タイのビジネスニュース:2025年1月前半

ブリックス(BRICS)がタイをパートナー国に承認(1月1日)
タイ外務省は、タイがブリックス(BRICS)のパートナー国として承認されたことを発表した。
BRICSは、ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ、イラン、エジプト、アラブ首長国連邦、エチオピアの9か国から構成される国際
会議体である。
最近、BRICSは13カ国を「パートナー国」として承認した。パートナー国には、タイ、マレーシア、ベトナム、インドネシアの東南アジア4カ国が含まれており、その他の9カ国は、アルジェリア、ベラルーシ、ボリビア、キューバ、カザフスタン、ナイジェリア、トルコ、ウガンダ、ウズベキスタンである。
タイ政府は、将来的に、タイがBRICSの正式加盟国になることを期待しており、今後は主に貿易、投資、観光分野で協力していき、タイと他のBRICS加盟国およびパートナー間の人的つながりを促進するとしている。
飼料用タピオカチップの使用拡大に向けた取り組み(1月3日)
国内貿易局(DIT)は、民間部門と協力し、畜産業や飼料生産産業でのタピオカチップの使用量を年間100万トン(生のキャッサバにして年間250万トンに相当する量)まで増加させる目標を発表した。
同局は、国内キャッサバ市場の改善を期待して、タイ商工会議所、北東部タピオカ製造業者協会、タイ飼料工場協会、全国40社以上の製造
業者と協力し、一定の品質と価格基準を満たすタピオカチップを飼料生産者に供給する予定である。
また、同局はキャッサバの収穫を遅らせることを奨励する制度も導入しており、これによりデンプン含有量を高めるとともに、未成熟の
キャッサバの流通を制限している。
これらの取り組みに加えて、内閣は、加工施設によるタピオカチップやデンプン備蓄を行う施設に対して年間3%の利子補助金を助成する
など、キャッサバ市場を支援するための制度を承認している。
タイ中央銀行が2025年の自動車産業を懸念(1月4日)
タイ中央銀行は、2025年のタイの新車販売の不確実性と、タイの自動車産業が直面する課題の増加に対する懸念を示している。
金融政策委員会(MPC)の2024年第4四半期の報告書によると、タイ経済の回復状況は不均一な状態が続いており、2025年の新車販売は非常に不確実である。
2024年1~10月のタイの自動車生産台数は、前年比で約20%減少した。この減少の主な要因は輸出向け生産で、前年比52%減少しており、
国内向けも5%減少した。
ピックアップトラックの販売回復は、乗用車の販売回復に遅れをとると予想されており、この回復の鈍化は、ピックアップトラックの潜在的購入者の所得低下を反映しているとされる。乗用車の販売は、ハイブリッド車の人気の高まりを背景に、2024年から改善が見込まれている。
乗用車購入者層の購買力は依然として堅調で、この成長を支えている。
将来的には、高齢化社会などタイの構造的な問題が自動車業界にとって重要な課題になると予想されている。高齢化に伴い、新車需要は減少すると予想され、市場が飽和状態になる可能性がある。また、若年層の多くは、従来の自動車所有よりも、公共交通機関、デジタルプラットフォームを介した配車サービス・レンタカーを選択している。このような消費者行動の変化が、国内自動車産業にさらなる圧力をかけている。
同報告書によると、タイの自動車産業は、消費者行動の変化に合わせて事業を適応させる必要があるとしている。
BBGI社がLNG代替燃料を船舶燃料化(1月6日)
エネルギー複合企業バンチャック・コーポレーション傘下のBBGI社は、液化天然ガス(LNG)の大体として「bio-LNG」と呼ばれる、より
クリーンな燃料を船舶に供給すること発表した。
船舶燃料は、持続可能な航空燃料であるSAF同様、CO2排出量の少ない代替燃料の使用が求められているが、現状、特に大型船舶などでは
コスト面から重油燃料が普及している。同社は、CO2排出量削減を目的として、この度、シンガポールに拠点を置くグローバル資産管理・運営
会社 Kepple が運営する船舶に「bio-LNG」を供給する予定である。
bio-LNGは液化バイオメタンと(LBM)も呼ばれ、嫌気性消化と呼ばれるプロセスを通じてバイオガスから生成される。同社は、2025年~
2026年の間に建設予定の工場でbio-LNGを生産する予定で、同施設では、1日あたり500トン、年間15万~20万トンのbio-LNGを生産する予定である。なお同プロジェクトの費用は1億5000万~1億5000万米ドルと見込まれている。
このbio-LNGは、カンチャナブリ県とコンケン県にある同社のエタノール生産工場から出る固形廃棄物と廃水から作られたバイオガスを使用する予定で、BBGI社、Kepple社、産業廃水処理と廃棄物発電プラント開発を専門とするCleanEdge Resource社の3社が合弁会社を設立し事業運営を行う予定である。既に、3社は、同事業に着手する計画に関する覚書に署名しており、メタンガス分離プラント、バイオメタン製造施設、燃料品質に取り組むユニットで構成した工場を運営していくとしている。
