ベトナムのビジネスニュース:2025年7月後半

ベトナム建設省が建設業の成長目標達成に向け、インフラと社会住宅に注力(7月16日)
ベトナム建設省は、2025年の国家経済成長率8%以上の達成に向け、建設業成長率を9%以上に引き上げる方針を掲げている。2025年前半の建設業成長率は9.62%となり、2021~2025年の同時期で最高水準を記録し、GDP全体に0.63ポイント寄与した。
インフラ開発も加速しており、東部北南高速道路では最大6~9ヶ月の工期前倒しが進み、運用中の高速道路延長は2,268kmに拡大している。港湾、空港、工業団地、スマートシティへの国内外投資も活発化し、都市化率は2025年6月末時点で44.3%となった。
建設分野では、外国からの新規登録投資額の24.2%(約22.5億USD)が建設分野に集中しており、都市交通インフラの整備は順調に進んでいる。また、低・中所得層向けの公営住宅の開発が進んでおり、既に35,631戸が完成し、さらに23,561戸が着工され、年末までに10万戸の供給を目指している。
建設資材の生産も回復傾向にあり、2025年前半のセメント生産量は6ヶ月で4,600万トン超と前年同期比で微増となった。国有建設企業の業績も好調で、上半期売上は約3兆ドン(約18.7億円)、利益は計2,358億ドンと、目標を537億ドン上回る結果となった。VICEM(ベトナムセメント総公社)、HUD(都市住宅投資開発総公社)、HANCORP(ハノイ建設総公社)、Viglacera(建築資材最大手)など主要企業は黒字を確保した。
建設省は今後、デジタル化、技術革新、組織改革を推進し、都市鉄道や主要道路などの大型プロジェクトを年内に着工する計画である。都市化進展、物流インフラ整備、住宅開発、エネルギー効率改善など多方面での成長が見込まれ、国内外投資家にとって有望分野と位置づけられている。
ベトナム政府がコーヒー産業の高付加価値化を加速(7月18日)
ベトナム政府は、コーヒー産業の高付加価値化を国家戦略として推進している。2025年上半期の輸出額は54.5億米ドルとなり、特にスペシャルティコーヒー(高品質・高価格帯)や深加工製品(インスタント・焙煎)の比率が拡大している。この成長は、品質改善やブランド強化、持続可能な生産体制への転換によって支えられている。
農業環境省は、2030年までにコーヒーの栽培面積を現行の71万ヘクタールから61~64万ヘクタールに再編し、老木の植え替えと高品質品種への転換を推進する方針を示している。このうちスペシャルティコーヒーは現在の11,500ヘクタールから2030年までに19,000ヘクタールへ拡大し、年間1万1,000トンの生産を目指す。
また、気候変動への対策としては、耐干性品種の研究開発、小規模農家への点滴灌漑設備の導入、再生型農業(リジェネラティブ農業)の推進に注力している。これにより、2024~2025年作期で予想される最大20%の収量減を緩和する考えである。
さらにEUの森林破壊防止規則(EUDR)への対応も進めており、主要産地(ダクラク省クロンナン郡・クムガー郡、ラムドン省ディリン郡など)でデジタル化による栽培データ管理と原産地コード付与を実施し、100%のトレーサビリティを確保している。また、農家・協同組合・企業の三者連携による原料供給体制強化と、4C、UTZ、RFAなどの国際認証取得支援も進めている。
コーヒーの加工比率は現在の10%から25~30%に引き上げる計画で、輸出市場の多様化と価格競争力向上を図っている。こうした政策・技術・市場改革を一体的に推進することで、年間200億米ドル規模の産業への成長と国際競争力強化が期待されている。
Dragonberry社がベトナム産ライチの米国流通を拡大(7月21日)
米国サンフランシスコのベトナム貿易代表部は、米国大手輸入業者のDragonberry Produce社が、ベトナム・北部バクニン省産のライチを、米国最大の小売チェーンCostcoに初めて供給したと発表した。Costcoは米国とカナダで合計635店舗を展開しており、ここでの販売によりベトナム産ライチの販売チャネルが大きく広がることとなる。
Dragonberry社は3年連続でベトナム産ライチを米国に輸出しており、安定した販売実績を背景に販路を拡大してきた。同社が取り扱う「Golden Lychees」は、国際的な農業認証であるGlobalG.A.Pを取得している。鮮やかな赤桃色、爽やかな甘み、シャキッとした食感が特徴で、米国の厳格な植物検疫基準もクリアしている。
