各国情勢コラム
Column

ベトナムのビジネスニュース:2025年7月前半

ドンザオ社が野菜・果物用紙パック製造ラインを導入し、日本向け初出荷を実現(7月2日)

 ベトナムの大手農産物加工企業であるドンザオ社(Doveco)は、ソンラ省に位置する農産物加工センターにおいて、紙パック包装ライン「Tetra Recart(テトラ・リカルト)」の本格稼働を開始したことを発表した。本設備は北部最大規模であり、総額400万ドルを投資して導入されたもので、1時間あたり6,000パックの生産能力を備えている。
 同技術の特徴は、包装後に高温殺菌処理を行うことで、保存料や冷蔵を必要とせず、製品の風味と栄養価を長期間保持できる点にある。環境面でも、プラスチックごみの削減や包装の軽量化によるコスト低減に寄与する先進的な取り組みといえる。
 特筆すべきは、稼働初日に日本市場向けのスイートコーンが初出荷された点である。日本は品質基準と安全性に対する要求が極めて高い市場であり、ドンザオ社がこの基準をクリアして輸出を実現したことは、ベトナム製品の技術力と信頼性の高さを示す成果である。
 ソンラ拠点にはこの他にも、イタリア、日本、ドイツの技術を導入した最新鋭の3工場が併設されており、濃縮ジュース、冷凍果実、缶詰商品など幅広い製品ラインを展開している。ニンビン省およびザライ省にある既存拠点とあわせて、ドンザオ社はベトナム全土における農産物加工チェーンの中核的存在となっている。

 

 

冷凍ドリアンの輸出が3倍に拡大(7月3日)

 ベトナム政府は、ドリアン輸出において、冷凍ドリアンの輸出量が前年同期比で3倍以上に増加し、14,282トンに達したことを発表した。一方、生のドリアンも5,217ロット(約13万トン)が輸出され、回復の兆しを見せている。
 2025年初頭、ベトナムのドリアン輸出市場は、許容基準を超える残留農薬やカドミウムなどの重金属、そして一部の禁止化学物質の検出により厳しい状況に直面していた。しかし、5月には、ベトナム農業・環境省大臣と中国税関総署(GACC)との交渉により、829の栽培地コードと131の梱包施設が復活した。さらに、7月12日から17日にかけて、GACCの専門家がベトナムを訪問し、生産から輸出までの現地検査を実施する予定である。
 農業・環境省は、食品安全対応の強化を目的に、全国のドリアン生産地と梱包施設のデータをデジタル化し、全国規模でトレーサビリティシステムの運用を開始した。6月時点で、1,396の栽培地コードと188の梱包施設が中国への正式な輸出資格を取得している。
 加えて、冷凍ドリアンは保存性の高さと安定供給が評価され、韓国、日本、EU市場などへの輸出の可能性も期待されている。これを受け、多くの企業が冷凍加工ラインや冷蔵設備への投資を強化している。
 一方で、中国側からは、特にカドミウムや有機塩素系農薬を中心とする重金属残留基準に対し、厳格な要求が示されている。これに対応するため、ベトナム政府は国内38カ所の試験所でGACC認証を取得した。主要生産地では土壌・水・肥料サンプルの採取・分析、カドミウム分布マップの作成も進められている。
 農業・環境省は現在、輸出用梱包施設における品質管理ガイドラインの第2回意見募集を実施しており、まもなく最終版を発表する予定である。並行して、栽培地コードと梱包施設コードの登録・管理に関する新たな通達案も整備され、輸出全体の透明性と品質基準の更なる強化が見込まれている。

 

 

ベトナム政府がダナン市の国際金融都市化を加速(7月4日)

 ベトナム政府は、ダナン市が国際金融センター(IFC)の建設を加速できるよう、全面的に支援する方針を発表した。これは、政府官房が発出した通知第340/TB-VPCPにおいて、グエン・ホア・ビン常任副首相がダナン市との会合で示した内容である。
 ダナン市は政治局の結論47号(2025年11月)を受け、計画策定、海外のIFC調査、投資誘致、インフラ整備、人材育成などを迅速に進めている。
 国会が国際金融センターに関する決議を採択した後、政府は行動計画を策定し、関連する法令や政令も制定する予定である。ダナン市には、インフラ整備・投資誘致・人材準備など自治体の権限内で進めるべき業務を早急に実施するとともに、政府や各省と連携しながら制度整備を進める責任が課されている。

ベトナム政府がハイフォン省でのコンテナ港の新設を承認(7月9日)

