インドネシアのビジネスニュース:2025年5月後半

インドネシアが産業分野で原料塩不足の深刻化を受け、塩の輸入を再開(5月16日)
インドネシアの食糧担当調整大臣は、国内産業が十分な原材料を確保できない状況が続く中、国内産業からの強い圧力を受けて、塩の輸入制限を緩和する措置を正式に再開したと発表した。
政府は当初、より広範な自給自足プログラムの一環として、2025年1月から塩の輸入を全面的に停止する方針であった。しかし、国内の塩生産能力が不足していること、および医薬品や食品・飲料メーカーなど主要産業からの需要の増加を受けて、全面的な輸入禁止措置は2027年まで延期することとした。このスケジュール変更により、海洋水産省は2027年末までに塩の自給自足を達成するために必要なインフラを構築するとしている。
なお、インドネシアの輸入塩への依存度は、過去5年間ほぼ横ばいの状態が続いていた。2020年に261万トン(9,456万米ドル相当)の塩が輸入され、2021年には輸入量が283万トンに増加し、以降2024年まで毎年270万トンを超える水準となっている。昨年は275万トン(1億2,590万米ドル相当)の塩を輸入した。塩の輸入元は、オーストラリアが最大で202万トンを供給し、次いでインド(72万3,900トン)、ニュージーランド(2,490トン)、中国(1,840トン)が続いた。
政府は今後2年間で、特に工業用塩の国内生産能力を強化しつつ、輸入塩への依存度を段階的に削減する方針である。
2025年4月の中国向けの石炭輸出量が20%減少(5月21日)
エネルギー鉱物資源省(ESDM)は、インドネシアの主要な石炭の輸出先である中国への輸出が2025年4月に急落したと発表した。
中国税関総局の統計によると、2025年4月のインドネシアからの石炭輸入量は前年同月比で20%減の1,428万トンとなった。この輸入量の減少は、インドネシアの石炭基準価格の影響と中国国内の石炭価格の低下が要因とされている。
2025年3月から、政府は輸出業者に対し、石炭基準価格(HBA)に従って石炭を販売することを義務付ける政策を適用した。政府によると、HBAを基準とした輸出は、その鉱物資源のグローバル市場における販売価格の安定化を保つための措置である。しかし、中国の買い手は、市場価格に比べて過度に高いHBAを拒否した。
それに加え、中国の国内石炭価格は過去4年間で最も低い水準まで下落しているため、インドネシアの石炭は中国市場で競争力を失っている。
一方で、エネルギー・鉱業法研究センターは、HBA政策は価格の柔軟性を失わせ、インドネシアの石炭の価格競争力を低下させるとの見解を示した。HBA政策は需要の低迷期において、インドネシアにとって逆効果となる可能性があると指摘し、同センターは政府に対してHBA政策の再検討を促進している。特に、特定の状況下では事業者がHBAを基準とせずに輸出を行うことの重要性を主張している。価格の柔軟性は市場の動向と需要の変化に対応し競争力を維持するために不可欠である。さらに、世界経済の状況が依然として不安定のなか、HBA政策が変更されない場合、インドネシアの石炭輸出は今後数ヶ月間でさらに低下すると予測される。
なお、中央統計局(BPS)のデータによると、2025年3月のインドネシアの石炭輸出総量は3,073万トン、19億7,000万米ドルであった。これは前年同月比で23.14%の減少であり、同年2月と比較すると5.54%の減少となった。
政府が国内のパーム油トラッキングシステムの開発を促進(5月22日)
経済担当調整大臣は、国内のパーム油産業の透明性と持続可能性の課題に対応するため、現在、政府がIT技術を活用したトラッキングシステムの開発を推進していることを発表した。この取り組みは、世界市場におけるインドネシアのパーム油製品の競争力を高めるために重要な要素とみなされている。
同システムは、インドネシアのパーム油国家持続可能性認証制度を策定したインドネシア持続可能パーム油(ISPO)チームによって開発されている。このパーム油の情報システムおよびトラッキングシステムには、認証データ、農園の立地情報などが含まれる。また、サプライチェーンの透明性を確保するため、上流から下流までのトラッキング技術を採用し、国内および国際的な持続可能性基準への準拠を促進するよう設計されている。さらに、すべての関係者が利用できるように、システムデザインのユーザーフレンドリーの要素も重要視している。
今後、同システムは、持続可能なパーム油産業のロードマップを含む国家の戦略政策と連動させる予定としている。
モンゴルとインドネシアがハラール食肉の輸出について交渉(5月22日)
インドネシアを公式訪問したモンゴルのトップ外交官は、ハラール認証を受けた食肉をインドネシアに輸出するための交渉が現在進行中であると発表した。
インドネシアはいまだに食肉を海外からの輸入に頼っているため、同国はこれをチャンスと捉えている。中央統計局(BPS)のデータによると、インドネシアは1月に6,120万ドル相当の牛肉1万8,220トンを輸入している。主な産地としてはインドが73.5%、オーストラリアが15.7%と、ブラジルが9%である。同国の統計データによると、モンゴルは2024年1~9月にインドネシアに牛肉を約3万トンとヤギ肉を0.5万トンを輸出している。
この交渉が成功すれば、モンゴルはインドネシアとの貿易不均衡を改善できる可能性が高いという。公式統計によると、インドネシアとモンゴルの貿易額は、2023年の1,670万ドルから2024年には2,860万ドルとほぼ倍増し、インドネシアの対モンゴル黒字も同期間に490万ドル増の1,280万ドルとなった。
なお、インドネシアは人口の80%以上がイスラム教徒であることから、輸入食肉にイスラム法の規定を満たしていることを証明するハラール認証を義務付けている。
医療研究の拡大に向け、DKH Hospital Groupが台湾のTVGHと提携契約を締結(5月23日)
国際的なネットワークの強化と医療サービスの質の向上を目的として、インドネシアのDKH Hospitals Groupは、台湾のTaipei Veterans General Hospital(TVGH)と覚書(MoU)を締結したと発表した。
この協力関係は、医療分野、研究、および医療教育の分野における開発に焦点を当てている。協力の範囲には、医療従事者の交流と科学的知識の共有、研究と臨床試験の協力、遠隔医療サービスの開発、医療教育の継続的な研修と教育、国際的な患者紹介、および双方が合意したその他のプログラムが含まれる。今後は、プログラムの円滑な実施へのコミットメントの一環として、両機関は本MoUの枠組み内での活動を監督するコーディネーターを任命する。
同協定は2年間有効であり、双方の合意に基づき延長が可能である。