ベトナムのビジネスニュース:2025年10月前半

PVCFCが2025年「急成長ブランドTop10」に選出(10月3日)
ペトロベトナム・カマウ肥料会社(PetroVietnam Ca Mau Fertilizer、以下:PVCFC)は、2025年1〜9月期に売上高約1兆2,800億ドンを達し、計画比22%増・前年同期比33%増を記録したことを発表した。税引前利益は1兆6,000億ドンとなった。輸出は33.9万トン(1億3,700万米ドル)で、数量ベースで43%増、金額ベースで54%増と大幅に拡大した。特に、オーストラリア向けの輸出は、同国の肥料輸入管理制度で最高等級となる「Level One」認証を取得しており、同国への総輸出量は約3万トンに達し、国際市場での競争力を示す成果となった。
同社は『Forbes Vietnam(フォーブス・ベトナム)』の「上場企業Top50」や、「ASEAN Corporate Governance Scorecard(ASEAN企業統治格付け)Top5」に選出されるなど、経営面でも高く評価されている。さらに、住宅支援などの社会貢献活動にも積極的に取り組んでいる。
今後は、グリーンテクノロジー導入やCO₂食品の開発・製造、B2B販路拡大、国際顧客開拓、尿素・NPK・有機微生物肥料などの製品多角化を進め、持続的な成長を目指すとしている。
ロングチャウが「デジタルヘルスケア革新ソリューション賞」を受賞(10月4日)
ベトナムの医薬品小売・予防接種チェーンであるロングチャウ社(Long Châu)は、「Better Choice Awards 2025」において、「デジタル医療およびヘルスケア分野の革新的ソリューション賞」を受賞した。同賞は、同社が開発したデジタル健康管理プラットフォーム「ロングチャウ電子健康手帳」の先進性と社会的貢献を高く評価したものである。
この電子健康手帳は、ユーザーが自身の健康状態を主体的に管理できる統合型アプリケーションであり、健康チェック用の問診票、オンライン医薬品の検索・購入機能、服薬リマインダー、体重・血圧・血糖値などの健康指標をグラフで追跡できる機能を備える。また、ワクチン接種履歴や個人に合わせたスケジュール提案、電子カルテ(eHealth Record)の安全な管理機能も実装している。
さらに、AI Vision技術や外部デバイスとの同期技術を活用し、医療従事者とのオンラインチャットによる相談にも対応している。遠隔地の住民にも迅速かつ手軽な医療サービスを提供し、公的医療機関の負担軽減と医療アクセスの拡大に寄与している。
ロングチャウは「顧客の健康を中心に据え、テクノロジーによる医療体験の向上を追求していく」との方針を掲げており、今後もAI、OCR(光学文字認識)、スマートリマインダーなどの先端技術を導入し、よりパーソナライズされた医療支援を進めていく考えである。
現在、同アプリは200万人以上のユーザーに利用されており、受動的な健康管理から能動的なセルフケアへの転換を推し進めている。ロングチャウは全国に2,240店舗の薬局と200の予防接種センターを展開しており、約2万人の医療従事者とともに「健康で持続可能なベトナム」の実現を目指すとしている。
PVFCCo-Phu MyがNPK生産100万トンを達成した(10月5日)
ベトナム石油化学肥料総公社(PVFCCo-Phu My)は、化学技術による複合肥料「NPK Phu My」の累計生産量が100万トンに到達したと発表した。同社は、2004年に尿素肥料の国産化を実現し、2018年に欧州規格の化学NPK生産ラインを立ち上げており、ベトナム肥料産業の近代化を主導してきた成果であるとしている。
2004年当時、ベトナムでは尿素肥料の約9割を輸入に依存していたが、同社の尿素肥料工場の稼働によって安定供給体制が確率され、同製品は全国シェア40%超を占めるブランドへと成長した。その後、農家が長らく輸入品や手作業による混合肥料に頼っていた課題を解決すべく、化学プロセスによる国産NPK肥料の開発に着手し、2018年に稼働した「NPK Phu My工場」は、ベトナムで初めて欧州技術を導入した複合肥料生産拠点となった。
