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ベトナムのビジネスニュース:2025年9月前半


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Kim Long Motorがフエ省にメガファクトリーを建設(9月1日)

 自動車メーカーのKim Long Motorは、ベトナム・フエ省で自動車生産の大型プロジェクトを展開していることを発表した。今回の取り組みは、Yuchai(中国の大手自動車メーカー)との契約に基づき、ベトナム企業として初めて先端的な自動車設計・製造技術の直接移転を受けた事例である。
 既にKim Long Motor製のバスは国内各地で稼働しており、韓国やタイ、中東市場への輸出も進んでいる。フエ省に建設されたメガファクトリーは約2,000ヘクタールに及び、第一期で3,000人規模の雇用を創出する。EVやCNG、ハイブリッド、ディーゼルなど多様な動力源に対応したバスを生産し、EURO5・6規格に適合する高品質を実現している。さらに価格は競合品の60~70%に抑えられており、グローバル市場でも高い競争力を持つ。
 今後はEVや国際ブランドとの共同モデル(ダブルブランド車種)の展開が計画され、品質とコスト競争力の両立を図る。同社の成功の背景には創業者が掲げてきた「ベトナム独自の自動車産業を築く」という長年の志と、Integrity(誠実性)とCompliance(法令遵守)を重視した経営方針がある。
 将来的には70~80%の部品を国内調達する高い内製化率を実現し、産業クラスターの形成を通じて地域経済に大きく貢献する方針である。フエ省政府の支援が加われば、数万人規模の雇用と数兆ドン規模の税収創出が見込まれ、Kim Long Motorは「フエ省=遺産都市」に加え「自動車産業都市」としてのブランド確立に寄与すると期待されている。

 

 

ベトナムの3港が世界のコンテナ港湾100選にランクイン(9月3日)

 ベトナムの港湾当局は、TPHCM港(ホーチミン)、ハイフォン港、カイメップ港の3港が英国のLloyd's List(英国の海運専門誌)による2025年版「世界のコンテナ港湾100選」に選出されたと発表した。
 2024年の取扱い量は、TPHCM港が9.1百万TEU(前年比23.8%増)で世界22位、ハイフォン港が7.1百万TEU(同12.8%増)で29位、カイメップ港が7百万TEU超(同29.2%増)で30位となった。いずれも前年から順位を上げている。
 Lloyd's Listは、米中貿易摩擦を背景にサプライチェーンの多様化が進み、ベトナムを含む東南アジア港湾の取扱量が急増したと分析している。2024年の世界上位100港合計の取扱量は7億4,360万TEU(前年比8.1%増)であり、アジア地域の港湾が多くを占めており、特に中国港湾が世界シェアの40%以上を占めた。中国に次ぐ第二位はシンガポール港であり、4,110万TEU超で世界第2位を維持した。
 ベトナムの3港はいずれも国内最大級で特別港に指定され、ハイフォン港とカイメップ港は国際ゲートウェイ兼トランシップ港として大型コンテナ船の寄港に対応し、物流コスト削減や競争力強化に寄与している。また、2024年のDynaLiners Millionaires(世界コンテナ港・船社統計レポート、業界動向を網羅した年次ランキング)でも世界トップ50にランクインし、ベトナムを世界第6位のコンテナ取扱国となった。

2025年の輸出入額が初めて8,000億ドルを突破(9月6日)

