 Precedence Researchによると、医療用食品の世界市場は、2025年の261億米ドルから2034年には407億米ドルに成長し、年平均成長率は5.1%に達する見込みである。一方、パーソナライズフード市場は、2025年の79億米ドルから2034年には609億米ドルに成長し、年平均成長率は14.6%になると予測されている。
 2024年には、タイの医療用食品・パーソナライズフードの輸出額は70.2億バーツで、前年比9.7%増となった。主な輸出品目は、乳幼児向けの調理食品が41.5億バーツ、肉入りスープとブイヨンが20.2億バーツ、肉入りの均質化食品が2.75億バーツで、主な輸出先は、マレーシア、
ラオス、ミャンマー、カンボジア、オーストラリアなどである。
 なお、2025年初頭の2カ月間で医療用食品・パーソナライズフードの輸出額は前年同期比17.8%増加しており、特に成長が著しかった製品は、乳糖不使用の乳児食品(163%増)、栄養補助食品(66.9%増)、医療用食品(45.7%増)である。

 

 

バンコクが水かけ祭りで41億バーツの収益を生み出す(4月18日)

 観光庁によると、2025年の「ソンクラーン(水かけ祭り)」期間中、バンコクはタイ国内で最も高い収益を上げ、総収入額は41億バーツと
推定されている。バンコクの王宮前広場「サナームルアン」で開催される「Maha Songkran World Water Festival 2025」というソンクラーン祭りのイベントは、4月11日から15日まで110万人の来場者が訪れた。東部の各県の収入は推定40億4,000万バーツで、これに続いて北部は
前年比30%増と最も大きく伸び、25億バーツに達した。
 来場者の90%は地元住民であったが、4月12日から16日までの外国人観光客数は合計421,394人に達し、観光産業に64億5,000万バーツの
経済効果をもたらした。外国人観光客の国別では、ヨーロッパ(42%増)、オセアニア(29%増)、南アジア(22%増)、米国(13%増)が特に高い成長率を示した。ソンクラーン祭り全体の収益は前年比17%増の287億バーツで、バンコクが最多の観光客を集め、最高収益を記録
した。
 一方、中国人観光客の減少により、全国のホテル稼働率は前年の71.5%から10ポイント低下した。なかでも地方のホテルの需要が伸び悩んだ。観光庁は、遠方・長距離路線からの誘致には成功したが、中国経済の低迷が依然として課題であるとしている。また、ハイシーズン後の
宿泊料金の下落を受けて、高級ホテルは無料宿泊キャンペーンなど価格競争を強化しており、今後もこの動きが広がる可能性があるとしている。

中国の長城汽車社がディーゼル車の生産拡大を計画(4月19日)

 中国の長城汽車(以下、GWM)社は、タイに数十億バーツ規模の電気自動車(EV)工場を建設したが、タイ国内外の経済的不確実性を受けて事業戦略を見直し、ディーゼル車の生産を強化する計画を打ち出した。
 同社は、輸出・国内販売向けに、ラヨーン県の工場でのディーゼル車生産について、投資予算の増額を検討している。また同社の社長は、
タイと東南アジアで高い成長が見込まれる製品に注力したい意向で、ディーゼルエンジンはこの地域の地形に適しているとの見解を示して
いる。今年のバンコク国際モーターショーでは、同社のディーゼル車「New GWM Tank 300 Diesel」の予約が300台を超えた。
 一方で、GWMは引き続きEV投資も進めており、今後の生産割合として、内燃機関車を全体の40%、EV/HEVを60%とする方針を示している。これまで同社では、EV・バッテリーセル製造に向けて230億バーツの投資を発表しており、そのうち120億バーツはすでに投じられている。
 なお、同社は、政府支援制度「EV 3.0」下で2024~2026年に1万4,000台のEVを生産する計画であるが、米国による25%の輸入関税方針も今後の市場に影響を与える懸念があるとしている。

 

 

