タイのビジネスニュース:2025年7月後半

タイ商務省がキャッサバの新たな輸出市場を模索(7月17日)
タイ商務省は、タイ産キャッサバの輸出に関して、中東、ニュージーランド、韓国といった新たな輸出市場を積極的に模索していると発表した。
タイ・タピオカ貿易協会は、米国の関税はまだキャッサバの輸出に影響を与えておらず、今年中に輸出目標は達成できると見込んでいる。
タイは年間約10万トン、約6,000万米ドル相当のキャッサバ製品を米国に輸出しているが、すべて関税0%で輸出されている。米国へのキャッサバ輸出品のほとんどは、加工デンプン、天然デンプン、甘味料である。米国の輸入量は、過去2ヶ月で増加している。
一方、タイの最大の競争相手はベトナムはであり、米国がタイ産キャッサバ製品に高い関税を課した場合、ベトナムは競争上の優位性を得ることになると見込まれている。その為、日本、欧州連合(EU)、中東、マレーシア、ニュージーランドといった新たな市場を積極的に模索している。
商務省対外貿易局(DFT)によると、タイは世界最大のキャッサバ輸出国であり、今年の輸出額は目標の750万トンに達すると見込んでいる。今年の1~5月の輸出量は、前年比37.1%増の406万トンに達した。輸出量は大幅に増加したものの、輸出額は前年比12.5%減の453億バーツにとどまっている。これは主に国際市場での価格下落によるものである。キャッサバの現在の主要輸出市場は中国、韓国、日本である。
今後、サウジアラビアとニュージーランドでは、飼料原料としてのキャッサバの需要が高まっているため、農務省は中東を含む新たな市場への進出を模索している。
タイ投資委員会が太陽光パネル製造への投資奨励を中止(7月17日)
タイ投資委員会(BOI)は、米国の関税政策や貿易戦争の影響からタイ国内企業を守るため、太陽光パネル事業の投資奨励策を見直し、リスク回避と産業の高度化を同時に推進する方針を打ち出している。
タイで行われている一部の太陽光パネル製造は、中国企業が他国に生産拠点を移して輸出回避を行ういわば迂回輸出の拠点となっている側面があった。しかし、今後は、単純な組立のような従来の製造から脱却し、国内メーカーによる太陽光パネル用部品の製造を奨励する方向に転換する考えである。具体的には、アルミフレーム、強化ガラス、シリコンセルなど、太陽光パネル製造に必要な部品を生産する国内メーカーに対し、法人税免除や輸出用部材の関税免除といった優遇措置を適用している。
一方、米国は先月、タイやカンボジア、ベトナム、マレーシアから輸入される太陽光パネルに対し、最大で3,521%という非常に高い関税を
課す措置を発表した。この関税措置は、中国からの補助金を受けた製品が不当に安価に米国市場に流入しているとのダンピング疑惑に対応するもので、米国の国内産業保護の一環とされている。
また、一部の中国企業は、製品ブランド名を変更して米国に再輸出するなどの対応を取っているとされ、こうした動きがさらなる貿易障壁を招く恐れがあるとして、BOIは電子製品、衣料、家具、バッグなど他分野の輸出にも注力している。
さらにBOIは、タイの中小企業が製造業の近代化を図るべく、デジタル技術や自動化設備を導入などを促進しており、対象企業には法人税免除措置を設けるなど競争力強化を後押ししている。
タイが輸入EVへの物品税引き上げを検討(7月18日)
財務省は、現地調達率の低い輸入電気自動車(EV)に高い物品税を課すことを検討していることを発表した。特に電気ピックアップトラックは物品税局の調査対象となっている。
中国から輸入される電気自動車は輸入関税ゼロの恩恵を受けているが、現地調達率がゼロか低い場合、今後はより高い物品税が課される可能性がある。タイは中国と自由貿易協定(FTA)を締結しており、EVを含む多くの中国輸入品は輸入関税が免除されている。これにより、40%
から80%の輸入関税を課せられる他国の自動車メーカーとの競争上の不均衡が生じている。
物品税局は、タイ投資委員会(BOI)と連携し、ピックアップトラック業界への支援策の策定に取り組んでいる。BOIの条件を満たす輸入業者は支援の対象になるとしている。