同社は農作物の輸出にとどまらず、生産地と連携し、栽培から保管、輸送、マーケティングまでを一体化したサプライチェーンの構築を目指している。協同組合や現地企業と連携し、生産工程の標準化や品質管理を進めている。今後は、ロンガン(竜眼)、ドラゴンフルーツ、パッションフルーツなど他の果物の輸出拡大も視野に入れている。
このような大手流通網への展開は、ベトナム農産物の付加価値向上と国際的なブランド力強化につながっており、米国の消費者からもベトナム産ライチの独特な風味が高く評価されている。今後もベトナム貿易代表部は、企業の市場開拓を支援し、米国向け農産物輸出の拡大を後押ししていく方針であるとしている。
Vinachemが赤字脱却とDX・GX戦略を加速(7月22日)
ベトナム化学総公社(Vinachem)は、2025年前半の経営成果と今後の成長戦略を発表した。2025年前半の工業生産総額は31兆8,590億ドン(前年比16%増、年間計画の53%)、売上高34兆4,190億ドン(前年比13%増、年間計画の60%)、税引後利益1兆8,210億ドン(前年比68%増、年間計画の68%)に達した。
特に注目すべきは、2020年末に5兆3,930億ドンであった累積赤字を、2025年第2四半期末までに完全に解消したことである。これは当初計画より6か月前倒しでの黒字転換であり、国有企業改革の象徴的成果となった。
Vinachemは、「科学技術イノベーション、デジタル化、グリーン化(双方向転換)」を中核とする2030年に向けた戦略を推進しており、2050年までの持続可能な化学産業の実現を目指している。同社が推進する商用電子取引プラットフォーム「Vinachemmart」は、ベトナム化学業界初のデジタル販売チャネルとして稼働を開始し、AI分析・自動化CSツールの導入により、ロジスティクス効率と市場アクセスを大幅に改善している。また、スマートファクトリーや自動制御ライン、デジタルエネルギー管理の導入により、生産性と環境パフォーマンスも向上している。
環境分野では、石膏リサイクルプロジェクトやCO₂排出削減ロードマップ策定など、ネットゼロ目標に向けた取り組みも進めている。
Vinachemは、後半の6か月間において、8%の成長目標を維持しつつ、社内消費・市場開拓・安全生産の確保に注力し、2026年以降の二桁成長に向けた布石を打っていく方針であるとしている。
ベトナム政府の投資促進が鉄鋼価格の回復を後押し(7月23日)
ベトナム鉄鋼協会(VSA)は、国内鉄鋼市場の回復見通しを発表した。同協会によると、2025年前半において、国内の鉄鋼生産・販売は安定を維持しており、地域・世界の景気不安にもかかわらず、内需の強さが業界を支えている。統計によれば、2025年1~5月の鉄鋼製品の生産量は1,300万トン(前年比9%増)、販売量は1,322万トン(前年比11%増)となっており、各国の貿易防衛措置で輸出が縮小する中、内需が主要な成長要因となっている。
ベトナム最大の民間鉄鋼メーカーであるHoa Phatグループは、年産能力を1,600万トンに拡大する計画を示しており、2025年末までに主に高品質熱間圧延鋼や機械加工用鋼を供給することで、国内鉄鋼市場の安定化に寄与するとしている。
鉄鋼価格は2022年以降、世界市場と同様に下落傾向にあり、2025年6月末時点でHoa PhatのCB240鋼材価格は5月末より1kgあたり250~310ドン下落している。国内鉄鋼価格は低水準で推移しており、他の建設資材価格の上昇と対照的である。
VSAによると、第3四半期は雨季の影響で建設活動の活発化は限定的だが、不動産市場の改善兆しや公共投資の加速により、第3四半期末以降は鉄鋼需要の回復が見込まれる。建設用鋼材価格は1トンあたり1,400万~1,500万ドンで推移すると予測されている。
政府は公共投資促進を継続しており、北南高速道路やロンタイン国際空港などの主要プロジェクトの建設を加速させることで、鉄鋼需要と価格を下支えすることが期待されている。
ベトナム農業環境省が農林水産における制度改革とデジタル化を加速(7月25日)
ベトナム農業環境省は、2025年上半期の業績を総括し、農林水産分野で顕著な成果を報告した。
上半期の農林水産物輸出額は338億4,000万米ドル(前年比15.5%増)、貿易黒字は98億3,000万米ドル(前年比16.3%増)となり、国全体の貿易黒字(76億3,000万米ドル)を上回った。農林水産分野の付加価値成長率は3.84%で、農業が3.51%、林業が7.42%、水産業が4.21%増加し、2021〜2025年期間中で2番目に高い水準となった。
同省は、制度改革や行政簡素化、政策対応を年初から積極的に推進しており、公共投資支出の進捗管理や法的手続きの効率化も徹底している。また、土地・植生・地理空間・衛星リモートセンシングなどを活用したデジタル農業・環境データの整備にも注力し、農業・環境分野のスマート化を進めている。
