各国情勢コラム
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タイのビジネスニュース:2025年9月前半

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BBGI社が廃水・廃棄物から発電用のバイオLNGを製造する計画を推進(9月3日)

 エネルギー複合企業のBangchak Corporation社のバイオテクノロジー部門であるBBGI社は、エタノール工場から排出される廃水や固形廃棄物を活用し、発電用のバイオ液化天然ガス(バイオLNG)を製造する計画を進めていることを発表した。総額20億バーツを投じ、2年以内に
完了させる計画である。
 バイオLNGは、液化バイオメタンとも呼ばれ、バイオマスを原料に微生物の力で発生させたバイオガスから生成される再生可能燃料で、化石燃料由来のLNG代替として期待されている。当初はシンガポールに拠点を置く世界的な資産運用会社Keppel社が運航する船舶への供給を計画していたが、船舶燃料の切り替えに時間を要するため、用途を発電向けに変更した。
 BBGI社は、Keppel社および廃水処理・廃棄物発電プラント開発を専門とするCleanEdge Resource社と共同で、バイオLNG生産プロジェクトに取り組んでいる。同プロジェクトのバイオLNG工場は2027年に稼働開始予定で、1日あたり100トンの能力を持ち、電力需要の大きいデータセンター事業者からも注目されている。
 さらに同社は、農業協同組合省と藻類を利用した持続可能な航空燃料(SAF)研究に関する覚書を締結した。藻類(特に微細藻類)は、
バイオ燃料に変換可能な油脂を含む脂質含有量が高いため、SAF製造の原料となる可能性を秘めている。バンコクのプラカノン地区にある製油所近くでSAF工場の試運転も行っており、藻類を活用した次世代燃料の商用化を見据えている。

 

 

タイ日産自動車が生産ラインの統合を実施(9月8日)

 タイ日産自動車は、コスト管理の効率化、競争力の強化、新世代自動車の製造準備を目指す経営再建計画「Re:Nissan」の一環として、生産ラインの統合を実施した。サムットプラカン県にある2工場の業務を調整し、1975年に建設された第一工場は、自動車組立を停止して、ボディ・プラスチックのプレス加工に特化し、新工場の第二工場で組立作業を担う体制に移行した。
 タイ工業連盟(FIT)は、この動きがサプライチェーンや雇用を支えると評価しており、国内市場の低迷にもかかわらず、タイが依然として地域の主要な自動車生産拠点であることを示し、さらなる投資誘致につながる可能性があると見ている。
 タイ自動車産業協会(TAIA)によると、2024年1~7月の国内生産台数は前年同期比5.73%減の83万5,331台だった。7月単月では、11%減の11万616台となり米国の関税政策やタイの高水準の家計債務が要因とされる。生産縮小の影響で、一部メーカーは雇用日数を週3~4日に減らし、従業員給与は通常の75%水準に留まっている。
 一方、タイ投資委員会によれば、日産はハイブリッド車を中心に国内での新規投資を継続する方針を示している。

PTTEP社がタイ初の炭素回収プロジェクトを承認(9月8日)

 国営の石油探査および生産会社のPTT Exploration and Production社(PTTEP)は、タイ湾のアルティットガス田におけるタイ初の二酸化炭素回収・貯留(CCS)プロジェクトの開発を承認したことを発表した。
 二酸化炭素回収・貯留(CCS)は、ガス生産などから二酸化炭素を回収し、地下に貯蔵するもので、本プロジェクトは2021年に着手された。深さ1,000~2,000メートルの貯留層に年間約100万トンのCO2を貯蔵する計画で、2028年の稼働開始を予定している。
 同プロジェクトは政府により、2021~2030年の国別決定貢献(NDC)行動計画の一部として位置づけられており、国家的なCCSモデルケースとなる見通しである。なお、同社は今後5年間にわたり、二酸化炭素回収・貯留(CCS)技術に年間100億バーツを投資する予定としている。

 

 

ChaTraMue社が新規出店計画を発表(9月11日)

