ベトナムのビジネスニュース:2025年5月前半

ベトナム政府が「ラオカイ-ハノイ-ハイフォン鉄道」事業の加速を正式に指示(5月1日)
ベトナム政府は、鉄道を優先的に投資すべき交通手段と位置付けており、特に「ラオカイ-ハノイ-ハイフォン鉄道プロジェクト」の建設事業について、2025年内の着工を目指し、関係省庁および沿線地方自治体に迅速な対応を指示した。2025年4月14日には、中国との間で技術支援に関する書簡が交わされており、同年には国会において投資方針に関する決議第187号も承認されている。
建設省は、2025年6月までに地元当局と連携してルートの中心線および用地取得範囲を確定させ、同時並行で調査設計や入札準備、フィージビリティ・スタディ(事業化可能性調査)報告書の作成を完了させる必要がある。
首相は、沿線9省市に対して、党委員会書記を委員長とする用地確保のための特別委員会を速やかに設置するよう要請している。再定住地の整備や住民の生活再建支援、地域住民への説明と理解促進など、地域全体での協力体制の構築を求めており、各地方政府は、2025年8月までに用地補償や住民の移転支援を行う必要がある。
さらに、プロジェクト推進の加速にあたって、財務省には事業予算の優先的確保、農業・環境省には森林・農地の用途変更に関する手続きの迅速化を指示したうえ、チャン・ホン・ハ副首相が本プロジェクトの進行を直接監督し、政府事務局が各機関の対応状況を随時フォローする体制としている。
ハノイ統計局、2025年1〜4月の工業生産指数が4.8%増と発表(5月2日)
ハノイ統計局は、2025年1月~4月におけるハノイ市の工業生産指数(IIP)が前年同期比で4.8%増加したと発表した。内訳は、製造・加工業が4.8%、電気の生産・供給が5.0%、水の供給・廃棄物処理が3.8%で増加した一方、鉱業は9.2%減少した。
特に製造業では、機械・設備の製造(+34.1%)、非金属鉱物製品(+17.1%)、自動車(+15.3%)、繊維(+15.2%)、皮革製品(+14.8%)、金属製造(+8.5%)などが高い伸びを示した。
一方で、紙・紙製品(-4.3%)、輸送機器(-4.0%)、印刷・複製(-1.2%)、家具(-0.4%)など一部の業種は減少した。
また、4月末時点での工業部門における就業者数は、前月比0.4%増、前年同月比では0.6%増となった。
EVNNPTが220kVニョンチャック3発電所送電線プロジェクトの建設を加速(5月4日)
ベトナム国家送電公社(EVNNPT)は、ニョンチャック3発電所と既存の送電線(ミーシュアン~カットライ)を接続する220kV送電線プロジェクトの進捗を加速している。
同プロジェクトは2024年第4四半期に開始しており、約7kmの送電線を建設する。政府の指示に基づき2025年6月中の完工を目指しており、EVNNPTの傘下である送電プロジェクト管理委員会(NPTPMB)が管理し、送電会社第4が運用を引き継ぐ予定である。4月30日〜5月1日の連休中も施工業者は通常通り作業を続けており、既に全11基のうち9基の基礎と6基の鉄塔を完成させている。残る2基は5月14日までの完成を目指しており、5月中に全ての鉄塔の建設が完了、6月に送電開始を目指している。
現在は、基礎部分の用地引き渡しは完了している一方、一部の送電線ルートに関しては住民の同意を得られておらず、進捗に影響を及ぼしている。NPTPMBはドンナイ省ニョンチャック郡に対し、住民への説明と用地交渉の支援を要請しており、土地使用計画へのプロジェクト情報の反映や補償・移転の手続きの迅速化に向けて、関連省庁・機関との連携強化を進めている。
過酷な気象条件や地形的課題にもかかわらず、現場では「休日返上・前進あるのみ」の精神で作業が進められており、同プロジェクトは南部経済圏の持続的発展を支える重要インフラとして期待されている。
レ・タイン・ロン副首相が原子力法の改正方針を発表(5月5日)
レ・タイン・ロン副首相は、2025年5月のベトナム国会第15期第9回会議にて、2008年制定の原子力エネルギー法が国際条約やIAEAの新基準への対応が不十分で、技術の進展や省庁間の権限重複にも課題があるとして、法改正案を提出した。
今回の改正案では、全体を12章・73条に再編し、放射線・原子力の安全・保安体制を強化するとともに、国家管理の効率化、国際協力の強化を図り、原子力エネルギーの持続可能な活用を促すことを目的としている。