タイの建設用棒鋼市場が品質意識の高まりで著しく成長(7月21日)
タイ電炉鉄筋協会(以下、EAF協会)は、タイの建設用棒鋼市場が高い成長を示していることを発表した。
この成長の背景には、産業省による鉄鋼品質の検査体制の強化・厳格化や、地震や建物倒壊などの災害の影響による高品質な鉄鋼材への消費者意識の高まりがある。特に電気アーク炉(EAF)で生産された鉄鋼に対する信頼性が向上している。
今年初めから継続的に実施されている非標準鉄鋼製品・工場の取締り強化に加え、地震や国家監査庁ビルの倒壊などが、鉄鋼品質に対する社会的関心を大きく高めた。長期的な建築物の安全性を考慮し、構造材としての鉄鋼の重要性が再認識されている。
この傾向を受けて、棒鋼の需要は大幅に増加し、生産体制の強化が進められている。鉄筋製造用ビレット(鋼片)の国内生産が拡大されるとともに、EAFや高炉で生産された輸入ビレットの調達も進んでいる。
タイ鉄鋼協会の統計によれば、2025年1〜5月の棒鋼・形鋼の生産量は、29.2万トン/月から34.5万トン/月に増加しており、前年同期比で
18%以上増加した。また、同期間における棒鋼向けのビレット輸入量は275,669トンとなり、前年の100,474トンから約174%の急増となった。
一方で、「棒鋼の供給不足」や「価格高騰」が懸念されている。EAF協会は、品質・環境・労務管理などの観点から、標準を満たす製品を
維持するためにコストがかかっており、価格高騰はその実質的なコストを反映したものであるとしている。加えて、鉄筋コンクリート用棒鋼は商務省の監督下にある「管理対象商品」に指定されており、公正取引の観点から、価格や販売条件の調整が行われている。
生産能力に関しては、今後、第3四半期にはEAF製鉄業者による鉄筋生産量が前期比約45%増(+6万トン)、月間20万トン規模に達する見通しであり、第4四半期には28万トンとなる可能性がある。工場の定期修繕や他製品の製造計画は一部延期され、生産体制の強化が図られている。
現在、一部の製鉄所では他製品への転換や定期メンテナンス計画があるものの、協会はそれらの延期を要請しており、棒鋼の安定供給を最優先としている。すでに一時的に停止していた工場の多くが稼働を再開しており、需給のバランス回復を目指している。今後、協会は全体の生産体制を強化し、急増する需要に的確に対応するとしている。
富士フイルムがデジタル事業拡大計画を発表(7月22日)
富士フイルムビジネスイノベーション(タイランド)は、企業のデジタル変革を支援するパートナーとして、文書管理や業務効率の改善を通じて顧客のコスト削減と生産性向上を目指している。特に、ワークフローのデジタル化やロボティックプロセスオートメーション(RPA)などのソリューション提供を強化しており、アナログ業務からの移行によりコストを20〜80%削減できるとしている。
同社は、2025年で1,990億バーツの市場規模と推定されるタイのプリンターおよびコピー機市場の開拓・シェア拡大を図っている。販売戦略としては、①高付加価値顧客向けの直販強化、②中小企業や地方市場向けに正規代理店を拡大する間接販売の推進、③販売チャネルの全国展開が柱となっている。今後3年で間接販売比率を現在の15%から21〜22%に引き上げることを目指しており、2025年度の営業利益成長率は5%を維持する計画である。
地域展開においては、北部・東北部・中部・西部・南部に対応した販売網を構築し、VST ECS(Thailand)社を国内物流代理店に任命している。販売店にはSK OA Center社やG-Biz社などが含まれ、全国の顧客への迅速かつ的確なサービス提供体制を整備している。
また、自動車、製造、保険、エレクトロニクスなど6業種への集中も図っており、販売員や技術者への教育も進めている。今後も地方政府案件や中小企業市場の開拓を通じて、チャネル事業の年間20~30%成長を目標に掲げている。
なお製造に関して、同社は、生産拠点を日本、中国、ベトナムに構えているが、米国の相互貿易関税政策による影響を最小限に抑えるため、中国からベトナムへの生産拠点の移転を進める予定としている。
タイの大手免税店運営企業 King Power社が店舗閉鎖、人員削減(7月22日)