SCI Eco Services社が電子機器廃棄物リサイクルプロジェクトに関する調査を実施(4月21日)

 タイ最大のセメントメーカーであるサイアム・セメント・グループ(以下、SCG)の産業廃棄物管理部門であるSCI Eco Services(以下、
SCI)社は、タイ国内で増加する使用済み太陽光パネルへの懸念から電子機器廃棄物リサイクルプロジェクトに関する調査を実施すると発表
した。
 太陽光パネルの発電効率の急激な低下を原因として、太陽光発電運営事業者から廃棄される太陽光パネルが近年増加している。6~7年前に
設置された旧式のパネルは、性能が半分以下にまで落ちており、多くの企業がより高効率かつ安価な新型パネルに切り替える動きを見せている。最新の太陽光パネルは1枚当り400~500ワットの電力を発電できる一方、旧式のパネルは200ワットしか発電できないという。
 また、最新のパネルは単価も安くなっており、多くの企業がより高効率な新しい太陽光パネルへの切替を進めている。これにより、大量の
廃棄パネルが発生しているが、旧パネルの多くは適切な処理がされておらず、発電所敷地内に放置されている。
 同社は、交換されたパネルを適切に処理するため、パネルの素材であるガラスや金属の再利用方法を研究している。太陽光パネルは、主に
シリカ、ガラス、アルミニウム、プラスチック、銅から構成されており、金属部品はリサイクルしやすい一方、ガラスの再利用が焦点となっている。SCIは、このガラスを新しいガラスやセメント・建築資材の原料として再利用できるかを検討中である。
 今後、この調査で太陽光パネルのリサイクルが実現可能であることが証明されれば、SCGのセメント生産拠点であるサラブリ県にリサイクル施設を建設し新事業として展開する可能性があるとしている。

ブラザーコマーシャル(タイランド)が売上高7%増を目標に(4月22日)

 ブラザー工業の販売子会社ブラザーコマーシャル(タイランド)は、経済の不透明感が続く中でも2025年度に売上7%増を目指し、中堅企業や官公庁向けプロジェクトへの販売を強化していることを発表した。さらに、独自の電子商取引ウェブサイト(Eコマースサイト)を導入し、
オフラインチャネルの販売価格と同価格でプリンターやトナーを販売する予定である。
 調査会社Gartner社によると、2024年のタイのIT支出は5.8%増の1兆バーツに達し、プリンター市場全体も2~3%の成長を記録した。ブラザーコマーシャル(タイランド)は、昨年、9%の成長を達成し、過去最高の売上高を記録した。
 同社の製品カテゴリは、プリンター、スキャナー、ラベルプリンター、刺しゅうミシン、BMBブランドの音響機器、デジタルテキスタイルプリンター、およびDominoブランドの高解像度UVインクジェットラベルプリンターの7種であり、同社によると、経済的課題がある中でも一部の分野では成長の余地があるとしている。特にラベルプリンター事業では、患者向けQRリストバンドや食品原材料ラベル用途に大きなチャンスがあると見込んでいる。また、副業として需要が見込まれるミシンにも可能性があるとしている。
 同社は、今年度の売上構成比として、小売・個人向け部門が全体売上の65%を占め、残りは官公庁・法人向けプロジェクトからの収益を見込んでいるとしている。

 

 

外国企業の所有規制を緩和へ(4月22日)

 タイ内閣は、外国企業の所有に関する制限を緩和するため、「外国人事業法(Foreign Business Act)」を改正することに原則的に同意したことを発表した。
 法改正委員会では、25年前に制定された同法は、タイ国内事業者の保護を目的としていたが、経済状況の変化に対応できていないとして、
改正を提言していた。内閣はこの提言を承認した後、商務省に対し、国の経済発展を阻害する規則・規制を撤廃するための改正案を作成する
よう指示している。
 法律改正案はすでに財務省、商務省、内務省、労働省、国家経済社会開発評議会、投資委員会の承認を得ている。特に財務省は、外国人が
タイで事業を行う際に許可される業種や、タイ人が保有すべき株式比率に関する規定の見直しを強く推奨している。
 現在、タイで登記された企業における外国人の株式保有率は最大49%に制限されており、この49%の上限により、外国人が名義上タイ人に
株式を持たせるケースが多く発生している。
 新たな法改正の基本理念は、国内事業者を「保護する」ことではなく、競争能力を高めるために事業者を「支援する」ことであるとし、タイ人・外国人のいずれもが健全な競争を行えるビジネス環境の整備を目指すとしている。

