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タイのビジネスニュース:2025年10月後半


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タイエネルギー事業局がタイ初のSAF規格を制定(10月17日)

 タイエネルギー事業局は、航空業界の二酸化炭素排出量削減を支援するため、持続可能航空燃料(SAF)の規格を今年10月に制定し、2026年1月1日から施行すると発表した。
 同局によると、タイのSAF製造に用いられるガイドラインは国際基準に基づいており、純粋なSAF(ニートSAF)、SAFと従来のジェット燃料の混合燃料、大型商用旅客輸送航空機で使用されるケロシン系のジェット燃料油「ジェットA-1」が対象となる。
 これまでタイにはジェットA-1の国内規格はなかったが、SAFは従来の燃料と混合して使用されるため、二酸化炭素排出量を算出するには同規格の策定が必要だとされている。規格は10月最終週に官報(ロイヤル・ガゼット)で公表される見込みである。
 タイの主要なSAF製造業者は、Bangchak社とPTT社の石油化学部門であるPTT Global Chemical社(以下GC)の2社である。Bangchak社が純粋SAFを、GC社がジェット燃料との混合SAFを生産しており、GCの製品はPTTの子会社Oil and Retail Businessを通じて流通する予定で
ある。
 両社はいずれも、SAF製造の原料として使用済み食用油(UCO)を使用しているが、SAF需要の高まりにより、2027年にはUCOが不足すると予想されている。そのため、メーカー各社は植物繊維由来の原料活用へ移行する可能性がある。
 SAF専門家によると、トウモロコシの茎葉、サトウキビのバガス(絞りかす)、小麦の茎などには、エタノールやイソブタノールなどのアルコールに変換できる繊維が豊富に含まれており、これをアルコールジェット燃料化技術でジェット燃料に変換できる。
 同局は、タイにはSAF生産に必要な原料が豊富にあることから、「タイを地域の航空ハブにする」という政府の計画を後押ししたい方針で
ある。

 

 

Central Retail Corporation社がタイ小売業界初のグリーンボンドを発行(10月23日)

 Central Retail Corporation社(以下CRC)は、タイの小売・卸売部門で初となるグリーンボンド(環境債)を発行したと発表した。調達した資金は再生可能エネルギーやクリーン交通、グリーンビルディングなどの環境保全事業に充てられる。
 今回の発行は、グリーンボンド1トランシェ(10億バーツ)と、機関投資家向けの通常債2トランシェ(計65億バーツ)で構成され、総額75億バーツを調達する。償還期間3~5年、クーポンレートは1.63~1.93%で、応募総額は募集額の4倍以上となる300億バーツを超えた。
 同社の最高財務責任者(CFO)によると、グリーンボンドによる資金は、セントラル百貨店やロビンソン百貨店、トップス、タイ
ワツァドゥ、ロビンソン・ライフスタイル・モールなどの屋上に設置する太陽光発電設備への投資や既存融資の借り換えに充てられる。これらの設備は年間約9万メガワット時の電力を生み出し、年間4万5,000トン以上の温室効果ガス削減が見込まれる。
 一方、通常債による65億バーツは、同社の銀行借入金の一部返済に充てる計画である。今回の債券発行は、負債構造の最適化や短期融資から長期資金への転換、金利変動リスクの軽減などを図る同社の長期財務戦略の一環とされる。
 今回の発行では、バンコク銀行、アユタヤ銀行、カシコン銀行が共同主幹事を務め、アユタヤ銀行はサステナビリティ・ストラクチャ
リング・アドバイザーとしても参画した。同社は今後も、資金調達コストの効率化と資本構成の強化を進め、長期的かつ持続可能な事業成長を目指すとしている。

PTTグループとRCLがタイ初の船舶用バイオ燃料の商業販売を開始(10月24日)