タイの大手免税店運営企業である King Power社は、事業合理化の一環として、バンコクとパタヤの都心部にある3つの支店を閉鎖し、従業員の自主退職プログラムを開始したと発表した。なお、これにより3つの支店(King Power Mahanakhon、King Power Srivaree、King Power
Pattaya)が閉鎖することになる。
閉鎖対象の支店は団体旅行客向けに設計されていたが、近年は個人旅行者の増加により来店客数や収益が減少した。一方で、空港内の免税店は依然として個人旅行者を対象に収益を確保しており、影響は限定的とされる。なお、閉鎖店舗の従業員は他の拠点への異動も可能で、自主退職者には法令と勤続年数に応じた補償金が支払われる予定である。
また、King Power社は、タイ空港公社(AoT)と提携し、5つの空港で免税店を運営しているが、観光客数の減少により契約条件の見直しも進められている。2025年、これまでにタイを訪れた外国人観光客は前年同期比で約5%減少、特に中国人観光客は約33%減少しており、これが同社の収益やAoT株の下落(年初来35.6%減)にも影響している。
同社は、今年初め、観光客数の減少を理由に、5空港との契約解除を求めていたが、最近になって支払期限の延長と分割払いが認められたことで、一部条件が緩和されている。
タイ工業連盟が米国関税の影響で自動車生産目標を下方修正(7月25日)
タイ工業連盟(FTI)は、米国の関税政策による影響を受け、2025年のタイ国内の自動車生産目標を150万台から145万台へと下方修正したと発表した。特に輸出向け生産が影響を受け、当初の100万台から5万台減の95万台に修正された。
この背景には、トランプ米大統領による政策があり、今年4月には外国製自動車に25%の関税を課し、5月にはエンジンやトランスミッションなどの主要部品にも同様の税率を適用した。これにより、タイの自動車輸出とその貿易相手国に大きな影響を与えている。
実際、今年6月の自動車輸出台数は88,085台で前年同月比1.1%の減少となった。また、1~6月までの累計輸出台数は、前年同期比11.5%減の45万9,357台となり大幅に落ち込んだ。一方でFTIは、国内販売向けの生産目標については従来通り50万台に据え置いたと発表した。
生産においては、今年6月のタイ国内自動車生産台数は13万223台と前年同月比11.9%増となった。特に電気自動車(EV)の生産が前年同月比314.5%増と大きく伸びたことが全体の生産を押し上げた。ただし、2025年上半期全体でみると、累計生産台数は72万4,715台と前年同期比で4.8%減少しており、依然として厳しい状況が続いている。
PTT Global Chemical社がバイオ精製所の拡張を計画(7月28日)
タイの国営石油メーカーPTT社の石油化学部門である PTT Global Chemical 社(以下、GC)は、持続可能な航空燃料(SAF)をはじめとする環境に優しい製品に対する需要の高まりに応えるため、バイオ精製所の拡張を検討していることを発表した。
GCは既に、タイ東部ラヨーン県マプタプットにあるバイオ精製所で年間600万リットルのSAFを商業生産しており、今後はこれを年間2,400万リットルにまで増産することを検討している。第1段階では、使用済み食用油を原油に5%混合して製造しており、将来的には政府が定める混合比率の義務化に応じて投資規模を最終決定する方針である。
総投資額1億6,000万バーツ相当のバイオ精製所は、既にバンコク航空にSAFを供給しており、同社は国内便でのSAF使用を試験的に実施している。
今後は、高付加価値製品を生産するためのバイオ精製所への投資の加速を図る方針であり、原料を使用済み食用油に限定せず、エタノールや廃水などの代替原料への切り替えも視野に入れている。特に廃水に含まれる有機物は、特定のバクテリアにより分解され、揮発性脂肪酸を生成できる。この脂肪酸を化学的に処理することで、最終的にジェット燃料へと変換可能であり、このような高付加価値製品へのシフトが今後の事業方針の柱になるとしている。