LG Thailand社がタイで初めて家電製品のサブスクリプションサービスを導入(4月23日)

 LG Thailand社は、タイで初めて家電製品のサブスクリプションサービスを導入したと発表した。これは、韓国、マレーシア、台湾に続く4か国目であり、LGはタイでこのモデルを導入した初の企業である。
 同社の家電製品のサブスクリプションサービスは、ウォーターサーバーから高級テレビまで14の製品カテゴリ、70以上のモデルを取り揃えている。さらに、月額399バーツから利用することができ、契約期間中の保証やLGケアサービスによる定期メンテナンスを提供する。
 特に新居を構える若い夫婦や独立して生活を始めるZ世代の消費者などをターゲットとしており、初期費用の負担を軽減しつつ、利便性、柔軟性、安心感へのニーズに応えるサービスとして支持を得ている。
 2024年10月にタイでサービスを開始して以来、洗濯機、エアコン、浄水器を中心に好調な利用状況を示しており、大型家電でもサブスクリプションの需要があることが明らかとなった。
 同社は、家電製品のサブスクリプション事業において、サービス開始から3年以内に年間売上1億米ドルを目指し、さらに、年末までにLGサブスクリプションの店舗網を現在の25店舗から150店舗に拡大し、加入者数を4万人にすることを目標としている。
 また、今後は中・上位所得層が利便性や省エネ性能を重視する傾向が強まると見込み、AI技術「Affectionate Intelligence」によるユーザー適応型サービスを強化していく方針であるとしている。

 

 

タイのデータセンターサービス市場が今年8%成長見込み(4月23日)

 カシコン・リサーチセンター(以下K-Research)によると、タイのデータセンターサービス市場は、企業による人工知能(AI)の導入やデータストレージ需要の増加を背景に、今年8%成長し、127億バーツに達する見込みである。
 主に金融、卸売・小売、ヘルスケア分野がこの需要をけん引しており、企業のコスト削減とAI分析ソリューションの活用を目的に、独自インフラの構築ではなく、外部サービスを利用する傾向が強まっている。
 同市場は過去5年間にわたり年平均12.6%と継続的な成長を遂げており、コロナウイルス拡大による在宅勤務の普及も追い風となった。しかし、タイ経済の不透明感と米国の相互関税による不確実性により、今後の成長は鈍化する可能性がある。
 現在のタイにおけるデータストレージ需要の約94%は民間企業によるものであり、AI導入が加速する中、処理・保存すべきデータ量も増大している。特に中小企業は、自社でインフラを構築するよりも、専門性とリソースを持つ第三者サービスの利用を選択している。
 2024年時点で、タイ企業の約17.8%がAIを導入しており、73.3%が将来的に導入を計画している。なお、タイのデータセンターサービス
収益のおよそ72%は、金融、卸売・小売、医療分野から生じているものである。
 一方で、同市場が直面する中長期的なリスクとしては、今後施行予定である「気候変動法」により、膨大な電力を消費するデータセンターへの再生可能エネルギー使用の圧力が高まることがある。また、データセンター市場における地域間の競争は激化しており、国家全体で包括的なデータセンターサービスを提供しているマレーシアやシンガポールといった近隣国との競争が激化している。さらに、高度な人材の不足も大きな課題となっており、データセンタープロバイダーは、この課題を解決するため、タイ人向けのデジタルスキル人材育成プログラムを開始している。

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