ベトナムのビジネスニュース:2025年8月前半

ベトナム政府が2025年の農林水産品輸出目標と実績を公表(8月4日)
ベトナム政府は、2025年の農林水産物の輸出目標を650~700億ドルに設定し、その達成に向けて欧州、アフリカ、ハラール市場の開拓や農産物競争力の強化を進めていると発表した。
今年1〜7月の7か月累計の輸出額は396億8,000万ドルで前年同期比で15%増となった。主要3分野はいずれも黒字を維持しており、林産物は83.9億ドルで前年比4.9%増、水産物が41.8億ドルで7.5%増、農産物が42.8億ドルで33.4%増となった。
特にコーヒー輸出は110万トン、60億ドルと過去最高を更新し、数量は7.6%増、金額は65.1%増と急伸した。すでに2024年通年の実績54.8億ドルを上回った。主要輸出先はドイツ(シェア15.3%、2.1倍増)、イタリア(7.6%、47.4%増)、スペイン(7.5%、67%増)である。
また、野菜・果実は39.2億ドルで前年同期比0.9%増と回復傾向を示し、中国向けが24.3%減少した一方、米国向けは65.5%増と主要市場の中で最も高い伸びを記録した。
さらに、商工省によれば、ゴムは7か月累計が89.4万トン、16.1億ドルで、数量は2.1%減少したものの金額は13.9%増加し、単価は1,803ドル/トンで16.3%上昇した。
ホアファットグループが鉄鋼生産電力の約90%を自給(8月5日)
ホアファットグループ(ベトナム最大手の鉄鋼メーカー)は、2025年上期における自家発電量が18億kWhとなり、鉄鋼生産に必要な電力の約90%を賄ったと発表した。
ズンクアット製鉄所単独では14.5億kWhを発電し、累計は2025年2月に100億kWhを突破した。進行中のズンクアット2プロジェクトにより総発電能力を600MWに拡大し、引き続き需要の90%をカバーする計画である。
発電はコークス炉や高炉から発生する余熱・副生ガスを利用する循環型モデルであり、CO2排出削減を実現し、コスト低減と温室効果ガス対策を両立する。
ハイズオン製鉄所でも上期に3億5,800万kWhを発電し、直近では発電設備を更新して安定供給を強化した。こうした余熱発電の取り組みは、国家電力系統の負荷軽減に寄与すると同時に、ベトナム政府のカーボンニュートラル戦略にも沿うものとされる。
ベトナム政府が鉱工業生産指数と雇用増加を発表(8月6日)
財務省は、2025年7月の鉱工業生産指数(IIP)が前月比0.5%増、前年同月比8.5%増となったことを発表した。ベトナム統計総局最新データによると、2025年1~7月累計では前年同期比8.6%増となった。
7月単月では、水供給・廃棄物処理業が前年比9.1%増、製造・加工業が9.3%増、電力生産・配給業が7.0%増、鉱業が2.6%増となった。1~7月累計では、製造・加工業が10.3%増(前年同期比9.6%増)で全体伸び率に8.5ポイント寄与、電力生産・配給業が4.6%増(前年比12.0%増)で0.4ポイント寄与、水供給・廃棄物処理業が10.4%増(前年比7.1%増)で0.1ポイント寄与した。一方、鉱業は2.7%減(前年比6.6%減)となり、全体を0.4ポイント押し下げた。
主要業種では、自動車製造業が29.9%増、ゴム・プラスチック製造業が16.9%増、皮革製造業が15.4%増、非金属鉱物製造業が14.8%増と高い伸びを示した。主要製品でも、自動車が64.4%増、テレビが21.1%増、NPK複合肥料が19.7%増、一般衣料が14.9%増、セメントが14.8%増となった。一方、天然ガスは12.9%減、化繊織物は5.2%減、原油採掘は3.1%減となった。
また、2025年7月1日時点の工業企業の従業員数は前月比1.0%増、前年同月比3.9%増となり、34省・市すべてで生産が拡大した。
タイグエン省が茶産業の10億ドル産業化に向けた支援策を承認(8月7日)
