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タイのビジネスニュース:2025年10月前半


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アジア開発銀行(ADB)が今年と来年のタイGDP成長率見通しを引き下げ(10月1日)

  アジア開発銀行(ADB)は、輸出の減速、外国人観光客数の回復の鈍化、民間消費と投資の低迷を理由に、タイの今年と来年のGDP成長率
見通しを引き下げた。
 最新のアジア経済見通し(ADO)報告書によると、タイのGDP成長率は今年2%と予測されており、4月時点での予測2.9%から下方修正された。米国向けの前倒し輸出の終了に伴い、下半期には経済が減速すると見込まれている。さらに、2026年の成長率も1.6%に下方修正され、
前回の予測2.9%から大幅に鈍化する見通しである。米国向け輸出には19%の関税が課され、これにより電気機器、機械、金属、加工食品、
自動車などの輸出が鈍化すると見込まれる。
 また、観光客数の回復の遅れや世界経済の減速が観光部門を圧迫している。外国人観光客数は、主に中国からの観光客減少により、4月の予測3,950万人から3,400万人に下方修正された。加えて、他の地域との競争激化もこの回復の遅れに影響している。
 民間消費については、所得の減少、消費者信用度の低迷、農産物価格の下落による農家所得の減少を理由に、2025年4月予測から下方修正された。ADBは、2025年後半に実施予定である政府による国内景気刺激策が民間消費を後押しする可能性があるものの、恩恵を受けるための登録手続きの問題から、その影響は限定的となる可能性があるとしている。特にインフラ整備を中心とした景気刺激策は、民間投資を促進する効果が期待される。
 一方で、ADBは、政治的不確実性や高水準の家計債務など国内経済の脆弱性が国内需要の減速リスクを高めていると指摘しており、今後は、米国関税の影響拡大、観光業回復の遅れ、地政学的緊張の高まりなどによって、タイ経済の成長がさらに鈍化し、予測を下回る可能性があるとしている。

 

 

LGエレクトロニクス社が家電価格競争の激化を懸念(10月3日)

 LGエレクトロニクス(タイランド)社は、タイ市場における中国家電メーカーの進出拡大を背景に、価格競争の激化を懸念している。
 2025年9月、中国家電メーカーのハイアールは、タイのチョンブリ県に100億バーツを投じたエアコン製造工場を開設した。第1期の年間生産能力は300万台で、2027年までに600万台に倍増させる計画である。また、中国家電メーカーのハイセンスも、チョンブリ県に47億バーツを
投資し、2026年に稼働予定の冷蔵庫・洗濯機の製造拠点を建設する。
 LGエレクトロニクス(タイランド)のマーケティング責任者は、こうした状況により家電業界では価格競争が激化する可能性があると指摘し、このような激しい価格競争は長期的には市場にとって好ましくない可能性があると警告した。こうした中国メーカーの動向に対し、同社は価格競争には参加せず、製品とサービスの品質を訴求する方針である。
 今後は、現地サプライヤーからの原材料調達比率を70%から80~90%に引き上げる計画であり、これにより、タイ現地でのパートナー企業の投資が促進され、現地サプライヤーとの連携により部品管理の効率化や需要に応じた部品調達が可能になり、過剰在庫の削減に繋がるとしている。

生活費の共同負担策と福祉カード制度がタイのGDP押し上げに貢献(10月6日)

 財務省は、生活費の共同負担策「コン・ラー・クルン」と貧困者・低所得者向けに発行されている「福祉カード」による手当増額により、
民間消費が0.87ポイント上昇すると予想している。
 「福祉カード」による追加手当が0.35ポイント、「コン・ラー・クルン」が0.52ポイントの押し上げ効果を見込んでおり、これら2つの措置の効果により、GDPは約0.3ポイント上昇すると予測される。
 これらの資金は、小売業(特に小規模店舗)、食品・飲料、個人サービス業など幅広い中小企業に恩恵をもたらすと見込まれている。民間
消費を10兆バーツ、付加価値税率(VAT率)を7%と仮定すると、付加価値税(VAT)徴収は約60億バーツ増加する見通しである。
 7月末時点での財政政策局の予測では、民間消費は年率3.1%の成長が見込まれ、成長率は2.6%~3.6%の範囲とされる。「コン・ラー・
クルン」と「福祉カード」の増額措置により、約3,300万人が恩恵を受けるとされている。