これに対し、国会の科学技術環境委員会は、法案の基本方針に賛同しつつ、核施設の設計承認や核査察に関する規定範囲の明確化など原子力規制機関の権限・体制を法的に定めるべきであると提案している。また、原子力利用の社会化促進を支持しつつ、放射線業務や放射性物質の取り扱いにおける安全性の確保にも十分配慮すべきとしている。特に、原子力発電所や研究用原子炉の設計は、パートナー国の原子力規制機関による審査・承認が必要であるとし、IAEAの安全基準にも従う必要があるとした。
さらに同委員会は、原発建設プロジェクトの建設計画承認権限は首相とする案を支持しつつも、他の関連法との整合性や安全保障への対応強化を求めており、迅速かつ柔軟な事業推進に対応する制度設計が進められている。
TTC AgriS、気候変動の中で持続可能な農業への転換を主導(5月7日)
気候変動による干ばつや塩害、耕作地の減少に直面する中、ベトナム農業は持続可能な発展への転換が急務となっており、ベトナム国内の多くの農業企業が技術革新と持続可能な原材料生産に注力している。そうした中、民間企業が先導して技術革新や原料調達地の持続可能化に取り組んでおり、中でもサトウキビ業界の大手であるTTC AgriS社はその代表例である。同社は、ベトナム、ラオス、カンボジア、オーストラリアの4か国に約7万2,000ヘクタールの原材料供給網を展開している。
同社はERP Oracleによる統合管理システムを導入し、トレーサビリティの標準化、カーボンニュートラル(Net Zero)を2035年までに達成する目標を掲げ、循環型経済モデルを推進している。年間100万トン以上の砂糖を生産するほか、製糖工程で回収された蒸気から3.6百万リットルの純水「Miaqua」を製造し、すべての排水はベトナム環境基準(40:2011/BTNMT)に適合した形で再利用されている。
2025年4月には、同社とインドネシアのSungai Budiグループは農業分野の戦略的協力に関する覚書を締結しており、両国におけるR&Dセンターの設立やインドネシアで2,000ヘクタール模範のサトウキビ農園モデルを構築、ココナッツ製品の年間3億リットル規模の生産など多角的な国際展開を進めている。また、害虫対策には天敵(赤目ハチ)を用いた生物学的手法を広範囲で実施し、今後6万ヘクタールのサトウキビ農園への展開を目指している。
TTC AgriS社は、政府や関係省庁、農家との連携の下、気候変動に適応したスマート農業モデルを実現しており、デジタルイノベーションを融合したグリーン農業の先駆者として持続可能な成長を目指している。
経済財政委員会が加糖飲料や大型エアコンなどに特別消費税を適用(5月9日)
2025年5月の第15期国会第9回会議で、経済財政委員会のファン・ヴァン・マイ委員長は、特別消費税法改正案の修正・補足報告を行い、加糖飲料と大容量エアコンを新たな課税対象商品として追加する方針を明らかにした。
加糖飲料については、100mlあたり糖分5gを超える飲料を対象とし、2027年に税率8%、2028年に10%とする段階的導入が提案された。この措置は、糖分の過剰摂取による肥満や生活習慣病のリスクを抑えることを目的としており、企業には段階的な対応を促す移行期間が設けられる。
また、エアコンについては、18,000〜90,000BTU(British thermal unit)の機種を課税対象とする案が提示されたが、一部議員からは生活実態に基づき、24,000BTU超に限定すべきとの意見も出た。
さらに、環境負荷低減の観点から、ビニール袋を特別消費税の対象に追加することについても多数の賛同があり、今後の環境保護に向けた対策として検討が進む見通しである。
財務大臣は、飲料、家電、アルコール類、たばこなどに関する税率やその課税範囲について、政府の見解を説明しつつ、調整を進めるとしている。
グエン・チー・ズン副首相、「デジタル技術産業法案は国家のデジタル戦略の鍵」と強調(5月10日)
第15期国会第9回会議にてベトナム政府は、デジタル産業を国家経済の重要分野と位置づけ、「デジタル産業法案」を国会に提出した。同法案は、新興産業に法的枠組み与え、イノベーションを促進、国内デジタル企業を育成し、世界的な技術トレンドへの参画・統合など党の主要方針を法制化する内容を含んでいる。
法案では、4つの柱として、(1)デジタル技術産業を主要経済分野として発展させ、GDPへの貢献を拡大、(2)国産企業によるコア技術の開発とエコシステム構築、(3)インフラの近代化と全国的なデジタル転換を促進、(4)国内外の優秀な人材の確保・育成を掲げている。
