タイのビジネスニュース:2025年5月前半 | ビジネスニュース | グローバル マーケティング ラボは各国の情勢コラムを紹介しております。

海外市場調査のグローバル マーケティング ラボ
お電話でのお問い合わせはこちら
03-6459-0162

お問い合わせ

各国情勢コラム
Column

タイのビジネスニュース:2025年5月前半


タイ投資委員会、データセンター開発を中心とした投資奨励申請が97%増加と発表(5月1日)

 タイ投資委員会(以下、BOI)は、デジタル分野、特にデータセンター開発がタイへの投資を牽引しており、2025年第1四半期の投資奨励申請額は前年同期比97%増の4,310億バーツを超えたと発表した。
 国内外の投資奨励申請件数は、1月~3月にかけて822件に達し、前年同期比で20%増加した。なおこのうち、外国投資家による投資奨励申請は618件を占めている。
 デジタル分野への申請額は前年の174億バーツから947億バーツへと5倍以上に急増しており、そのほとんどは5つのデータセンタープロジェクト(計942億バーツ)によるものである。これは、タイでの高等技術投資に対する外資系企業・国内企業の双方の関心が高まっていることを示している。
 BOIによると、第1四半期の外国直接投資(以下、FDI)の出所としては、1位は香港企業であり、デジタル分野の727億バーツを含む合計
1,350億バーツを投資し、FDI全体の50%を占めた。2位は中国(473億バーツ)で主に金属、電子、車関連分野が目立った。3位はシンガポール(381億バーツ)で電子・電気製品(以下、E&E)およびデジタル分野に集中した。日本は251億バーツの投資で4位、台湾は47億6,000万
バーツの投資で5位となり、いずれもE&Eおよび自動車分野への投資が中心となった。

政府は1,000万人にAIリテラシーを浸透させることを目指す(5月2日)

 タイ国家AI委員会は、人工知能(AI)を活用した国家変革に向けた指針を策定し、今後2年以内に1,000万人にAIリテラシーを浸透させ、9万人のAI専門職と5万人のAI開発者を育成する目標を発表した。
 この目標は、AIの高度な発展に対応するエコシステムを構築し、タイを地域のAI開発ハブにするためのものであり、クラウドシステム、データセンター、画像処理装置(GPU)などのインフラ整備や、オープンソースAIプラットフォームの構築などが含まれ、官民連携により少なくとも5,000億バーツの投資が見込まれている。
 これに伴い、政府機関は、AIに必要なデータを統合する「データバンク」の設置や2026年までの業務完全デジタル化を目標としている。
 AIの応用分野としては、医療・公衆衛生、観光、農業など経済拡大と社会発展を支援する分野に焦点を当て、効率向上や生産性向上が期待
されている。今後は、民間部門と連携した「AIセンター・オブ・エクセレンス」の設置を計画し、分野ごとのAI開発の統合と加速を図る方針
である。

 

 

Tata Steel (Thailand)社がダクタイル鉄筋の生産を強化(5月5日)

 インド最大の鉄鋼材メーカーの子会社であるTata Steel (Thailand)社は、地震発生リスクの高い地域における建物向けの高強度鋼材の需要の高まりを受け、ダクタイル鉄筋の生産を強化する方針を発表した。
 同社の「スーパーダクタイル鉄筋」と呼ばれる鋼材は、曲げやすく、なおかつ強度が高いため、鉄筋コンクリート構造物の地震被害を軽減
する効果があるとされる。
 タイでは、今年3月に発生したミャンマー地震により、耐震鋼材への関心が高まっており、同社はダクタイル鉄筋の普及促進キャンペーンを
実施することで、より多くの購入者にダクタイル鉄筋の認知を広げる方針である。
 現在のダクタイル鉄筋の年間販売量は1~2万トンで、主に地震リスクの高いタイ北部に出荷されており、今後はさらなる需要拡大とそれに伴う売上増加が見込まれている。2025年度第1四半期では、同社の総販売量は前年同期比2.5%増の32万8,000トン、うち輸出が69.7%増、国内販売が7.94%増となった。
 ただし、タイの鉄鋼業の稼働率は30%未満にとどまっている。中国が東南アジア向けの輸出を拡大しているため、さらに稼働率が低下する見通しであることから、同社は新たな設備投資を見送る方針としている。

タイの若者の出産数が減少する中、ペット産業が活況(5月6日)

 ウドンタニ県最大の伝統的卸売チェーンの一つ、タン・ニー・スーン・スーパーストアによると、新型コロナウイルス拡大が始まって以降、若者の育児離れが顕著になっており、紙おむつなど育児用品の売上が2025年第1四半期には前年比で2〜3割減少した。一方、多くの若者は、
子育てを経済的な負担と感じており、犬や猫・ウサギ・リスなどのペットを飼うことを選ぶ傾向が高まっている。
 タイの人口は2020年以降減少傾向にあり、2024年末時点での人口は約6,600万人、2024年には出生数約46万2,000人に対して死亡数が約
57万1,000人と自然減少が続いている。
 一方、ペット市場は成長を続けており、2024年の市場規模は750億バーツに達した。ペットを家族同様に扱う傾向から、品種ごとのフードや高品質なケアサービスの需要が拡大している。観光業の回復により、バンコク以外の地域でもペット関連の支出が増加傾向にあり、特に猫は狭い住宅環境に適していることから人気があり、ウサギやリスなどの小動物への関心も高まっている。