ベトナム最大の茶産地であるタイグエン省は、茶産業を「10億ドル産業」へ育成するため、2025~2030年に総額5,230億VNDを投じる重点支援策を打ち出した。省人民評議会は決議第08/2025/NQ-HĐNDを承認し、苗木や有機肥料の補助、VietGAP・有機認証の全額支援、加工機械購入や灌漑設備の補助、包装・トレーサビリティ導入、さらに観光インフラ整備への資金支援を制度化した。
タイグエン省は約2万3,500haの茶園を有し、年間生産量は生葉約30万トン(乾燥茶5万5,000トン)で、2025年には1兆5,000億VND規模に達する見込みである。また同省では、2030年までに産業規模を2兆5,000億VND(=「10億ドル産業」)に引き上げることを目標としている。
同省のブランド茶(例:シャン雪茶、タン・クオン茶)は米国、中国、日本、韓国、ロシア、台湾で商標保護を取得している。OCOP認証製品は207点で、そのうち10製品が5つ星を獲得している。輸出は年間5,000トンを超え、中東、北米、東欧、アジアが主要市場、輸出単価は1,500~2,000USD/トンとなっている。
今後は、新規品種導入(LDP1、TRI 777など)、有機栽培面積の拡大、高付加価値加工(抹茶、紅茶、茶エキス、精油など)への投資、ブロックチェーンによる生産履歴管理やEコマース販路拡大、観光・体験型商品の開発を推進する。タイグエン茶は生態条件とブランド力、政策支援を組み合わせることで、国際市場での存在感を高め、持続可能な「10億ドル産業」へ育成することを目指している。
ペトロベトナムが技術革新や海外展開を軸に収益基盤の多角化と国際競争力強化を推進(8月7日)
ペトロベトナム(ベトナム国家石油グループ)は、2025年7月の事業実績を発表し、国内生産の拡大と国際市場でのプレゼンス向上を強調した。
同社は原油採掘、LNG輸入、発電、石油製品(NSRP除く)、尿素・NPK肥料、ポリプロピレンなどの主要分野で前年同期比1~45%の増加を記録した。1~7月累計では、発電が9.8%増、石油製品が23.4%増、NPKが53.8%増、ポリプロピレンが34.6%増となり、多くの指標で経営計画を1~10%上回った。
また、1~7月の売上高は推定60兆2,165億VND、国家予算への納付額は8兆3,013億VNDとなった。新製品の収益は5兆204億VND、国際事業の収益は6兆7,365億VNDを計上し、グローバル市場への展開拡大と技術革新の成果が表れた。投資支出も前年同期比49%増の2兆4,766億VNDに拡大した。
さらに、サービス分野でも、造船修理の契約が22%増、再生可能エネルギーや洋上風力関連建設の売上高は88%増と好調である。同社は、国内でのロンフー1火力発電所や白鯨油田開発などの重点プロジェクトを推進しつつ、輸出拡大と国際事業の多角化を成長戦略の中核に据え、国内依存からの脱却と収益基盤の強化を図っている。
VINAFRUITがパイナップル輸出拡大と2030年までの栽培計画を発表(8月8日)
ベトナム果実・野菜協会(VINAFRUIT)は、ベトナム産パイナップルの2025年1~5月の輸出に関して、EU向けが1,656万USDで全体の48%を占め、次いで米国向けが720万USDで20.9%を占めたことを発表した。
農業・環境省の統計によれば、全国のパイナップル栽培面積は約5万2,000haで、年間生産量は86万トンを超える。2030年までに栽培面積を5万5,000~6万ha、生産量を80万~95万トンに拡大する計画である。主要産地はニンビン、タインホア、クアンナム、ティエンザン、キエンザン各省である。
世界市場は2024年に287億9,000万USD規模となり、2029年には391億3,000万USDに拡大すると予測されていることから、ベトナム産パイナップルは輸出拡大の余地が大きいと見込まれている。特に加工品分野では、DOVECO社(ベトナム大手の果実加工企業)のパイナップル濃縮果汁が50か国以上に輸出されており、日本市場では1トン当たり4,000USDと欧米市場より1,000USD以上高値で取引されている。
