タイのビジネスニュース:2025年6月後半

PTT Global・Chemical社が使用済み触媒をリサイクルする技術を共同開発(6月17日)
タイ最大の石油化学メーカーであるPTT Global・Chemical社(以下GC)は、使用済み触媒をリサイクルする技術をRight Reactivation社と共同で開発したと発表した。
石油精製所や石油化学産業においては、生産プロセスの効率化に触媒が不可欠である。触媒は一定期間使用すると活性が低下し、最終的には有害な廃棄物となる。しかし、使用済み触媒にはプラチナ、パラジウム、銀などの貴金属が含まれており、これらはリサイクルする価値が
高い。
タイではこれまで、使用済み触媒を海外に輸送し、貴金属を抽出する方法が一般的であったが、高額な処理コストが課題となっていた。そこでGCは、触媒の機能を回復させる再生技術を持つRight Reactivation社と共同で、国内で貴金属を回収するリサイクル技術の開発に取り組んでいた。
なお、この技術は、タイ政府が推進するバイオ・サーキュラー・グリーン(BCG)経済開発モデルにも合致しており、両社は将来的な商業化を検討している。
Right Reactivation社によると、使用済み触媒から抽出される貴金属の価値は年間100億バーツに達し、産業部門での触媒使用量が増えるにつれ、その価値も拡大する傾向にある。例えば、パラジウムは耐腐食性と耐熱性に優れ、金の約30倍の希少性を持つ。これは触媒の製造のみならず、高級宝飾品の製造にも活用されている。また、銀は電子産業で幅広く使用されている。
Right Reactivation社は、現在の年間200トンの使用済み触媒に相当する金属抽出能力を、2027年までに年間500トンへ増強することを目指すとしている。
バンコクの全労働者の最低賃金を7月1日から1日400バーツに引き上げ(6月17日)
国家賃金委員会は、バンコクの全労働者の最低賃金を7月1日から1日400バーツに引き上げると発表した。
現在、バンコクとその周辺県の最低賃金は1日372バーツであり、その他の地域では県ごとに337~380バーツの範囲で設定されている。これまで400バーツが適用されていたのは、プーケット、チョンブリ、ラヨーン、チャチューンサオ、そして観光地として人気のサムイ島のみに限定されていた。
政府は事業者の財政負担を軽減するために、まず6つの商業銀行と連携し、300億バーツ規模のの低利融資を提供する方針である。さらに、
今後も影響を受ける事業者・労働者への追加支援策を検討する方針を明らかにしている。
Banpu社が日本の太陽光発電所10カ所から撤退(6月18日)
タイの石炭・発電大手Banpu社の子会社Banpu NEXT社は、日本にある10カ所の太陽光発電所(総発電容量91.69メガワット)の株式44億
6,000万バーツ相当を売却することを発表した。
同資産は、英国の投資ファームActis LLPの関連会社に売却される。売却はBanpuの再生可能エネルギー事業子会社Banpu NEXTを通じて行われ、取引は2025年第3四半期中に完了する予定である。なお、Banpu NEXTは親会社のBanpuと発電事業子会社Banpu Power(BPP)が50%
ずつ出資する合弁会社であり、再エネ事業の中核を担っている。
売却の対象となった発電所は、滋賀県日野市、 兵庫県淡路市、北海道むかわ町、福島県会津、宮城県黒川町、佐賀県天山町、北海道室蘭、
佐賀県武雄、福島県二本松町にある10カ所で、TK(匿名組合)スキームを利用して運営されていた。TKとは、地元企業が発電所の運営者と
なり、Banpu NEXTは資本のみを提供する投資スキームである。また売却後も、同社の匿名組合(TK)形態での持分容量が54メガワットあり、日本での太陽光発電所のポートフォリオを維持している。
Banpuは今回の売却によって資産の最適化と財務の強化を図り、次世代クリーンエネルギーへの投資を加速する方針としている。
財務省が国内初のバーチャル銀行設立申請を3社承認(6月19日)
タイ中央銀行は、財務省が国内初となるバーチャル銀行の設立申請3社を承認したと発表した。新銀行は承認日から1年以内に営業を開始する予定である。
バーチャル銀行とは、実店舗を持たず、オンラインのみで銀行サービスを提供する形態で、今回承認された3社は以下の通りである。
第1は、CPグループが出資するACMホールディングス(TrueMoney)。第2は、クルンタイ銀行(KTB)と、通信大手Advanced Info
Service(AIS)、石油小売大手PTT Oil and Retail Business(OR)が提携するコンソーシアム。第3は、サイアム商業銀行(SCB)の持株会社SCB Xが主導し、韓国最大のデジタル銀行KakaoBankおよび中国系デジタル銀行のWeBankと組むSCB Xコンソーシアムである。
今回の選定は、昨年3月20日から9月19日までの間に提出された計5件の申請から、財務省と中央銀行による厳格な審査を経て決定された。
中央銀行は、この「画期的な決定」が金融セクターの近代化と、従来の銀行サービスが十分に行き届いていない層へのデジタル金融サービスの提供拡大を目的としていると強調した。
審査では、申請者の資格、事業計画、そしてデジタルファーストの金融サービスを提供するための技術力が重視され、特に、中小企業
(SME)や銀行口座を持たない、または十分に利用できていない個人顧客へのサービス提供能力が重要視された。
さらに中央銀行は、今回の措置は金融システムの安定性を維持しつつ、銀行セクター内の健全な競争を促進するものであるとしており、意思決定プロセスにおいては、利益相反を防ぐための標準化された審査プロセスが導入された。
承認された3社は今後、公開有限会社を設立し、財務省が定める条件を遵守する必要がある。また、最終的な営業許可を申請する前に、中央
銀行による準備状況の評価を受ける必要があるとしている。
Gulf Development社が再生可能エネルギー目標を5年早く達成(6月30日)
タイで時価総額最大のエネルギー会社であり、通信事業者でもあるGulf Development社は、太陽光発電所への最近の投資により、再生可能エネルギーの割合を総発電容量の40%に引き上げる目標を達成したと発表した。この目標は当初2030年までの達成を予定していたが、それを前倒しで実現したことになる。
同社は、全額出資子会社であるGulf Renewable Energy社を通じて、7億400万バーツを投じ、Gunkul Solar Powergen社およびGunkul One Energy社の2社の株式をそれぞれ50%取得した。両社は、SET(タイ証券取引所)上場の総合クリーンエネルギー開発会社であるGunkul Engineering社の子会社であり、合計461メガワットの発電能力を持つ9カ所の太陽光発電所の開発を計画している。
Gunkul Engineering社はすでに、これらの太陽光発電所からの電力について、タイ電力公社(EGAT)との間で25年間の電力購入契約(PPA)を締結済みである。商業運転開始は2026年から2030年の間を予定している。
今回の再生可能エネルギーの拡充により、Gulf Development社は特にデータセンター事業者をはじめとする顧客にクリーンな電力を供給できる体制を整えつつある。なお、同社は、今年半ばにIT負荷25MW規模のデータセンターの開業も予定している。
一方で同社は、世界的な経済および政治の不確実性が高まる中、今年の新規投資には慎重な姿勢を取るとしている。地政学的リスクや主要経済国間の貿易摩擦が消費者の購買力を低下させ、最終的には電力需要にも影響を与える可能性があると警戒している。