タイのビジネスニュース:2025年7月前半

タイ政府が屋上太陽光パネル設置に税制優遇措置を導入(7月1日)
タイ政府は、屋上設置型太陽光パネルの購入者に対し、最大20万バーツの減税措置を取ることを閣議決定したと発表した。同措置によって、太陽光発電市場の活性化、政府の省エネ計画の推進、供給業者の収益増加につながると期待されている。
エネルギー当局は、国民の経済的負担を軽減するため、電気料金高騰への対処に取り組んでおり、今回の減税は、高騰する電気料金に対処するための代替手段を国民に提供するとして、エネルギー大臣によって提案された。
この税制優遇措置は、化石燃料由来のエネルギーの代わりに太陽光発電を使用することで、購入者のライフスタイルをより持続可能なものに変えることを目的としている。これにより、国民は電気料金を削減できるだけでなく、タイが輸入する液化天然ガス(LNG)の削減にも貢献できる。タイは、国内のガス供給の減少により、LNG輸入への依存度を高めており、価格変動に直面している状況である。
代替エネルギー開発効率局によると、2025年~2026年にかけて、最大9万戸の住宅が減税政策の対象となる見込みである。この計画には
202億バーツの予算を計画している。
タイグリコがタイでのアイスクリーム販売を終了(7月3日)
タイグリコは、今年末でタイでのアイスクリーム販売を終了すると発表した。
同社は、2016年に子会社のGlico Frozen (Thailand)社を通じてタイでアイスクリーム事業に参入した。これは同社にとって、日本国外での初のアイスクリーム事業であり、国際戦略上重要な位置付けであった。
タイで販売されていたアイスクリーム製品は、同国で「クレモ」ブランドを製造するChomthana社によって製造されており、「パリット」、「ジャイアントコーン」、「パナップ」、「セブンティーンアイス」の4つのブランドを展開していた。
現在、同社はパトゥムターニー県にチョコレートとビスケットの工場を2つ所有しており、国内市場への供給に加え、インドネシアとベトナムへの輸出も行っている。
アイスクリーム事業からの撤退後も、菓子類やアーモンドミルク飲料など他の製品に関しては、継続して販売するとしている。
デジタルGDPは前年比+6.2%の成長予測(7月4日)
デジタル経済社会省(DES)は、米国の相互関税による潜在的な影響があるものの、今年のデジタル業界のGDPが前年比+6.2%拡大すると
予測している。この数字は、今年の国内GDP成長予測(1.8%)の3.4倍にあたる。
6月27日時点のデジタル経済社会省国家委員会の予測では、デジタル業界のGDPは、米国の関税の影響を回避するための輸出の継続的な
成長、タイの「クラウドファースト政策」、デジタル政府プロジェクトの加速によって成長すると見込まれている。さらに、データセンターやプリント基板、半導体部門への大規模な投資や、タイ人および外国人観光客によるデジタル決済サービスの利用増加も成長を後押しする要因であると予測されている。
同委員会の予測では、ハードウェア業界は5.5%成長(従来予測6.6%)、デジタルサービス業界は5.7%成長(従来予測6.7%)と、いずれも下方修正されており、デジタル産業の成長ペースは全体的に鈍化すると見込まれているものの、引き続き拡大し続けると予測している。
タイ政府がバンコク首都圏の鉄道運賃を一律20バーツに制限する計画を承認(7月8日)
タイ内閣は、2025年10月1日からバンコク首都圏のすべての鉄道運賃を一律20バーツに制限する計画を承認したことを発表した。この決定は、通勤者の交通費負担を軽減し、自家用車から公共交通機関への移行を促すことを目的としている。
新しい運賃制度は、エアポート・レール・リンクを含む全13路線の公共交通機関を対象とし、バンコク首都圏の280キロメートル、194駅のネットワークをカバーする。ただし、この政策はタイ国籍者のみを対象としており、外国人観光客は同対策の対象外である。これにより対象者(タイ国籍者)は、8月から政府の「Tang Rat」アプリでの事前登録が可能となる。
