ベトナムのビジネスニュース:2025年9月後半

PV GASがLNG戦略を強化し、エネルギー転換を加速(9月16日)
PV GAS(ベトナムガス総公社)は、LNG戦略を強化し、エネルギー転換を推進する方針を発表した。
同社はLNG戦略の柱として「供給源の多様化」を掲げ、リスク分散・コスト最適化・長期的なエネルギー安全保障を目指している。そのため、カタールのQatarEnergy、米国のExxonMobilやCheniere、中国のPetroChina、マレーシアのPetronas、欧州のShellやTotalEnergiesといった、大手との連携を拡大している。
この商業戦略に加えて、技術投資も積極化している。ブンタウにある同社のLNGターミナルではAIを活用した需要予測・供給最適化システムを導入した。統合データセンターを通じて輸入から貯蔵・流通までを一元管理し、デジタルトランスフォーメーション時代に対応した透明かつ効率的な体制を構築した。
また、国際協力の強化も進めている。2025年には米国総領事Susan Burns氏との会談を通じ、ビントゥアン省ソンミーLNGプロジェクトにおけるハイテク分野での協力を模索した。また、Petronas(マレーシア)や住友商事(日本)との協議により、ガス火力発電プロジェクトへの展開も視野に入れている。これらの取り組みにより、ベトナムのクリーンエネルギーロードマップを具体化するとしている。
ベトナムの果物・野菜輸出が8月に過去最高を記録(9月17日)
ベトナムの果物・野菜輸出が8月に過去最高を記録した。ベトナム税関総局によると、8月の輸出額は9億5,100万米ドルと、前月比24.4%増、前年同月比13%増の伸びを示した。特にドリアンが好調で、中国向け輸出が急増し、全体の数字を押し上げた。
中国は6億7,830万米ドルと依然最大の輸出先で、前月比41%増、前年同月比15%増と急伸しており、今年1〜8月累計では全体の58%を占めている。この背景には、残留カドミウムの警告解除による取引安定と豊富な生産量があり、ドリアン単体の輸出額は8月末までに17億米ドルに達した。その他にココナッツやパッションフルーツ、加工マンゴーなども好調で、輸出品目の多様化が進んでいる。
6月以降、果物・野菜輸出額は毎月8億米ドル超の水準を維持しており、1〜8月の累計輸出額は48億2,000万米ドルと前年同期比2%増でプラスに転じた。
また、中国以外の市場でも拡大が進んでいる。米国向けは59.8%増、日本は20.4%増、台湾は12.6%増、オランダは38.5%増と、主要市場でいずれも二桁成長を記録した。特に加工品の輸出が安定的に増加しており、付加価値向上と市場リスクの分散につながっている。
中国税関の統計によれば、2025年1〜7月の同国の果物・野菜輸入額は156億米ドルで前年比2%増となった。このうちベトナムは23億米ドルを供給し、前年比5.3%増の伸びとなった。中国市場における同国のシェアは14.9%に拡大し、中国にとってタイ、チリに次ぐ第3位の供給国として存在感を強めている。
フエ市人民委員会がFUTA GroupとKim Long Motorと戦略的協力を締結(9月21日)
フエ市人民委員会は、FUTA Group(ベトナム大手交通・不動産投資企業)およびKim Long Motor(自動車製造企業)と戦略的協力覚書(MOU)を締結したことを発表した。
この締結により三者は、フエ市とチャンメイ・ランコ経済区の潜在力を活用し、都市開発や産業・交通インフラ・港湾・公共交通・持続可能分野での事業推進を目指す。長期目標は、チャンメイ・ランコを自動車・部品・補助産業の国家拠点とし、「Made in Vietnam」の高級品輸出を促進することである。
覚書は3つの柱を設定した。第一に、不動産開発としてチャンメイ行政・金融センターやランコ都市複合商業プロジェクトを推進し、低所得者向け住宅開発を通じて社会保障を強化する。第二に、都市鉄道のモノレール整備や電動バス導入による公共交通の拡充で、観光や教育分野へのアクセス改善を目指す。第三に、自動車製造・補助産業、グリーンスチール産業、LNG発電所、チャンメイ深水港活用などの工業団地開発を進め、地域の経済力を底上げする。
フエ市は法的・行政的条件を整備し、規制に則した円滑な事業展開を保証すると表明した。今回の協力は、資産価値の保全とグリーン産業の成長を両立させる新しい都市開発モデルの構築につながると期待されている。
政府が水運・鉄道物流を推進しグリーン供給網を構築(9月23日)
ベトナム政府は、内陸水運と鉄道輸送の発展を通じて物流の脱炭素化と持続可能性を強化する方針を示した。
ベトナムでは、首相指令により水運物流の効率化を促進する方針が明確化され、交通運輸省傘下の海事・水路局が主導し、法制度改正や社会資本導入によるインフラ整備、船体・人材投資、港湾・航路の優先投資リスト策定を進めている。2026~2035年のインフラ・サービス発展総合計画も策定予定で、効率的で環境負荷の低い物流体制の構築が狙いである。