「NPK Phu My」は、窒素・リン酸・カリウムの各栄養素を1粒に均一封入する化学技術で製造されており、従来方式に比べ栄養素の溶脱や揮発を抑制し、作物の吸収効率と収量を高める。初期段階では粒度や包装に課題があったが、技術者がメコンデルタやタイグエン省などの農地を訪問し、農家の意見を取り入れて改良を重ねた結果、品質の安定化が実現した。
原料には自社製の高純度アンモニア・尿素を使用し、国際的なサプライヤーから厳選した成分を調達している。また、法的義務化前からカドミウム(Cd)含有量を自主的に管理するなど、環境保全にも積極的に取り組んでいる。
現在、同社は約30種類のNPK配合を展開し、地域の土壌条件や作物に応じて最適化を実施している。微生物配合型や高級カリウム硫酸塩(SOP)を用いた「NPK Phu My 15-15-15+5S+TE」など革新的製品を市場投入している。今後も「品質・革新・持続可能性」を柱に、ベトナム農業の生産性向上と食料安全保障の確立に貢献するとしている。
ベトナム農業・環境省が農林水産物輸出の新記録達成を発表(10月6日)
ベトナム農業・環境省は、2025年の農林水産物輸出額が670~700億米ドルに達する見通しを発表した。2025年1月~9月の輸出総額は523億米ドルで、前年同期比14%増となった。特にコーヒー、ゴム、ナッツ、胡椒、果実、木材、水産物などの主要輸出品目が成長を牽引している。
農業生産では、稲作面積が550万ha(前年比0.5%増)で、収穫量は約3,480万トンに達した。豚肉生産はアフリカ豚熱の影響を受けつつも約400万トン(4.6%増)、家禽肉は190万トン(3.7%増)と堅調である。林業では新植面積20.7万ha(10.6%増)、木材生産量1,800万m³(8.7%増)を記録した。水産業も引き続き好調で、総水産量は726万トン、そのうちエビは5.8%増加した。
2025年1月~9月の輸出総額523億米ドルの内訳は、農産物285億米ドル、水産物81.2億米ドル、林産物134.1億米ドル、畜産4.47億米ドルである。地域別ではアジアが44%、米国が23%、欧州が14%を占め、アフリカ向け輸出は倍増した。
品目別では、コーヒーが69.8億米ドル(61%増)、ゴムが23.2億米ドル(11%増)、カシューナッツが37.5億米ドル(18.9%増)、果物・野菜62.2億米ドル(10%増)、木材が125.2億米ドルを記録した。一方、米の輸出量は700万トンで横ばいながら、単価の下落により輸出額は18.5%減少した。
商業収支は159.3億米ドルの黒字で、前年比17.6%増となった。農業・環境省は長期目標として「グリーン・エコ・サーキュラー農業」の推進を掲げており、科学技術と再生可能エネルギーを活用した持続的成長を目指している。また同国は、ハラール市場(中東)や中南米、アフリカ、中アジアとの6つの新たな自由貿易協定を交渉中であり、EUの森林破壊規制(EUDR)や米国の輸入管理基準への適応を進めている。
商工省がベトナム製品の競争力強化に向けて「デジタル追跡技術」推進を発表(10月9日)
ベトナム商工省は、各省庁・業界団体・企業と連携し、透明で近代的なエコシステムを構築し、ベトナム製品の国際競争力を高め、グローバル市場への統合を加速させることを発表した。
近年、ベトナム市場では出所不明・偽造・低品質商品が流通し、正規企業や消費者に損害を与えている。この状況を受け、政府は2025年に首相指令第13号および電文第72号を発出し、密輸・不正取引の取り締まりを強化。商工省も決定第1398号(2025年)を公布し、全国規模の監視・検査・摘発キャンペーンを展開した。結果、上半期だけで5万件超の違反が摘発され、抑止効果を上げた。
フォーラムでは、トレーサビリティ(追跡可能性)を「管理ツール」ではなく「ブランドのパスポート」と位置づけ、製品が海外市場に進出するための鍵とした。iTrace247システム(ブロックチェーン活用型トレーサビリティプラットフォーム)は、ライチや野菜・果実の輸出追跡で成果を上げ、日本・シンガポール市場で成功を収めている。