Amazon Web Servicesは、AWSアジア太平洋(タイ)リージョンを設立(1月9日)
Amazon Web Services (AWS) は、タイに新しいデータセンター「AWS Asia-Pacific (Thailand) Region」を開設したと発表した。
データセンターリージョンは、特定の地域内に設置されたデータセンターのクラスターを指しており、このAWSアジア太平洋リージョンは、2037年までにタイに50億ドル以上を投資するというAWSの2022年の取り組みの一環である。同データセンターは、3つのアベイラビリティゾーンで構成されており、タイやアジア太平洋地域のクラウドサービス需要に応えるものである。
タイ投資委員会(以下BOI)によると、同社は既にデータセンター建設の第1フェーズに250億バーツを投資している。またこの取り組みに
よって、政府や企業のイノベーションを促進させ、AIに対応した人材スキルの向上を目指している。
従来、タイの法人顧客の80〜90%がAWSシンガポール地域が提供するサービスを利用していたが、AWSは、このデーターセンターの設立によりシンガポール地域よりも安いサービス価格を提供するタイ地域への無料移行サービスを提供している。特に中小企業やスタートアップ企業の移行が進む一方で、大企業の移行には時間がかかる見込みである。
今後は、金融や製造、医療、公共部門等が、この新しいリージョンからの恩恵を受けると見込まれている。
Thai Honda社が国内のオートバイ販売台数を増加見込み(1月10日)
Thai Honda社は、2025年のタイ国内オートバイ販売台数が前年比1%増の170万台から175万台に増加する見込みであることを発表した。
同社は、タイ国内市場の最大手として、2025年の自社販売台数が前年比2%増の136万~140万台になると見込んでいる。一方で、家計債務の高水準や自動車ローンの融資基準の厳格化の傾向は、2025年も続く見込みであり、自動車やバイク部門の不良債権に対する懸念を抱いている。
同社によると、こういった厳しい経済環境を背景に、2024年には、同社のオートバイ販売台数が前年比9%減の171万台、自社販売も前年比6%減の138万台となった。
同社はタイを輸出拠点とし、96カ国にオートバイを出荷している。同社の市場シェアは欧州では21%、日本では18%、米国では15%占めている。タイ国内では、約1,300のディーラーを通じて販売促進を支援している。
内閣がギャンブルとカジノの合法化法案を承認(1月13日)
タイの内閣は、観光、雇用、投資の促進を目的とするギャンブルとカジノの合法化法案を承認したことを発表した。
タイではカジノやほとんどのギャンブルが違法であり、国営競馬や公式宝くじなど、一部のギャンブルのみが許可されている。その一方、
サッカー賭博や闇賭博、宝くじ等違法賭博は横行しており、違法に取り引きされている。
歴代の政府は経済を活性化させるためにギャンブルの合法化と規制を目指してきたが、仏教徒が多数を占めるタイでは、そのたびに保守派の反発に直面してきた。しかし、既に、カンボジア、シンガポール、フィリピン、ラオス、ミャンマーなどの近隣諸国が大規模なカジノ施設の恩恵を受けていることから、タイにとっても、合法的なカジノの導入が自国の経済をさらに発展させるとタイ政府は考えている。
タイ財務省は、今回の措置により、外国人観光客数が5~10%増加し、観光収入が約1,200億~2,200億バーツ増加する可能性があるとの見解を示しており、さらに、約9,000~15,000の新規雇用も創出されるとしている。
税務局が特別経済区(SEZ)内の企業の法人税率を10年間10%に引き下げ(1月15日)
税務局は、特別経済区(SEZ)への投資を促進するため、SEZ内の企業の法人税率を10年間10%に引き下げると発表した。
この減税措置は、1月13日に内閣で承認され、該当する勅令が公布された。対象となるのは、本社所在国を問わず、SEZ政策委員会が指定した対象産業に従事し、SEZ内で事業を展開する企業または法人パートナーシップである。
タイには、特に国境地域での経済成長を刺激するために、ターク、ムクダハン、サケーオ、ソンクラー、トラート、ノンカイ、ナラティワート、チェンライ、ナコンパノム、カンチャナブリの10地域のSEZがあり、この措置により、特別経済区での物品生産、サービス提供、雇用の
拡大が期待されている。
Infineon Technologies社がタイで初の工場を建設中(1月15日)
ドイツの半導体メーカーであるInfineon Technologies社は、EV業界やデータセンター業界、クリーンエネルギー管理用の追加機器を使用
する企業での需要の高まりに対応するため、タイで初の工場を建設中であることを発表した。
タイ投資委員会(BoI)によると、この工場は2026年に稼働を開始する予定である。
同社は、サプライチェーンの主要部品と材料を網羅するタイの半導体エコシステムの開発を支援し、熟練労働者の育成をサポートするとしている。また同社は、大学や地元の起業家との緊密な協力を通じて、先端半導体の専門知識を持つ高度なスキルを持つエンジニアの人材プールの拡大を目指している。