 タイの有名ティーブランドであるChaTraMueは、現在、タイ国内で225店舗、海外13カ国で130店舗を展開しているが、今年はさらに国内30店舗、海外10店舗を新規出店する計画を発表した。また、2026年にも同様の拡大目標を設定している。観光客減少により外国人客は減ったものの、主な顧客層はタイ人消費者としている。
 同社の紅茶を製造するTiptari社によれば、過去5年間で消費者の行動は変化しており、近年は従来のホットティーやアイスティーに加え、抹茶など多様なフレーバーが受け入れられ、スペシャルティティー分野の拡大が進んでいる。さらに、中国ブランドもタイのお茶市場に参入して
おり、価格帯も1杯50バーツ前後の大衆向けから高級品まで広がり、国内外ブランド間の競争が激化している。
 同社は今後、新ブランド「CTM(Captivating Tea Muse)」を立ち上げ、拡大するスペシャルティティー市場での存在感を強化し、多様な
フレーバーを導入して顧客に幅広い選択肢を提供するとしている。

WHAコーポレーションが新工業団地建設計画を発表(9月11月)

 タイ最大の工場開発会社WHAコーポレーション(以下WHA)は、米中の貿易摩擦を回避して海外への生産移転を進める中国メーカーの需要に応え、タイとベトナムに新たな工業団地を建設する計画を発表した。
 同社によると、中国の電子部品・家電メーカーは米国の高関税を回避するため、タイやベトナムへの生産移転を計画している。中国の自動車メーカーBYDや長城汽車、家電メーカーのハイアール・スマートホームなどを顧客とする同社は、工場移転の波に対応するため、用地取得を
加速させている。
 タイでは約4,000エーカーの土地に6つの新規プロジェクトを建設中で、ベトナムでは総面積1,340エーカーの3つの新たな工業団地を開発中である。タイは米中貿易摩擦の恩恵を受ける国として浮上しており、多くの中国製品に課される米国の30%の関税を回避するための外国直接
投資が急増している(タイから米国への輸出には19%関税)。タイの戦略的立地や強固なインフラ、投資優遇策も魅力となっている。
 SET上場企業であるWHAは、タイとベトナムで16の工業団地を運営しており、電力供給の安定性から、データセンター事業者からも強い関心が寄せられている。既存のデータセンター顧客には、Googleや北京浩洋クラウド&データテクノロジー社などがある。
 今後、同社はデータセンター市場の急成長を見据え、新規プロジェクトを拡大し、タイのデータセンター容量増加とともに約65億ドル規模の投資を呼び込むことを目指すとしている。

 

 

プーケット観光協会は今シーズン中の収益目標を5,500億バーツに設定(9月14日)

 プーケット観光協会は、ハイシーズンに向けて5,500億バーツという観光収入目標を設定している。初期の指標は2019年の新型コロナ感染
拡大の前の水準に近い力強い回復を示している。
 プーケット観光協会長によると、全体的な観光の見通しは好調で、中国からの直行便を含む国際便の増加は、年末に向けた明るい兆候となっている。11月から1月までの予約は好調で、ヨーロッパとアジア両市場からの需要が高く、客室稼働率は昨年と同様に平均約90%になる見込みである。
 今年の観光収入は5,500億バーツと予想しており、昨年の4,980億バーツから10%増加する見込みである。7月までに収益はすでに2,900億を超えており、昨年の観光収入を超えると予測されている。

タイアルコール飲料事業協会が新アルコール飲料法の目的反映を要請(9月15日)

 タイアルコール飲料事業協会(以下Tabba)が、新アルコール飲料法の施行に伴い、事業者向け広告規則の不透明さに懸念を示し、新法は
改正の目的を正しく反映するべきだと発表した。
 保健省疾病管理局によると、2025年新アルコール飲料法(第2号)は11月8日に施行予定である。同法に関して業界は、広告規制とアルコール飲料の販売に関する2つの主要な懸念を抱いている。
 広告規制に関しては、第32/1条などで、管理委員会の勧告に基づき大臣が定める規則・手続き・条件に沿った情報提供や広報以外のアルコール広告を禁止している。Tabbaは、追加の省令や告示が必要であり、事業者がどの広告活動を行えるか、特に製品の原産地情報を共有できるかについて不確実性が残ると指摘している。
 また同協会は、政権移行に伴う新内閣の任命や大臣の交代などにより、従属法の制定が遅れる可能性を懸念している。
 Tabbaは今後、民間部門と官僚と協力し、この法律の本来の目的を維持し、従属法が法律の目的を正確に反映するよう働きかける方針で
ある。

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