ただし、課題も多く残る。品種が限られ、国際市場で主流のMD2種は国内栽培面積の5%未満にとどまっている。また、コスタリカからの苗木輸入コストが高く、国内の苗増殖技術も十分ではないため拡大が進んでいない。専門家は、集中産地の計画的整備、VietGAP・GlobalGAP認証、加工・保管技術の強化が急務だと指摘する。
農業農村開発省は2030年までに栽培面積6万haを目標とする計画を示し、専門家は市場需要の大きい中国やEUでの輸出拡大の可能性を強調している。
VinGroupがインフラとグリーンエネルギー事業へ新規参入(8月11日)
VinGroup(ベトナム最大の民間複合企業)が、新たな成長戦略として「インフラ」と「グリーンエネルギー」の2事業分野へ本格参入すると発表した。これにより、既存の「テクノロジー・工業」「商業サービス」「社会慈善」と合わせ、同社の事業柱は5分野体制となる。
インフラ分野では、子会社VinSpeedが高速鉄道建設を主導している。2025年に着工予定のハノイ~クアンニン路線(120.4km、所要時間を4時間から20分に短縮)とホーチミン市~カンザー路線(設計速度350km/h、所要時間10分強)が先行プロジェクトで、南北高速鉄道プロジェクトへの参入も登録済みである。さらに、ハイフォン市ナムドソンやハティン省ブンアンで港湾・物流センターを開発し、国際貿易と輸出拡大を後押しする。
グリーンエネルギー分野では、新会社VinEnergoが太陽光・風力発電の大規模プロジェクトを推進し、VinFast製の蓄電池(BESS)を活用して安定供給を確保する計画である。ベトナム国内に加え、インド、インドネシア、フィリピンでの事業展開を視野に入れ、80GW規模の発電能力確保を目指し、同社の高速鉄道や港湾、工業団地、住宅開発へ直接電力を供給する。
同社は、インフラとグリーンエネルギーを新たに加えることで、国家プロジェクトを具体化し、ベトナムの競争力と国際的地位の向上に寄与することを目指している。さらに、「人々により良い生活を」という企業理念の下、持続可能な成長と次世代への責任を掲げ、国内外での事業拡大を加速させるとしている。
FPTがABOVおよび嘉泉大学と戦略的協力協定を締結(8月12日)
FPTグループ(ベトナム大手IT企業)が、韓国の半導体大手であるABOV Semiconductorおよび嘉泉大学と戦略的協力協定を締結したと発表した。ABOVとの協力では、次世代半導体チップの研究・設計・開発を共同で推進し、特に韓国市場におけるFPT設計チップの利用拡大を図る。さらに、FPTは現在、カスタムマイクロチップ設計サービスに強みを持っており、将来的には先端パッケージングや半導体テストサービスへの事業拡大も計画している。
一方、FPT大学と嘉泉大学の協定では、学生・大学院生の交換、共同教育プログラム、教員や研究者の交流、研究資料や学術出版物の共有などを通じて、半導体やAI分野の高度人材育成を強化する。嘉泉大学はSamsungやLG、SK Hynixなど韓国大手企業との研究実績を有し、今回の提携はベトナム・韓国間の学術連携を一段と深めるものとなる。
韓国はFPTにとってアジア太平洋地域の重点市場であり、2016年の進出以来、現地とベトナム拠点合わせて約2,000人の人材を擁し、LG ElectronicsやShinhan Bankなど主要顧客に国際水準のソリューションを提供している。今回の提携により、FPTは半導体分野でのプレゼンス拡大と人材戦略の強化を進めるとしている。
VINAFRUITがバナナ輸出拡大戦略と成長目標を発表(8月14日)
ベトナム果実・野菜協会(VINAFRUIT)は、バナナが、ドリアン、ドラゴンフルーツに次ぐ第3位の輸出果実となり、2025年上期の輸出額は2億3,300万USDで前年同期比55%近く増加したことを発表した。特に中国市場ではフィリピン産を上回り、輸入バナナ市場の約50%をベトナム産が占めるに至った。
VINAFRUITは、バナナの競争力向上の要因として、フィリピン産と比べた際の品質と価格の優位性、輸送ロジスティクスの利点、そしてパナマ病への耐性を持つ品種を挙げている。日本市場でもCPTPP(環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)に基づき2028年までに関税が5.4%からゼロに下がる見通しであり、輸出拡大が期待される。