 ベトナム工商省は、2025年の輸出入額が初めて8,000億ドルに達し、過去最高を記録する見通しであると発表した。
 8月の鉱工業生産指数は前年同月比8.9%増、累計8か月で8.5%増と好調であり、製造加工業は10%伸張した。国内商業も拡大し、小売・サービス収入は前年同期比9.7%増、観光収入は23%超の伸びで年初計画を上回った。8月の輸出入額は630億ドルで前月比0.9%増、輸出は金融引締めの影響を受けつつも前年同月比11.2%増を記録した。対米輸出は前月比5%減で一時減少したが、8か月累計では17.3%増となった。累計輸出入額は約6,000億ドルに達し、通年で初の8,000億ドル突破が見込まれる。また、貿易黒字は140億ドル近くに達する見込みである。
 工商相は、成果の背景に企業努力と政府全体の取り組みを挙げる一方、米国の政策、インフレ、サプライチェーン混乱など世界市場の不確実性への警戒を呼び掛けた。さらに2025年の成長率8.3%達成に向け、国会・政府決議の実行加速、公共投資推進、エネルギー・鉱産資源プロジェクトの前倒し、法制度の見直しを提言した。加えて米国関連政策への包括的対応策を盛り込んだ政府決議も準備中と報告した。
 また、工商相は、国内消費刺激と取引拡大を目的に、9月末に産業・食品フェア、年末に旧正月向け消費財フェアを開催する計画を発表した。併せて、地方自治体に対し投資誘致に向けた計画調整や土地利用の迅速化し、特にエネルギー分野での投資承認を加速させるよう要請した。

 

 

ベトナム産ティラピアの生産が拡大、新系統の研究も加速(9月9日)

 ベトナム水産・漁業監察局は、国内のティラピア生産量が年間約30万トン規模を維持し、2025年上半期だけで22万トンに達するなど成長が続いていると発表した。熱帯気候と豊富な水資源を背景に、湖でのいけす養殖、池養殖、淡水・汽水域での養殖、さらに沿岸部への拡張研究など多様な養殖形態が展開されている。
 世界最大の生産国は中国で、インドネシア、エジプト、ブラジルが続き、東南アジアではタイやフィリピンも重点的に開発を強化している。国際需要は米国、欧州、南米で高まり、ベトナムも米国市場に加え2025年にはブラジル向け初出荷を実現した。
 ティラピアは国家水産戦略と国家養殖プログラム2021–2030の優先品目として位置付けられ、環境モニタリング体制の整備により輸出品質の確保も進んでいる。研究面では1990年代から国際協力によりGIFT系統(遺伝的改良ティラピア系統)や全雄系統を導入し、成長速度とフィレ率を高めてきた。現在も水産研究所が耐塩性を備えた新系統の開発を進めている。
 一方で、課題となる国際競争の激化に対応するには、コスト低減が不可欠であり、特に飼料(総コストの60〜70%を占める)の改善が鍵とされる。農業・環境省は大豆やトウモロコシなど植物性タンパク質利用の研究を推進し、FCR(飼料要求率)改善を図っている。企業も集約的大規模養殖やデジタル管理導入に移行している。
 こうした取り組みにより、ティラピアは小規模養殖の枠を超えて、産業的品目となった。今後は、エビやバサと並ぶ主要輸出種となる可能性が高く、競争力強化、付加価値創出、食品安全確保、国際ブランド構築が今後の重点課題とされている。

VAMOBAが2035年までに自動車・二輪車の100%電動化を目標にしたと発表(9月9日)

 ベトナム自動車・二輪車・自転車協会(VAMOBA)は、2035年までに協会加盟企業の自動車・二輪車製品を100%電動化する目標を発表した。現在、VAMOBAは230社以上が加盟し、うち30社が二輪車製造、200社以上が部品関連企業で、年間で二輪車約40万台と自転車約100万台を生産している。なお、その93%が国内市場で消費され、7%が輸出されている。
 協会は新たな段階で、デジタル化(AI、ビッグデータ、IoT、EC活用)、持続可能な経済とグリーン成長(EV・ハイブリッド推進)、国際競争力向上(「Made in Vietnam」のグローバルPR)を5本柱の中心課題とした。特にEV分野と充電インフラの整備を重視し、2025年までに主要都市に500基以上、2027年には2,000基以上の充電ステーション設置を目指す。
 さらに、2027年までに加盟全企業が少なくとも1車種のEVを販売、2030年にはEV比率を40%に引き上げ、2020年比でCO₂排出量を50%削減、2035年には全製品を環境対応製品とする方針を示した。排ガス試験センター(ベトナム登録局)は、今後について、グリーントランジションとゼロエミッション目標(2050年カーボンニュートラル)に沿って、VAMOBAが排出基準や環境規制に適合する車両開発を支援する必要があると述べた。また、関係機関と連携し、二輪車・電動車・ハイブリッド車・クリーンエネルギー車に関する規格・検査制度構築を推進することが求められている。

