インドネシアのビジネスニュース:2025年5月前半

ArcelorMittal Nippon Steel Indonesia社が鉄鋼輸出を拡大(5月2日)
ルクセンブルクの鉄鋼メーカーのArcelorMittal社と、日本の鉄鋼メーカーの日本製鉄の合弁会社であるArcelorMittal Nippon Steel Indonesia社(AM/NS Indonesia)は、米国への供給を増やしながら、新規市場への輸出拡大を模索していることを発表した。
同社は4月に1万トンの亜鉛メッキ鋼材を米国市場に出荷した。推定輸出額は約1,000万米ドルである。同社によるとこれは国際市場における事業強化戦略の一環であり、米国市場には月間5,000トンから6,000トンを供給することを目標としている。
同社は2004年から米国市場に供給してきたが、現在のトランプ大統領の相互関税政策の影響で、今後、米国への輸出量を増やすことができるとみている。インドネシアの鉄鋼製品の関税率は25%であり、中国、ベトナム、インドなどの他国よりも低く、競争優位性があるため、米国への輸出を拡大するチャンスと捉えている。
米国以外では、カナダが同社の亜鉛メッキ鋼材の主な輸出先である。今後はカナダへの輸出量を四半期あたり3,000~4,000トンにすることを目標としている。また、ヨーロッパ、マレーシア、オーストラリアなどほかの国への供給拡大も計画している。
なお、同社の主力製品は、冷延鋼板製品と亜鉛メッキ鋼材であり、冷延鋼板製品は年間最大40万トン、亜鉛メッキ鋼材は年間最大15万トンの設備生産能力を有している。同社は今年、約30万トンの生産を目標としており、生産目標の約25%〜30%(約7万〜10万トン)を輸出するとしている。
インドネシアが過去50年で最高の米在庫を記録(5月4日)
農業省によると、インドネシアの米在庫が5月の時点で350万トンを超えたと報告した。これは過去57年間の全ての1~5月期で記録された最高のレベルである。
また、備蓄量だけでなく、備蓄ペースも過去最高を更新した。1月に170万トン(前年からの繰り越し)から始まった在庫は、わずか4ヵ月で180万トン増加し、中等米の輸入なしで350万トンに達した。1969年の統計開始以降、国家物流庁(Bulog)が管理してきた過去の記録によれば、これは1月から5月までの備蓄量としては過去最高となる。この堅調な調達水準は、過去50年間のBulogの年間平均調達量を上回り、同庁は110万トンの容量を持つ保管スペースを追加で借りることになった。
政府は近年米の生産を支援するために、肥料補助金を増やし、農業機械を供給し、作付けスケジュールを早め、農業用デジタルツールを導入した。さらに、農家への価格保証を確保するため、籾の下限価格を1kgあたり5,500ルピアから6,500ルピアに引き上げた。
なお、中央統計局は、2025年6月末までに全国の米生産量が1,876万トンに達すると予測している。また、米国農務省(USDA)は、インドネシアの通年の米生産量が3,460万トンに達する可能性があると予測している。
これにより、インドネシアは東南アジア最大の米生産国となり、食糧不安に対する世界的な懸念が高まる中、戦略的食糧ハブとしての役割をさらに強固なものにすることになるとしている。
ムアラ・ラボ地熱発電の拡張のための資金調達が完了(5月4日)
日本が支援する西スマトラ州のムアラ・ラボ地熱発電プロジェクトを運営しているSEML(Supreme Energy Muara Laboh)社は、拡張工事のためのファイナンシャル・クローズ契約を国際協力銀行(JBIC)と締結したことを発表した。
この地熱発電所は、多国籍企業であるSEMLによって運営されており、2019年後半から1号機が操業を開始している。1号機の発電能力は約85メガワット(MW)である。SEMLは、日本の住友商事、INPEX、そしてインドネシアの自然エネルギー企業であるSupreme Energyが共同で設立したベンチャー企業であり、住友商事が50%、INPEXが30%、Supreme Energyが残りの20%株式を所有している。
現在、既存の1号機に隣接して2号機を増設するための拡張工事が進められている。2号機の発電容量は80MWであり、2027年に操業を開始する予定である。2号機で発電される地熱エネルギーは、国営電力企業PLNに販売される。将来的には、60メガワットの3号機を増設する計画も視野に入れており、2033年に運転を開始する予定である。
インドネシアの第1四半期の経済成長率はわずか4.87%に減速(5月5日)
中央統計局(BPS)によると、インドネシアの2025年第1四半期の経済成長率は前年同期比4.87%であったことを発表した。
この成長率は、インドネシアが過去3年間に記録した第1四半期の成長率の中で最低であった。2024年の第1四半期の経済成長率は前年同期比5.11%拡大し、2022年第1四半期と2023年第1四半期の成長率はそれぞれ前年同期比5.02%と5.04%であった。
同局によると、2025年第1四半期の経済成長のうち、家計消費と輸出の伸びは、それぞれ年率4.89%、6.78%であった。2025年第1四半期の経済成長率の鈍化は、家計消費の成長率が前年同期の4.91%に比べて、伸び悩んだことが原因である。家計消費はインドネシアの経済成長の主な柱で、2025年第1四半期の家計消費はGDPの54.5%を占めた。
一方で、唯一の牽引役は、2025年第1四半期に年率6.78%の伸びを示した財・サービス輸出である。輸出の増加は、川下化産業の推進による付加価値の高い製造業の輸出が増加したことが要因と見込まれている。
フィリピンのニッケル輸出禁止を受け、インドネシアの製錬産業が原料不足のリスク(5月7日)