ただし、同協会は「持続可能な輸出のためには品質管理が最重要であり、中国の収穫期(7~10月)との競合を避ける生産調整が必要」と指摘した。業界関係者も残留農薬管理や国際基準(VietGAP・GlobalGAP)への対応を強調している。
2024年のバナナ輸出額は3億7,800万USDであり、業界関係者は将来的に40億USD規模への成長を目標に掲げている。現在は主に生鮮果実として輸出されているが、乾燥、加工食品、副産物利用の余地も大きく、付加価値の高い分野開拓が今後の課題とされている。
ベトナム政府がゴックリン人参を主力とする国際市場戦略を発表(8月14日)
ベトナム政府は、「ゴックリン人参(Ngoc Linh Ginseng)を主力とする医薬品産業センター形成プロジェクト」に関する決定第463/QĐ-TTgを承認し、ダナン市で同バリューチェーンの本格的な開発が開始されたことを発表した。
ダナンは森林面積が70%以上を占め、標高1,200~2,000mの涼しい気候を有し、832種以上の薬用植物が生育、その中でもゴックリン人参は経済価値の最も高い品目とされる。
現在、18社と41グループが森林環境を借り受け、合計825haを管理し、約1,294haでゴックリン人参の栽培が進められている。また、地理的表示「Ngoc Linh」は3社に付与され、2019年以降27万本以上の人参が産地証明を取得した。
ダナン市は今後、南チュライ経済区やナムタンビン工業団地(649ha)を拠点に、医薬品・機能性食品の深加工(高付加価値加工)を担う「エコ産業団地モデル」を展開する。2025年5月には、ダナン市当局が9社と覚書を締結し、総投資額5,000億VND超を確保した。現地企業はサプリメント、茶、飲料、酒、蜂蜜、化粧品など高付加価値商品の生産を進め、国内市場中心から国際市場開拓への転換を目指す。
さらに2026年には国際イベント「ゴックリン人参フェスティバル – 国家製品から世界ブランドへ」を開催予定で、国内外の企業、投資家、研究者を招き、輸出契約や技術移転を促進する計画である。ベトナム政府はゴックリン人参を中核に、同国を代表する医薬品産業拠点を確立し、国際市場におけるブランド価値の向上を図るとしている。
ベトナムのコーヒー輸出が過去最高額に到達見込み(8月14日)
ベトナム農業・環境省は、2024年10月~2025年9月のコーヒー輸出額が過去最高の約80億USDに達する見込みであると発表した。
同省によれば、コーヒーの2025年1~7月の輸出量は約110万トン、輸出額は約60億USDとなり、2024年通年の輸出総額を上回った。最大の輸出先は欧州(360億USD、67万トン)で、次いでアジア(シェア20.7%)、米国(4.7%)である。
ベトナムコーヒー・カカオ協会(Vicofa)は、主要輸入国による貿易障壁や関税強化が課題である一方、企業の柔軟な戦略とFTA(EVFTA, UKVFTA, CPTPP)活用により輸出が拡大したと指摘した。さらに、ブオンマトート省コーヒー協会は、品質向上やスペシャルティコーヒー、持続可能性認証の取得が付加価値を高め、国際的地位を向上させたと強調している。
また、ダクラク省の国営輸出企業であるSimexco Daklakによると、過去10年間のロブスタ品質改善と深加工(高付加価値加工)・インスタントコーヒーの開発により、世界の大手焙煎会社から高評価を得て、輸出額拡大に貢献した。
一方で、中国市場への輸出は限定的で、ブラジル企業183社が新たに輸出認可を得るなど競争が激化している。中国市場への展開には、品質管理、包装デザイン、ブランド構築の徹底が重要とも指摘された。
農業・環境省は、年末までに高級スペシャルティコーヒー、公付加価値加工品、ロブスタ、インスタントコーヒーなどの輸出を促進し、輸出先の多角化と付加価値向上を目指す方針である。