 国営石油・ガス複合企業PTTグループのPTT oil and retail business社 (以下、OR)は、上場海運会社Regional Container Lines(RCL)と協力し、タイで初となる船舶用バイオ燃料の商業販売を開始したと発表した。
 ORはクリーンエネルギーによる持続可能な海上輸送を推進するため、バンコクに拠点を置く海運会社であるRCLと提携し、超低硫黄燃料油(VLSFO)に再生可能エネルギー由来のバイオ燃料を24%混合した「B24」を貨物船向けに試験的に供給した。初回供給はチョンブリ県
レムチャバン港で実施され、供給作業は、Interbunker Supply and Transport社が支援し、輸送用の石油タンカーとして「Dragon Ten」を
使用した。
 RCLへの再生可能エネルギー由来の船舶燃料の供給は、クリーンエネルギーの利用促進と海運業界の温室効果ガスの排出削減を後押しする
もので、タイのエネルギー部門と海運部門間の連携を示すものである。
 今回の供給は、2025年7月にORとRCL間で締結した覚書に基づくもので、両社は今後も海上輸送分野での炭素排出削減と持続可能な成長を
推進していく方針であるとしている。

 

 

タイ製造業が米国の新関税ルールへの対応に苦慮(10月27日)

 商工銀行合同常任委員会(以下JSCCIB)は、米国による関税規則の変更がタイ製造業と輸出に与える影響について分析結果を発表した。
 米国は2025年8月から、タイ製品に対して、従来の36%関税を撤廃し、新たに19%の関税を課す方針を示しているが、米国当局が「トラン
シップ(積み替え)」とみなした場合には依然として高関税が適用される可能性があり、輸出業者間で不安が高まっている。
 JSCCIBによると、トランシップ問題を巡る米タイ間の交渉が妥結すれば、タイの域内付加価値比率(RVC)が約50%に引き上げられる見通しである。RVCは製品価値に占める国内調達割合を示し、中国製品をタイ製として再輸出する行為を防ぐ狙いがある。
 タイ工業連盟(FTI)の調査では、電子機器、鉄鋼、医薬品の3分野でRVCが40%未満にとどまり、特に電子機器は22.5%と最低水準で
あった。一方、合板・木材板(RVC85%)、屋根材(RVC82.5%)、食品・飲料(RVC75%)、石油化学製品(RVC70%)などは比較的高い現地調達率を示した。
 一方、電気自動車分野では状況が異なっている。投資委員会(BOI)によると、中国のEVメーカーがタイ国内で部品調達する方針を示して
おり、EV部品の最大90%が国産化される見通しである。長安汽車(タイランド)は100億バーツ規模の投資を計画しており、現地調達率を60%から90%へ引き上げる方針を明らかにしている。国家EV政策委員会も輸出向けEV生産の要件を緩和し、タイを地域のEV輸出拠点とする取り
組みを進めている。
 JSCCIBは、第4四半期の輸出減速を懸念しており、その要因として世界的な貿易不確実性とバーツ高を挙げた。また、観光業や国内経済の
低迷も企業の競争力を圧迫していると分析している。JSCCIBは今後、政府と連携し、RVCの向上と輸出支援策の強化を図り、輸出の持続的成長とタイ経済の安定的発展を目指すとしている。

タイ政府が経済低迷を受け発電所4カ所の操業停止と1カ所の開設延期(10月27日)

 タイ政府は、経済成長の鈍化により電力需要が低迷する中、供給過剰と電力事業者への負担を抑えるため、4カ所の発電所の稼働停止と、1カ所の新設計画を延期する方針を発表した。
 この措置は、国家エネルギー政策評議会(NEPC)によって承認されたもので、効率的な電力供給体制を維持することを目的としている。対象となる4つの発電所は、タイ電力公社(EGAT)が運営する北バンコク、南バンコク、ナムフォンの3つのガス火力発電所と、メーモ8号機および9号機の石炭火力発電所である。これらは本来2025~2030年に再稼働を予定していたが、2029年以降になる見通しである。
 また、Gulf Development社などが出資するブラパ発電所は、当初2027年の商業運転開始を予定していたが、2029年に延期されることが決定した。これにより、EGATと民間電力会社は合わせて約35億バーツのコストを削減できる見込みである。
 エネルギー大臣は、経済の停滞は新型コロナウイルス感染拡大時のロックダウン措置に端を発し、その影響が今なお続いていると指摘して
いる。パンデミック収束後も経済は完全には回復しておらず、電力需要も伸び悩んでいる。
 エネルギー大臣はまた、経済情勢の変化を踏まえ、従来の電力開発計画(PDP)を再検討し、スラタニ県や東北部でのガス火力発電所建設
計画も見直す方針を示した。エネルギー省は今後、新たに設置するPDP策定委員会を通じて、長期的な電力供給の最適化と持続可能なエネルギー政策の実現を目指すとしている。