インドネシアニッケル鉱業者協会(APNI)は、フィリピン政府による2025年6月からのニッケル鉱石輸出禁止計画が、インドネシアのニッケル加工産業(製錬所)に大きな影響を与えることが予想されると報告した。
フィリピン政府のニッケル鉱石輸出禁止計画は、ニッケル採掘業者の加工・精製工場や製錬所の建設を奨励するなど、川下の採掘産業を改善するためにとられたものである。
インドネシアは世界最大のニッケル生産国であるが、東部に位置するモロワリ(中部スラウェシ州)やウェダベイ(北マルク州)などの工業地帯で操業している製錬所は、フィリピンからの鉱石供給に依存しており、特に国内では希少になりつつある高品位鉱石の精錬を行っている。2024年に、インドネシアはフィリピンから約1,000万トン(CIF価格4億3,685万米ドル相当)のニッケル鉱石を輸入しているが、そのほとんどはモロワリやウェダベイなどの工業地帯の製錬所で使用されている。
同協会によると、フィリピンからの輸出禁止により、世界市場におけるニッケル鉱石の供給が逼迫し、価格が上昇することも懸念されている。このような状況は、短期的には国内のニッケル生産者に利益をもたらす可能性があるが、輸入された原料に大きく依存している製錬所にとっては操業コストが上昇する。その一方で、インドネシアにとっては、ニッケル下流部門に新たな投資を呼び込むチャンスとなる。同協会は、低品位ニッケル鉱石の加工技術の開発が重要であるとしている。
VinFast がインドネシアで63,000基のEV充電スタンドに3億ドルを投資(5月9日)
ベトナムの電気自動車(EV)メーカーであるVinfast社とその関連会社で充電スタンドを運営しているV-Green社は、2025年末までにインドネシア全土に63,000基の電気自動車充電スタンドを配備するために3億ドルを投資する計画を発表した。
同社はその計画を進めるため、EVインフラストラクチャー企業である中国のChargecore社、米国のChargepoint社およびCVS社と、インドネシアのAmarta Groupの4つの戦略的パートナーと覚書を交わした。同計画では、V-Greenが充電スタンド全体の20%に直接投資し、残りのインフラは事業協力契約(BCC)を通じて開発される。Chargecoreは2025年に少なくとも3,000万米ドルを投資し、Chargepoint、Amarta Group、CVSはそれぞれ年間約530万米ドルを拠出する。
また、パートナーの誘致と事業展開を加速させるため、V-Greenは1キロワット時あたり750ルピアで販売し、パートナーに対して最初の3年間は最大25%のリターンを保証する。
インドネシアがシンガポールからの燃料輸入を削減し、中東からの供給を視野に(5月9日)
エネルギー鉱物資源省は、価格高騰と地政学的な懸念を理由に、シンガポールからの燃料輸入を削減する意向であることを発表した。
同省の大臣によると、現在インドネシアの輸入燃料の約54~59%をシンガポールから輸入しているが、価格競争力のある中東のサプライヤーからの輸入に徐々にシフトしていくことを目指している。シンガポールは距離的に近いにもかかわらず、同国からの輸入価格は中東からの輸入と同等である。この価格設定のミスマッチと、より広範な地政学的・地理経済的配慮から、同省はより多様でバランスの取れた輸入戦略を模索している。
シンガポールからの燃料輸入の削減は計画は段階的に実施され、現時点では50〜60%の削減を目標としているが、最終的に2025年11月に完全に停止する予定である。この政策を促進するため、政府は大型タンカーを収容できるより大きな港湾施設の建設を計画している。現在、シンガポールからの輸入には小型船が使用されており、輸送・物流コストを押し上げる要因となっている。
インドネシアは輸入燃料に大きく依存しており、国内の石油生産量は現在日量約60万バレルで、100万バレルを超える1日の消費量にはほど遠い。なお、シンガポールは原油を生産していないが、精製と貿易の主要拠点であり、精製された製品を再輸出している。
また、中東に加え、米国も将来的にはインドネシアの燃料の主要輸入先のひとつになる。
インドネシアでの中国車販売台数が153%増、日本ブランドが劣勢に(5月11日)
インドネシア自動車産業協会によると、インドネシアにおける2025年1~3月の中国メーカーの自動車の販売台数は、市場全体が5%近く減少したにもかかわらず、前年同期の8,148台に比べ153%増の20,672台に急増したことを発表した。
現在、インドネシア自動車市場における中国メーカーのシェアは10%を占めており、前年同期の3.8%から急激に増加している。一方、日本メーカーのシェアは、91.7%から85.6%へと低下し、2025年3月時点で、トヨタを除く日本メーカーの大半が販売台数の減少を記録した。
ダイハツは前年同期比23.9%減の34,999台と最も落ち込みが激しく、次いでホンダは20.4%減の22,336台、スズキは20.4%減の14,174台、三菱は15.6%減の21,692台、いすゞは13.7%減の5,911台となった。トヨタだけが5%増の68,955台となった。トヨタは依然として33.6%の市場シェアを有しており、国内トップである、一方、他の日本メーカーは販売不振によりシェアが大幅に落ちた。
中国メーカーの自動車販売台数の急増に大きな影響を与えたのは、BYD が2024年7月にインドネシア市場に参入したことである。2025年1~3月のBYDの販売台数は5,718台に達している。奇瑞もまた、同時期で187%増の4,399台と好調な販売台数を記録した。一方、既存プレイヤーの武陵の販売台数は12.1%減の4,795台であった。
多くの関係者は、中国車は価格競争力があり、日本や韓国に劣らない機能を備えているため、市場で支持を集め始めていると語った。特に2025年のように経済が鈍化すれば、中国車は消費者にとってより一層魅力的なものになる。