注目点として、同法案では、デジタル企業に対する税・財政・インフラ・土地などの包括的優遇措置に加え、外国人専門家に対するビザ発給や所得税優遇、研究施設投資の減税も盛り込まれている。また、国家と民間の協力によるデジタルインフラ投資も推進され、特に半導体分野は戦略的産業として個別の優遇政策を受ける。
さらに、同法案では初めてAI(人工知能)とデジタル資産を法規制の対象とし、柔軟な枠組みで基本ルールを定め、詳細は政令で対応する方針である。デジタル資産についても、初めて定義・分類・管理原則を定め、将来的な市場発展とリスク管理に備える。
加えて、サンドボックス(試験運用)制度も導入され、革新的な製品・サービスの試験的運用が可能となる。これによりベトナムは、デジタルイノベーションやデジタル経済への移行を法的に後押しすることで国際競争力を強化し、デジタル国家としての地位を築くための制度的基盤の構築を目指すとしている。
農業省が花卉・観賞用植物産業を主要経済分野として新たな施策を提案(5月11日)
農業環境省の報告によると、ベトナムの花卉・観賞用植物産業は、年間生産額約4兆5,000億VND、輸出額1億USDを超えており、大きな成長余地を持つ分野である。ダラット、ハノイ、ホーチミン市、ベンチェー、ドンタップなどの地域では、高付加価値な専門栽培地域が形成され、観光と連携したモデルも展開中である。
一方で、栽培地の計画不足、技術・保管力の弱さ、市場依存度の高さ、国家ブランド力の低さなどいくつかの課題も残っている。これに対し、農業省は以下の5つの重点施策を提案した:
1. 制度整備と政策支援:観賞用の花・植物を国の作物構造における正式な経済部門として認め、融資・土地・税制の優遇措置を整備し、2030年までの産業開発計画を策定する。
2. 生産の専門化・組織化:地域特性を活かした専門栽培地域を整備し、協同組合や農業クラスタと企業中心のバリューチェーン連携を推進する。
3. ハイテク導入・品種改良:在来種の育種強化、温室、点滴灌漑、AI・IoTの活用、先進的な育苗センターや加工施設の整備などを進める。
4. 市場開拓とブランド構築:電子商取引や流通システムを通じて国内消費を拡大すると同時に、FTAを活用して輸出を推進することで、国内外をつなぐ花き取引所を形成する。
5. 人材育成:農家・職人への技能訓練、大学での専門カリキュラム導入、研究機関・職能団体の連携強化に取り組む。
花卉・観賞用植物産業は、政策・科学技術・市場の連携がうまく機能することで、ベトナム農業の新たな柱となり、持続可能な経済成長と生活の質の向上に貢献すると期待されている。
建設省が2025年第1四半期における不動産分野へのFDI増加を発表(5月13日)
建設省は、2025年第1四半期にベトナムへのFDI(外国直接投資)が約109.8億USDに達し、前年同期比34.7%増となったことを発表した。このうち不動産分野はFDI全体の21.8%となる約23.9億USDが投じられ、前年同期比44.1%の大幅増となった。なお、FDI実行額は約49.6億USDで7.2%の増加となっている。
不動産分野が外国投資家から注目を集めている背景として、ベトナムが地理的に東南アジアの中心に位置しているという地理的優位性や労働力の若さ、投資法・企業法の改正など政策環境の改善も進んでいることが挙げられた。
注目のFDI案件としては、フンイエン省のゴルフ&ホテル複合施設(15億USD)、ハノイ・ドンアイン地区のスマートシティ内に建設予定の「フオンチャックタワー」(高さ600m・108階、BRGと住友の共同出資、総額15.5億USD)などがある。
また、不動産向けの信用供与も好転しており、2025年2月末時点の不動産関連融資残高は約148.8万億VNDで前年比25%増となった。政府は住宅支援にも注力しており、住宅供給のため145兆VNDの融資パッケージの推進など、早期から信用拡大策を講じている。ただし、不動産バブル回避のため、中央銀行はリスク管理や融資審査の慎重化が求められている。
一方、不動産分野における社債市場は依然として低調で、第1四半期の新規社債発行額は2兆5,130億VNDと前年比12%減で過去5年で最低水準となった。不動産企業による発行は全体の約30.3%を占めているものの、社債の早期買い戻しは58.6%と最も高い割合を占めており、慎重な資金調達姿勢がみられる。