 

 

タイの外国人観光客数が7.25%減少(10月28日)

 タイ観光スポーツ省は、1月1日から10月26日までにタイに訪れた外国人観光客が前年同期比7.25%減の2,625万人だったことを発表した。
マレーシアからの観光客が380万人で最大となり、次いで中国が372万人だった。
 タイ中央銀行(BOT)は10月、2025年の外国人観光客数見通しを従来の3,500万人から3,300万人に引き下げた。新型コロナウイルス感染
拡大以前の2019年には約4,000万人を記録しており、回復は道半ばとなっている。
 経済面では、BOTの総裁が、2025年後半に一時的に減速を見込む一方、その後2026年第1四半期には回復基調に入るとの見通しを示した。
タイ政府は家計債務の不良債権問題への対応を急いでおり、今月中に不良債権の買い取りに100億バーツ(3億534万米ドル)を投じる方針で
ある。支援策の詳細は今後1~2週間以内に決定され、約200万人の支援につながると期待されている。
 BOTは、近年地域諸国に遅れをとっていたタイ経済の成長率を、今年は2.2%、2026年には1.6%成長すると予測しており、昨年の2.5%から鈍化する見通しであるとしている。

Gulf Development社とマイクロソフト社がデータセンター事業で提携(10月30日)

 Gulf Development社は、データセンターサービスとタイのクラウド・AI分野の成長促進に向け、マイクロソフト社と戦略的提携を締結した
ことを発表した。
 この提携により、Gulf Developmentは、再生可能エネルギーや発電分野での強みを活かし、通信事業大手Advanced Info Service(以下、
AIS)との連携を通じて、クリーンエネルギーを活用したデータセンター運営を推進する。
 この提携は、タイのデジタルインフラの持続的な成長を推進することで、タイのクラウド・データセンター機能を強化し、タイをアジア地域のデジタルハブとするための成長を加速させることを目指している。
 提携の一環として、Gulf Developmentの子会社であるGSA Data Center 02社(GSA02)は、マイクロソフトのデータセンターが設置されている地域(クラウドリージョン)におけるデータ処理・保管サービスを提供する契約を締結した。GSA02は、マイクロソフト社のデータレジデンシー要件を満たしながら、低遅延と高回復力を備えたサービスを提供する。
 さらに、Gulf DevelopmentとAISが出資するG-AISは、マイクロソフトとの協力を拡大し、AIを活用した顧客対応システムやサイバーセキュリティソリューションなどの共同開発を進める予定である。両社は今後、民間企業や政府機関向けにデジタルソリューションを提供するための共同の市場開拓戦略を策定するとしている。

 

 

2025年1月から9月までの投資奨励申請額が前年比94%増加(10月30日)

 タイ投資委員会(BOI)は、1月から9月までの投資奨励申請額が前年比94%増の総額1兆3,700億バーツに達し、過去最高を記録したと発表した。
 この増加は主に、デジタル分野やスマート電子部品・デバイス製造を中心とした大規模な外国直接投資(FDI)案件の急増によるものである。2025年の1月から9月までの投資申請件数は2,622件であり、前年同期比23%増(前年2,137件)となった。全セクターにおけるFDIプロジェクト総額は9,850億バーツで、申請総額の72%を占め、金額ベースで前年から82%増加した。
 分野別では、デジタル関連が最大で、主にデータセンター向けの119件のプロジェクトが申請され、総投資額は6,130億バーツとなった。次いで電気機器・電子(E&E)分野が382件、総投資額1,840億バーツ、動車・部品分野が229件・710億バーツ、農業・食品加工分野が228件・
472億バーツであった。
 主要投資元国は、シンガポールが3,600億バーツでトップ、次いで香港(2,370億バーツ)、中国(1,430億バーツ)、英国(1,000億
バーツ)、日本(738億バーツ)が上位を占めた。

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