 ベトナム政府は、ハイフォン市のラックフエン港湾エリア(ディンブー・カットハイ経済区内)において、新たに4つのコンテナバース(第9〜12)を建設するための投資方針を正式に承認した。総投資額は約2兆4,846億ドン(約10億ドル)で、使用面積(海域を含む)は146.2ヘクタールに及ぶ。
 同プロジェクトは、12,000〜18,000TEU級の超大型コンテナ船に対応可能な港湾インフラを整備し、国際物流ハブとしての機能を強化することを目的としている。4つのバース(全長1,800m)に加え、400mの内陸水路用バース、コンテナヤード、修理工場、アクセス道路、補助施設、先端的な荷役機器などが一体的に整備される計画である。これにより、自由貿易区や背後の物流ゾーンとの一体運用を図り、海上輸送の円滑化、貿易促進、外資誘致の加速が期待される。
 建設は二段階に分けて実施される予定であり、2026~2030年に第9・10バース、2031~2035年に第11・12バースが整備される。事業運営期間は最大70年とされ、投資家の選定はハイフォン市人民委員会が法的手続きに則って行う。
 また、政府は環境保護(海洋生態系の維持、排水処理、気候変動への適応)や国防・安全保障、持続可能性に関する厳格条件を定め、国家の利益・主権を確保しながら港湾開発を推進する方針である。土地の引き渡し・借用および埋立区域の割当についても、関連法規に基づき管理される。
 同プロジェクトは、ベトナム港湾マスタープラン(2021〜2030年、2050年ビジョン)に沿ったものであり、北部経済圏全体に大きな波及効果をもたらすことが期待される。さらに、今後の鉄道・内陸水路との連携を通じて、国内外を結ぶシームレスな輸送ネットワークの形成も見込まれている。

 

 

ベトナム政府が輸入税優遇制度を改正(7月9日)

 ベトナム政府は政令26/2023/NĐ-CPを改正し、輸出入の関税優遇制度の適用条件を見直した。今回の改正により、環境配慮型自動車の生産実績を既存のガソリン・ディーゼル車両の評価対象に加算できるようになり、自動車メーカーにとって優遇関税の適用が受けやすくなった。
 具体的には、電気自動車、燃料電池車、ハイブリッド車、バイオ燃料車、天然ガス車などの生産台数を、従来のガソリン・ディーゼル車の最低生産基準に合算できる。また、資本比率35%以上の関連会社による生産実績も合算対象となり、持株企業が責任をもって報告する仕組みが整備されている。
 税関当局は、申請企業の生産実績に応じて関税を還付する。一方で、虚偽申告があった場合は、追徴課税および罰則が科される。
 さらに、同政令では一部品目に対する輸出入税率の見直しも実施された。たとえば、黄リンについては、2026年1月に輸出税が10%、2027年には15%に引き上げられる予定である(現行5%)。これは、資源保護と戦略産業への資源集中を目的としている。
 輸入関税については、スズメッキ用素材として広く利用されるティンプレート用黒板鋼板(Tin-mill blackplate)に対する0%関税が2025年8月末で終了し、同年9月以降は7%に引き上げられる。また、包装資材やフィルム、工業用プラスチックとして利用されるポリエチレン製品についても、一部品目に対して即日で2%の関税が導入された(従来は0%)。対象となるのは、α-オレフィン含有量が5%以下のポリエチレン、比重0.94以上のポリエチレン、比重0.94未満のエチレン-α-オレフィン共重合体である。
 今回の改正は、自動車分野におけるグリーン転換の促進と同時に、重要資源の保護と国内産業の発展を両立させることを目的としている。

 

 

コカ・コーラがテイニン省に国内最大級・最先端の持続可能型工場を新設(7月11日)

 コカ・コーラ・ベトナムは、総投資額1億3,600万米ドルを投じ、テイニン省フーアンタイン工業団地に国内最大規模の飲料製造工場を開設した。同工場は同社にとってベトナム国内最大の製造拠点となり、敷地面積は19ヘクタール、年間10億リットルの飲料生産が可能で、5つの最先端ボトリングラインを備えている。
 同工場は、ベトナムの飲料・食品分野で初めてLEED V4ゴールド認証(グリーンビルディング)を取得した。再生可能エネルギーやAIによるスマート技術(MIS、デジタルツイン、AI安全監視など)を活用し、環境負荷の低減に取り組んでいる。具体的には、屋上設置型太陽光発電(6MW)やバイオマスボイラーを導入し、水資源の89%を再利用することで環境への影響を大幅に軽減している。
 さらに、「Wall-to-Wall」供給モデル(工場と包材サプライヤーの敷地を連結させた物流効率最適化の取り組み)を導入し、中国鉄鋼大手のBaosteelと提携することで、缶容器の現地供給体制を強化している。これにより、エネルギー削減とCO₂排出の抑制も実現している。加えて、AIによるリアルタイム生産監視(MIS)、デジタルツインによる倉庫シミュレーション、AIカメラ(Intenseye)を用いた安全監視などを活用し、スマートファクトリー化を進めることで、生産効率と安全性の両立を図っている。
 同社は30年以上にわたり、プラスチック資源循環(rPETボトル導入、PRO Vietnam共同設立)、水資源保護(WWF協働プロジェクト)、地域貢献(EkoCenterやEkoClimate等)に注力しており、現在では全国で約4,000人の直接雇用と、さらに6~8倍の間接雇用を創出している。

ベトナム政府が木質ペレット産業の持続可能な発展に向けて生産体制の標準化を促進(7月11日)