 

 

ベトナム林業局が木材トレーサビリティツール『Vn-WoodID』を発表(9月12日)

 ベトナム林業・森林監視局は、ホーチミン市で開催された「合法木材原料確保と持続可能な林業発展フォーラム」において、木材トレーサビリティツール「Vn-WoodID」を正式に発表した。本ツールは「VPA/FLEGT協定実施支援プロジェクト」の成果であり、ドイツ国際協力公社(GIZ)、森林工業研究院、AI技術開発会社(AITC)と協力して開発された。
 Vn-WoodIDはAI搭載のモバイルアプリと木材サンプルライブラリから構成されるエコシステムで、木材の種類を即時かつ高精度に識別でき、ベトナムの木材サプライチェーンにおける合法性・透明性確保を支援する。データベースはアフリカ・アジア・南米の高リスク地域から収集した約3,000サンプル・260種を基盤とし、輸入木材、希少種(附属書IA・IIA)、新規流通種が含まれる。
 木材は巨視的・顕微的比較(肉眼で見た特徴や顕微鏡で見た細かい構造を比較する方法)とDART-TOFMSによる質量分析(先端機器による化学分析)を組み合わせて種類が特定され、国際データベース(IAWA、US-WISCなど)と照合されたもののみが収録される。各樹種には300枚以上の断面画像が用意され、利用者は実物とデジタルデータを直接比較できる。加えて、学名・商業名・分布域・比重・材質区分・形態特性・保存状況(CITES分類)など詳細情報も統合され、リスク評価や合法性判断に役立つ。
 同局によれば、Vn-WoodIDは特に税関や検査当局が違法伐採地域などの高リスク地域からの木材輸入を監視する際に有用であり、教育・研究用途としても活用可能である。アプリはすでに8,000回以上ダウンロードされ、371名の研究者・職員が試験利用に参加している。今後はデータベースの拡充と産業界・学術機関などの多方面の参画が必要とされている。

作物保護局とIRRIが高品質・低排出米パイロットモデルの成果を発表(9月14日)

 ベトナム作物保護局(農業環境省)と国際稲研究所(IRRI)は、2025年夏秋作における高品質・低排出米のパイロットモデルの成果を発表した。これは「2030年までにメコンデルタ地域で100万ヘクタールの高品質・低排出稲作を実現する国家プロジェクト」の一環であり、安定した収量と利益向上が確認された。
 アンザン省のヒエップスアンフー協同組合では収量6.48トン/ha(9%増)、純利益810万ドン/ha増加、カマウ省のホンファット協同組合では収量6.73トン/ha(4.6%増)、純利益460万ドン/ha増加となり、同様にドンタップ省のミータインバック協同組合も成功を収めた。150haの試験により、多様な生態条件下での実行可能性が確認された。
 農業環境省が策定した「高品質・低排出稲作マニュアル」に基づき、一貫した技術を適用し、機械化条播と施肥技術により、従来140〜200kg/haだった種子量を70kg/haに削減、種子コストを50〜65%節約した。地域別施肥管理により窒素肥料を6〜17kg/ha削減し、統合的病害虫管理(IPM)の導入で農薬散布回数も大幅に減少した。IRRIは、この取り組みにより温室効果ガス削減と収量維持が両立できることを示し、ベトナムがグリーン農業を先導していることを評価した。
 副産物管理においても進展があり、農民は稲わらを焼却せず、キノコ栽培や有機肥料生産に活用する循環型農業を形成した。排出量測定・報告・検証(MRV)活動も実施され、Kobo ToolboxやFarMoReなどのデジタルツールでデータを収集し、温室効果ガス削減効果が可視化された。
 2024年からの継続的な成果により、プロジェクトは全国展開への基盤を確立している。今後は世界銀行、CGIAR、USDAなど国際機関からの資金・技術支援を受け、モデルの大規模展開が期待されている。

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