今後は、2025年後半の成長シナリオを再構築し、現実的かつ効果的な政策を実施するとともに、2026〜2030年に向けた中長期戦略の準備を進めていくとしている。
ハノイ市がデジタルプラットフォームでの農産物消費を促進(7月26日)
ハノイ市農業環境局は、農産物の品質管理と販路拡大を目的として、「農・林・水産物食品トレーサビリティシステム」を運用し、3,572の施設にアカウントを付与し、14,635件のQRコード付きトレーサビリティ情報を発行した。このシステムは「iHanoi」などのアプリと連携し、国家レベルのトレーサビリティシステムとの統合を視野に入れている。
同取組により、農業協同組合や生産者は信頼性のある商品情報を提示できるようになり、スーパーや小売店への販売が拡大している。例えば、チュンジャー農業協同組合では、VietGAPや有機栽培の野菜にトレーサビリティコードを導入したことで、販売価格が倍増し、大手流通チャネルへの出荷が可能となった。また、コク・オアイ区のドンタム協同組合では、「安全な豚肉」として1日あたり3~5頭を出荷し、月商は約15億ドンに達している。
さらに、同局は農産物のブランディング支援として、ラベル・包装デザインやSNS(Facebook、TikTok、Zalo)を活用したデジタルマーケティングを推進し、国内外の消費者への認知度向上を図っている。
一方で、トレーサビリティシステムの適用は一部の生産者に限られ、QRコードに含まれる情報も基本的な内容に留まっている。今後は、生産プロセスの標準化やGlobalGAP・オーガニック認証の普及、生産地域のデジタル化、ブランド構築の初期支援が求められる。
ベトナム道路総局がテクノロジー導入によって運輸サービスの構造改革を推進(7月29日)
ベトナム道路総局は、2030年までの運輸サービス戦略の評価報告において、テクノロジーの導入により国内の道路運輸構造が大きく変化したと発表した。2016年から現在までの道路旅客輸送の総量は1億9,040万人、輸送距離は1,087億人キロメートル(輸送人員×移動距離)に達し、年平均成長率は11.8%。貨物輸送は推定5,000万トン、年間成長率は13.36%となった。
とくにGrab、Be、Gojekなどの配車アプリ連動型契約車が台頭し、輸送業界に競争を促した。全国の輸送事業用車両は2013年の約12万台から、2024年末には約96万台に急増した。そのうち配車アプリ連動型契約車両が全体の約70.5%(約24.5万台)を占めるまでに至った。
また、全国63省市中60省でバスによる公共輸送サービスが提供されており、年間約10億人が利用している。ハノイとホーチミン市ではCNGバスや電動バス(VinBus)も導入され、公共交通のグリーン転換の一環として評価されている。
ただし、地方部では未だに公共輸送網が未整備な地域も多く、輸送企業の82%が中小規模で技術導入力が乏しい。また、管理制度の未整備やデータ活用不足、電子契約車両の制度的曖昧さなども課題とされる。
今後は、電気バス・クリーン燃料車の導入支援、充電・給燃インフラの整備、排ガス基準未達車両の淘汰などを通じて、持続可能な都市交通システムの構築が求められている。
ベトナム農業環境省が作物栽培の排出削減方針を発表(7月30日)
ベトナム農業環境省は、2035年までに作物栽培における温室効果ガスを少なくとも10%削減することを目指し、「2025~2035年作物栽培低排出プロジェクト」を発表した。
同プロジェクトでは、全国15カ所での低排出農業モデルの展開、カーボンクレジット創出を目指す5件のパイロットモデルの実施、主力5作物向けの技術パッケージ開発、作物・地域別排出データベースの構築と国家登録システムとの連携、3,000人以上の農民・技術者への研修、さらに啓発用広報資料の整備などが計画されている。
具体的な技術導入としては、間欠灌漑(AWD:水田の水位を管理して効率的に灌漑する方法)、肥料の適正管理、バイオ資材の使用などが挙げられ、これにより農業生産コストを従来比5~15%削減できる見込みである。
同省によると、これらの施策を全国的に展開することで、年間約800万~1,100万トンCO2換算の排出削減が可能とされ、ベトナムのNDC(国別貢献)目標達成への寄与が期待されている。
農業環境省の副大臣は、農業は温室効果ガス排出が大きい一方で削減余地も大きく、低排出・持続可能な農業モデルへの移行は喫緊の課題であると強調した。また、環境認証やカーボンフットプリント表示のある農産品は、EU、日本、北米などの高付加価値市場で10~25%高く取引されるため、農家の収益改善にもつながると指摘した。