さらに、同局はブロックチェーン、IoT、QRコード、GS1バーコードなどの技術導入を推進し、データの正確性と全行程の追跡を保証する。今後は、政府・企業・消費者が共通でアクセスできる集中型データベースを構築し、消費者が「市場を監視するスマートユーザー」となる社会を目指す。
同局により、追跡技術は単なる管理手段ではなく、持続可能な商業発展への鍵であり、企業の誠実経営と消費者の信頼回復こそベトナム製品のブランド価値を世界に広げる原動力になるとしている。
LNGタイビン火力発電所プロジェクトが着工(10月10日)
10日フンイエン省でLNGタイビン火力発電所の起工式が開催された。同プロジェクトは、北部および全国の電力安全保障を確保する戦略的重点事業と位置づけられている。
同プロジェクトはLNGタイビン電気社が主導しており、出資比率は東京ガス40%、九電インターナショナル30%、TTVN Group(ベトナムの再生可能エネルギー・不動産分野の大手企業)30%である。総投資額は26億9,000万米ドル、発電容量1,500MWで、2029年第4四半期に商業運転開始を目指す。出資元のTTVN Groupは、再生可能エネルギーと不動産事業を展開し、国内上位10社に入るクリーンエネルギー企業である。
発電設備は高効率複合ガスタービン2基で構成され、燃料に液化天然ガス(LNG)を使用する。これにより、CO₂、NOx、PM2.5の排出を大幅に削減し、SO₂の排出をゼロにすることができるため、ベトナムがCOP26で表明した2050年カーボンニュートラル目標に貢献する。運転開始後は、年間60~100億kWhの電力を供給し、建設期間で約2,000人、運転期に約300人の雇用を創出する見込みである。
フンイエン省人民委員会は、同プロジェクトが電力供給の安定化だけでなく、地域経済の発展、雇用創出、投資誘致、ハイテク産業・クリーンエネルギー促進にも貢献するとの見解を示しており、LNGタイビン火力発電所は、ベトナムのグリーンエネルギー時代の幕開けを告げる象徴的な一歩として取り組みを進めていくとしている。
ベトナム政府は国家エネルギー安全保障確保に向けた行動計画を発表(10月15日)
ベトナム政府は、国家エネルギー安全保障確保行動計画(決議第328/NQ-CP)を公布した。本計画は2030年までの目標と2045年までの長期ビジョンを掲げ、安定的なエネルギー供給体制の構築を目指す。
政府は、2030年までの一次エネルギー供給量1億5,000万~1億7,000万トン(石油換算)、最終エネルギー消費量を1億2,000万~1億3,000万トン(石油換算)に設定した。また、エネルギー消費効率を8〜10%向上させ、温室効果ガス排出量を通常シナリオ比で15〜35%削減する目標を掲げた。
政府は各省庁・地方自治体に対し、国家エネルギー法制度の整備や戦略・計画・政策の実施監督を指示し、国内エネルギー供給の多様化・自立化を進めるとともに、天然ガス・LNG・電力・石油化学・再エネを統合した国家エネルギー産業センターの設立を促している。
また、化石燃料依存の低減に向け、炭素税の導入や発電燃料のガス・バイオマス・水素・アンモニアへの転換を検討している。さらに、エネルギー効率の低い機械・設備の廃止や省エネ基準の義務化も進める方針である。
科学技術・デジタル変革・人材育成も計画の柱と位置づけられ、エネルギー分野への研究開発投資はGDPの2%以上を目標に掲げている。全国規模のエネルギー技術研究センターやイノベーション拠点を整備し、2030年までに2万5,000〜3万5,000人の技術者・専門家を育成するとしており、特に原子力・再エネ・新エネルギー分野の人材確保を優先する。
政府はこの行動計画を通じ、脱炭素化・デジタル化・技術革新を融合させた新しいエネルギー安全保障モデルを構築し、持続可能な経済成長と国防・環境保全の両立を目指すとしている。

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