登録する利用者は、利用する路線に応じて、RabbitプリペイドカードまたはEMV(Europay、Mastercard、Visa)非接触型クレジットカードのいずれかをアプリに登録する必要がある。将来的に、このシステムは銀行アプリからのQRコード利用にも対応し、さらなる利便性と柔軟性を提供する予定である。
新しい運賃制度により、燃料費、交通事故による損害、大気汚染対策の費用など、国全体で年間100億バーツの削減が可能になると見込まれており、このプロジェクトの効果は、開始から1年後に評価される予定である。
なお、この措置に対して運輸局では、運行会社の損失を補填するため、政府はバンコク高速鉄道公社(MRTA)の利益と国庫から推定80億
バーツを拠出し、共同の乗車券基金を設立するとしている。
米国の関税導入案がタイ製造業を直撃(7月9日)
タイ貿易産業雇用者連盟(EconThai)は、米国がタイ製品の輸入に対して提案している36%の関税案が、タイの製造業に大きな影響を与えると指摘している。特に、その影響は労働者に直接及ぶ可能性が高いと警鐘を鳴らしている。
この高い関税は、8月1日に発効予定であり、ベトナム製品の20%、マレーシア製品の25%、インドネシア製品の32%など、タイ以外の東南アジアの主要国と比較して、最も高い税率が適用される予定である
EconThaiは、この高額な相互関税により、米国向けに輸出されているタイの主要製品(タイヤ、エアコン、家電製品、一部の電子製品、加工農産物など)は生産削減を余儀なくされ、その影響は幅広い業界に及ぶと分析している。さらに、短期的にはベトナム、マレーシア、インドネシアとの競争が激化することにより、2025年後半には工場労働者への影響が顕在化すると予測している。
商工銀行合同常任委員会も以前、トランプ米大統領がタイ製品に36%の関税を課した場合、タイのGDP成長率は0.7~1.4%に低下し、年間輸出は最大2%減少する可能性があると指摘していた。
また、EconThaiは、長期的な視点においても、外国投資家がよりエネルギー価格や賃金が低いベトナムやインドネシアに投資先を移す恐れがあり、その結果、タイは東南アジアにおける投資先としての魅力を失う可能性があるとみている。
エネルギー当局がディーゼル燃料の小売価格上限の調整を検討(7月15日)
石油燃料基金局(OFFO)は、エネルギー当局が、ガソリンスタンドでのディーゼル燃料の上限価格を調整することを検討していると発表した。
OFFOによると、タイ政府はこれまでディーゼル燃料の価格を1リットルあたり30バーツを上限として設定し規制してきた。しかし、2022年のロシアによるウクライナ侵攻以降、世界の原油価格が急騰しており、政府は追加の補助金を出すことによる巨額の負債を避けたことから、
実際の市場価格は32〜33バーツとなった。また、先月の12日間にわたるイスラエル・イラン紛争中には原油価格が再び急騰したため、ディーゼル燃料の価格は1リットルあたり31.94バーツとなった。
こうした状況から、経済状況と国内ディーゼル燃料の価格の規制に使用される石油燃料基金の財政状況に合わせて、上限価格を見直す必要が生じている。
OFFOの政策戦略部門責任者は、上限価格は2025年から2029年まで実施予定の燃料価格危機管理計画に沿って見直すべきとの見解を示して
おり、新たな上限価格についての詳細は言及せず、燃料価格危機管理計画の草案策定が完了次第、公表するとしている。
なお、イスラエル・イラン紛争中、政府は世界的な原油価格高騰による影響を緩和するため、ディーゼル、ガソリン、ガソホールの利用者から徴収する基金拠出金を一時的に引き下げていた。紛争終結後、ガソリンおよびガソホール利用者は、1リットルあたり1.9〜9.6バーツの通常の料金を負担しているが、輸送・製造分野の主要燃料であるディーゼル燃料の使用者については、依然として1リットルあたり0.9バーツの負担である。
現在、基金にとって唯一の財政負担となっているのは、液化石油ガス(LPG)の価格補助である。1キログラム当り2.03バーツを補助することで、LPG価格を15キログラムあたり423バーツにしている。なお、調理用として使用されるLPGの小売上限価格についても、ディーゼル燃料と同様に見直される可能性があるとしている。