 

 

タイ消費者評議会がタイEV市場の欠陥を指摘(10月7日)

 タイ消費者評議会(TCC)は、タイの電気自動車(EV)市場が、バッテリーの安全性リスク、不明確な保証条件、不十分なアフターサービスなど、消費者の権利を阻害する構造的欠陥に直面しているとの調査結果を発表した。調査は400人以上のEVユーザーを対象に実施され、世界の規制慣行との比較も行われた。
 調査では、主要な懸念事項として次の3点が特定された。①安全性と統一基準の欠如(特にバッテリーシステム・家庭用充電装置、防火・緊急対応など)、②法的枠組みとアフターサービス体制の不明確さ(保証条件の曖昧さ、スペアパーツ入手の遅さ、改造EVの登録の複雑さなど)、③経済の不安定化と消費者信用度の低下(新型モデルの急激な値下げによる中古車価格下落や家計債務負担の増加、メーカーと輸入業者の長期的存続の不確実性)が挙げられる。
 高価格で発売された新型EVが短期間で値下げされたことで、早期購入者の不満が高まり、市場への信頼が損なわれていることも明らかになった。これにより、自動車業界全体と金融の安定性にも影響を及ぼしている。
 また同調査では、タイの状況を他の6つの国と比較している。欧州、中国、米国では、欠陥車両に対する法的救済制度「レモン法」や類似制度が確立され、メーカーや販売店の責任が明確化されている。日本では、違反者に厳しい罰則を課すことで、問題発生を未然に防いでいる。
一方、タイでは消費者からの苦情が相次いでおり、EV購入者を保護するための予防措置が不足している。
 TCCは、EV市場の公平性・安全性・安定性を確保するため、複数の機関が連携する包括的な政策パッケージを提案している。タイは現在、
世界的な自動車組立拠点からEV生産拠点への移行という極めて重要な段階にあり、国内産業と競争力を強化するために、現地調達率の向上と
技術移転に注力する必要がある。TCCは、関係政府機関に対し、迅速な対応と協力を求めている。

病院外での医薬品購入を可能とする取り組みが推進中(10月7日)

 タイ内務省貿易局は、患者が院外で医薬品を購入できるようにする政府の取り組みに、350以上の私立病院が署名したと発表した。この取り組みはタイ人および外国人居住者の負担軽減を目的としており、消費者の支出を324億バーツ削減すると見込まれている。
 「ハッピーボディ・ハッピーウォレット」プログラムは、患者が病院以外で医薬品や医療用品の価格を比較・購入できる仕組みを提供し、
消費者の選択肢を広げることを目的としている。ガイドラインに従い、外部で医薬品を購入したい患者は、診察時に医師にその旨を伝え、医師の処方箋に基づいて病院の窓口で支払いを行う。このプログラムの対象は、高血圧、糖尿病、高コレステロールなどの慢性疾患の治療薬や必須医療用品で、全医薬品の約90%をカバーする。一方、心臓病やがん治療など、継続的な治療を必要とする重篤な病気の医薬品は対象としていない。
 全国9つの私立病院グループから合計354の病院がこのプログラムに参加する予定である。バンコク病院、サミティヴェート病院、BNH、
パヤタイ、パオログループ傘下でタイ最大の医療事業者バンコク・ドゥシット・メディカル・サービス(BDMS)などが含まれる。タイには
20,099軒の薬局があり、そのうち19,206軒(93%)が常勤の薬剤師を雇用している。
 内務省貿易局は今後、薬剤師協会と会合を開き、登録手続きの詳細を決定する予定である。次の段階では、医薬品の価格設定構造を協議し、コスト管理の公平性と透明性を確保する計画である。この取り組みにより、消費者の支出削減とともに、公立病院の混雑緩和も期待されている。
 これに対し私立病院協会は、病院外での医薬品購入に伴う品質管理について懸念を示し、粗悪品や偽造医薬品の流通を防ぐため、薬局への
厳格な監督を求めている。