国際的にも、水運と鉄道は脱炭素に効果的な輸送手段とされており、鉄道輸送はトラック輸送と比較してCO2排出量を75〜80%削減でき、水運も改良船舶導入で高い省エネ効果が確認されている。EUのCBAM(炭素国境調整メカニズムの影響で、企業は輸送ごとの炭素排出報告が求められ、鉄道や水運へのシフトが加速している。
鉄道はアジア・欧州間の貿易回廊の「背骨」として位置づけられる一方、国際鉄道輸送には軌間や技術標準の違い、通関手続きのデジタル化が課題となる。ベトナムの鉄道は速度・積載能力に制約があり、官民連携によるインフラ整備・車両更新や港湾・工業団地直結型ロジスティクス拠点建設が求められる。
一方、国内水運は河川網が密集しているためコスト・輸送量の面で優位性が高い。バージ船1隻で数十台のトラックを代替できるため、道路負担や事故リスクを軽減することができる。今後は航路浚渫、船体の近代化、港湾・倉庫のデジタル接続、バイオ燃料船やハイブリッド船導入により、環境に配慮した効率的な輸送体制を整備し、競争力を強化するとしている。
南部基本化学(HCCB)がニョンチャック化学工場建設を着工(9月25日)
国営ベトナム化学グループ(Vinachem)傘下の南部基本化学社(HCCB)は、ドンナイ省ニョンチャック第6工業団地で「ニョンチャック化学工場」の起工式を行った。これは政府とドンナイ省の方針に基づくビエンホア1工業団地からの移転計画に基づくもので、Vinachem社の支援を受けて実施される。
新工場は、年産10万トンの苛性ソーダ(100%換算)と年産10万トンの硫酸の生産能力を目指すほか、電子・半導体・エネルギー産業向けのクロル系製品や特殊化学品の開発を進める。HCCBは、このプロジェクトが組織再構築と生産性・競争力強化の好機であり、国内市場でのブランド確立と地域進出の足掛かりになるとしている。
建設省がハイフォン-ハロン-モンカイ鉄道の2030年以降の投資計画を発表(9月26日)
建設省は、ハイフォン-ハロン-モンカイ鉄道の設備投資を2030年以降に実施する計画を発表した。
同鉄道はベトナム鉄道網計画(2021-2030年、2050年ビジョン)に組み込まれており、全長約187kmでハイフォンのナムディンヴ港駅からクアンニン省モンカイまでを結ぶ。軌間は1,435mmで電化方式を採用し、国際連携輸送需要の高まりに応じて整備される予定である。
同鉄道は「戦略的交通路」と位置づけられ、国境貿易の促進や農林水産物の安定輸出、中国市場へのアクセス強化に資するとされる。現在、この回廊では水運(内陸・沿海)がコスト面から主力を担っており、道路は新設のハロン-モンカイ高速道路(4車線)が2040年まで需要に対応可能である。鉄道は3つ目の輸送手段として導入され、物流と旅客輸送の多様化に寄与する。
建設省は、鉄道総局に対し、中国側と連携して路線の詳細計画を策定するよう指示している。並行して、クアンニン省には既存の道路・水運を最大限活用し輸出拡大を推進するよう要請している。
準備作業の一環として、合同作業団が「越中鉄道協力合同委員会」の第1回会合に参加し、中国側とハイフォン-ハロン-モンカイ線およびハノイ-ドンダン線に関する技術支援で合意した。中国はすでにコンサルティング会社を選定しており、両国は今後連携を加速し、早期着手を目指すとしている。
Vinamilkが自社開発システムで年間3百万米ドルを削減(9月29日)
Vinamilk社(ベトナムの乳業最大手)は、自社開発のAI搭載注文処理システムによって年間300万米ドル以上のコスト削減に成功したと発表した。
商品が顧客に正確かつ十分に配送されることの確保、配送時間の短縮など、配送プロセスの管理と制御において多くの課題がある。従来は配送写真の手作業チェックに多くの人員と時間を要していたが、AIによる自動処理システム導入により、数十万件の画像を数分で処理でき、正確性と効率性の大幅な向上を実現した。
2024年11月のShopee(東南アジア大手ECプラットフォーム)の大規模セール「11/11」では、通常の18倍に増加した注文もスムーズに処理され、システムの柔軟な拡張性が証明された。さらに、AIによる販売代理店の統合や商品レコメンド機能も備えており、受注率と売上の向上に寄与している。
また、同社はAmazon Web Services(AWS)を基盤に、製造・流通・販売・消費者接点をつなぐデジタルエコシステムを構築する方針である。
さらに、社内エンジニアリングチームにより、機能追加やキャンペーン対応の開発サイクルも大幅に短縮した。例えば、2024年末の台風Yagi支援キャンペーンでは、わずか24時間で専用サイトを構築した。
同社は、今回のシステム開発を、同社のデジタルトランスフォーメーション戦略の重要な成果と位置付けており、今後も業務効率化と市場競争力の強化を両立させるとしている。