 

 

ハーブ部会が政府にタイハーブ産業の支援強化を提言(5月12日)

 タイ工業連盟(FTI)のハーブ部会は、政府に対し、国の公的医療制度におけるタイの伝統医学の割合を現在の2.2%から10%に引き上げるため、ハーブ産業への支援を強化すべきと提言している。ハーブ部会によると、政府の支援により中小企業を含むハーブ製薬メーカーの信頼性が高まり、事業計画の策定や輸出の増加に寄与するという。
 タイでは、公的医療制度で使用される医薬品のうち、伝統医薬品(漢方薬・ハーブ類)の使用はわずか2.2%に過ぎず、そのほとんどが輸入薬で占められている。タイ伝統医薬品の市場規模は15億バーツで、医薬品全体市場の705億バーツと比べて極めて小さい。
 国家必須医薬品リストに掲載されている伝統医薬品(漢方薬・ハーブ類)もわずか116品目と少ない。FTIハーブ部会は、タイのハーブ製品が代替医療として高い輸出可能性を秘めているとしており、政府の支援が必要としている。
 タイは東南アジア最大のハーブ製品輸出国であるが、世界市場ではトップ10にも入っていない。タイのハーブ製品はほとんどが日本に輸出
されており、タイのハーブ製品輸出全体の19.5%を占めている。なお、その他の輸出先としてはインドが14.8%、中国が13.6%、サウジアラビアが13%である。
 この状況を踏まえ、ハーブ部会は製品の品質向上のため、GMP(適正製造基準)およびPIC/S(国際査察基準)への適合を奨励している。
すでに国内で56工場がこれらの認証を取得しており、さらなる普及が期待されている。

エアバスが航空機のバイオ燃料拠点としてタイに注目(5月14日)

 エアバスは、東南アジアを世界有数の持続可能な航空燃料(SAF)の生産拠点とする構想を進めていることを発表した。
 同社は、SAFが2050年までのネットゼロ達成に不可欠であり、タイがその生産・供給国になると期待している。アジア太平洋地域は世界の
SAF原料の約40%を供給すると見込まれており、東南アジアは2,600万トン/年のSAFを生産することができる。そのうち500万トンはタイが担うと見込まれている。  
 タイには、糖蜜や稲わら、籾殻といった豊富な原料があり、バンチャックやPTTグローバルケミカルなどがすでにSAF生産に着手している。
また、EV普及によるバイオエタノール需要の減少もSAF生産の余地を広げている。
 課題は、原料の種類や立地、収集・輸送コストなどを精査する上で必要となる詳細な実現可能性調査である。世界的には、現在使用されている航空燃料のうちSAFの割合は1%未満だが、2030年には6%に達する見込みである。
 タイ民間航空局(CAAT)は、生産者の収入を保証するため、SAF使用の義務化に向けた最終調整を進めており、2024年第4四半期から欧州路線を対象に1%のSAF使用を義務化する方針であるとしている。

 

 

長安汽車がタイに右ハンドルの電気自動車(EV)の研究開発センターと地域事務所を設立(5月15日)

 中国の大手自動車メーカーの一つである長安汽車は、タイに右ハンドル電気自動車(EV)の研究開発センターと地域事務所を設立する予定であることを発表した。
 同社は、2023年にタイに進出し、同社初の海外EV製造工場をラヨーン県に設立、2025年5月にラヨーン県のWHAイースタンシーボード工業団地4で開所式が行われた。
 この工場では、国内販売と輸出向けの右ハンドルEVを生産する。年間生産能力は10万台で、将来的には倍増する見込みである。工場の建設には、投資委員会(BoI)の投資奨励特権を活用しており、第1期投資額は100億バーツを超える。
 また、同社は研究開発センターにおいてタイ人材の採用を計画しており、地元の自動車部品メーカーも右ハンドルEVの開発に参加させる方針である。
 同社は今後、タイの自動車部品サプライヤーへの技術移転を計画しており、現在600人の従業員数を来年までに2,000人(全体の90%)へと拡大予定である。また、地元の自動車部品メーカーと協力し、部品の現地調達率を2024年末には65%、2028年には80%まで高める目標を掲げており、これにより、タイはEV産業のハブとしての競争力を一層高めることが期待されている。

一覧へ戻る

Pagetop
調査のご依頼やご質問はお気軽にお問い合わせください。
03-6459-0162
受付:平日9:00~17:30