 

 

バンチャック社がe-fuelプロジェクトのパートナーを探索(10月7日)

 バンチャック社は、化石燃料に代わる合成燃料(e-fuel)の研究開発を行うパートナーを募集していることを発表した。
 e-fuelは、再生可能エネルギーで生成した電気を使用して水素と二酸化炭素を結合し、合成炭化水素燃料を製造する技術で生成される合成燃料の一種であり、内燃機関を搭載した既存車両でも使用可能であるとされている。
 同社は、e-fuelプロジェクト推進のため、独自の研究センターを設立する計画で、新規事業・イノベーション向けに割り当てられた3,000万
ドルの予算の一部を建設資金に充てる予定である。また、調査のために、バンチャク社の幹部は、横浜のENEOS社を訪問し、1日1バレルの
e-fuelを製造するプロトタイプ工場を視察した。なお、ENEOSの同工場はNEDOの支援を受けたものであり、同工場で製造したe-fuelは2025年の大阪・関西万博でシャトルバス用に新燃料として試験的に導入されている。
 代替燃料への取り組みは、バンチャック社の事業開発計画の一環であり、同社は二酸化炭素の排出削減を目指し、持続可能な航空燃料(航空機用バイオ燃料)の生産を自社工場で試験的に行っている。

エネルギー省が7,200億バーツのクリーンエネルギー投資を目標に(10月8日)

 エネルギー省は、太陽光発電や炭素回収・貯留を中心としたエネルギー開発プロジェクトに総額7,200億バーツの投資を行うことを目指して
いる。
 これらのプロジェクトは、太陽光発電やエネルギー効率化などを推進する「クイック・ビッグ・ウィン」キャンペーンの一環として、二酸化炭素排出量の削減と経済活性化を目的としている。2050年までに温室効果ガスの排出と吸収のバランスを取ることを目指すアヌティン・チャーンウィラグン政権の政策とも整合している。
 これらの取り組みにより、16,000人の雇用創出と年間1,000万トンの二酸化炭素排出の削減が期待されている。プロジェクの具体的な施策には、全国70万ライの農地に太陽光発電式給水ポンプを導入する支援や、屋根への太陽光パネル設置を行う9万世帯への減税措置などが含まれる。
 さらに、同省は再生可能エネルギーに重点を置いた国の長期的な電力供給管理の指針となる新たな電力開発計画の策定も進めていくとして
いる。

 

 

タイ米の輸出が年間目標を達成する見込み(10月14日)

 タイ米輸出協会は、今年の米輸出量が目標の750万トンに達する見込みであるが、輸出額は昨年より40%減少すると予想している。      
 今年1~9月で、タイは590万トン以上の米を輸出している。年間目標を達成するには、第四半期の月平均輸出量が50万トン以上必要で、もしタイが毎月60万トンを出荷できれば、総輸出量は800万トンに達する可能性がある。
 しかし、世界の米市場は供給過剰と需要減少により競争が激化しており厳しい状況にある。インドネシアやフィリピンなどの主要輸出先は、国内供給の安定化のため輸入を一時停止しており、これが世界市場での価格下落につながっている。現在の主要国の米価格は、タイの5%白米が1トンあたり340米ドル、ミャンマーが310米ドル、パキスタンが330米ドル、インドが約350米ドル、ベトナムが360米ドルとなっている。
 タイ米の価格は、今年は1トンあたり340ドル程度に落ち着く見込みで、2024年の平均500ドルから大幅に下落する見通しである。輸出量も
昨年の990万トンから減少し、輸出額は前年比で約40%減少すると予測されている。

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