 ベトナム政府は、木質ペレットの輸出が、2025年前半に390万トン(5億6,477万米ドル)に達し、前年比で数量が33.3%増、金額が38.8%増と大幅に成長したことを発表した。主力市場である日本(木質ペレット輸出量の60%、金額の65%)と韓国(同34%、28%)への需要が依然として高水準にある一方、業界は持続的な成長のために多くの課題に直面している。
 課題の1つ目としては、両国で輸出の94~96%を占めるという高い依存構造は、政策変更や他国からの輸入増加によるリスクを抱えている。特に日本市場では、FSC、PEFC、SBPなどの持続可能性証明書が厳格化されており、将来的にはEUの森林破壊防止規則(EUDR)に準じたトレーサビリティ要件も導入される可能性があり、ベトナム企業にとっては大きな課題となっている。
 次に、原料供給の面でも課題がある。現在、木質ペレットの原料は他の木材加工産業の副産物(おがくず、樹皮、枝など)に依存しており、独自の原料供給エリアを持たないため、価格変動や季節要因の影響を受けやすい。特に品質面では、不純物や化学残留物、金属類の混入が問題視されており、日本の厳しい品質基準を満たすためには高コスト化が避けられず、利益を圧迫している。
 さらに産業構造にも課題がある。ベトナムのペレット産業は大手企業が輸出の70%を担う一方で、小規模施設が多数存在し、業界全体の連携が弱い。韓国市場では、ダンピングが横行し、2023年には製造コストを下回る価格での取引が多発し、多くの企業が赤字に陥った。
 加えて、タイ、インドネシア、マレーシアといった地域ライバル国が高品質かつ競争力のある価格で市場に進出しており、今後ベトナムが競争優位性を維持するには品質向上と持続可能なサプライチェーン整備が不可欠である。政府は木質ペレットを含む深加工林産物(高付加価値製品)の育成を目指し、循環型経済の視点から、木材副産物の有効活用によるバイオマスエネルギー化を推進している。
 今後、産業の健全化を図るためには、原料供給の自立化、品質向上、ブランド力の強化、EU市場など新規市場の開拓が不可欠である。

 

 

ハノイ市が低排出ゾーンでバイク排除を加速(7月12日)

 ベトナム政府は、大気汚染の深刻化を受けて、首都ハノイでの化石燃料を使用するバイクの段階的な排除を決定した。首相の指示に基づき、ハノイ市は2026年7月1日から環状1号線内でガソリンバイク・スクーターの通行を全面禁止する。さらに、2028年からは規制対象を環状1号線・2号線内に拡大し、バイクの通行禁止に加えて自家用車の通行も制限する。2030年以降は、環状3号線内まで規制を広げる方針である。
 環境省の観測によれば、ハノイでは過去10年間で大気汚染が悪化しており、とくに交通量の多い6~8時および17~19時に深刻な汚染が観測されている。こうした背景を踏まえ、規制は2025年1月に施行された。また、本規制は「低排出ゾーン(LEZ)」の導入方針と連動しており、まずホアンキエム区とバディン区を実証地区として開始し、順次市内中心部全体に展開する予定である。
 市はガソリン車から電動車・公共交通への移行を促進するため、次のような包括的な措置を講じる:①EVバスや都市鉄道など公共交通網の拡充、②EV向け充電ステーション整備、③EV製造・組立企業への支援策および税制優遇、④住民へのEV購入補助、旧型車の下取り支援制度、⑤ガソリン車に対する登録税・駐車料金の引き上げ(2025年Q3より段階導入予定)
 さらに、LEZ対象地域の住民・事業者に対しては、特別な支援策やインフラ投資も予定されており、市民の理解と協力を得ながら、ゼロエミッション都市を目指す。

 

 

農業・環境省が果物輸出市場の多様化を推進(7月14日)

 ベトナム農業・環境省は、2025年の果物・野菜の輸出に関する統計と展望を発表した。上半期の輸出額は31億ドルであり、前年同期比で7%減少したが、6月単月の輸出額は8億700万ドルとなり、前月比31%増、前年同月比でも20%以上の伸びを見せた。この回復の背景には、特にドリアンの輸出再開が大きく貢献したとされる。
 農業省は、サステナブルな供給体制や安全性の確保、トレーサビリティの強化を企業に求めており、それを受けて各企業は収穫・包装工程の厳格な管理に取り組んでいる。ドリアンに加えて、ココナッツ、パッションフルーツ、加工マンゴーなども好調な動きを示している。
 一方で、最大市場である中国への輸出は全体の48.2%を占めるものの、前年比35.1%減と大幅に落ち込んだ。これに対し、米国向け輸出は65.2%増と大きく伸び、市場シェアは9%に拡大した。韓国向けも5.7%のシェアを維持している。この市場の分散化は、品質、安全性、環境対応など輸出基準の高度化を示す傾向として、農業省や業界団体はみている。
 ベトナム果実・野菜協会(VINAFRUIT)は、果物産業の持続的発展のためには、集中産地の形成、規格の統一、先端技術の導入、高付加価値な加工の推進が不可欠であると指摘している。
 さらに、果物の生鮮輸出が欧米市場で制限されがちな現状に対応するため、省は加工分野への投資を強化する意向を示しており、2025年後半にはマンゴスチン、アボカド、ココナッツなどの市場開放交渉を進める予定である。

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