タイのビジネスニュース:2025年11月前半

タイ政府が学生向けにGoogle AI Proを1年間無料提供(11月4日)
デジタル経済社会省(DES)は、Google Cloudと提携し、Google AI Proパッケージの人工知能(AI)ツールを学生に1年間、個人使用目的で無料で提供すると発表した。
今回の取り組みは、AI技術の活用を通じてタイの学生の潜在能力を引き出すことを目的とした重要な戦略的提携である。この取り組みでは、
18歳以上の学生にAI Proパッケージへの個人利用を1年間無料で提供するもので、同省は将来的にこのサービスの対象範囲を500万人以上に拡大する方針である。
同省とGoogleは、様々なプラットフォームとの連携を通じ、研究の促進、資格取得の促進・支援、条件調整を進め、すべてのタイ人が平等にアクセスできる体制を整備するとしている。
さらに、同省との提携により、Google CloudのVertex AIプラットフォームとGeminiモデルを活用した国家レベルの学習ソリューションも
開発される。このソリューションは、AI技術がますます重要な役割を果たす世界において、ユーザーが必要なスキルを身に付けられるよう設計されている。
タイ政府が医薬品の価格透明化を推進する新プログラム「Happy Body, Happy Wallet」を導入(11月4日)
タイ政府は、民間の病院と協力して医薬品の価格透明化を推進する新プログラム「Happy Body, Happy Wallet」を開始したと発表した。
医薬品の価格設定の透明性を促進し、患者が病院外で薬を購入できる仕組みを整備することで、生活費を年間320億バーツ削減することを目指す。
同取組は、全国で300以上の私立病院が参加しており、タイ私立病院協会は、商務省国内貿易局、保健省保健サービス支援局、食品医薬品局(FDA)とこの取り組みに関する覚書を締結した。FDAは参加薬局を審査・認定しており、これまでに全国で約21,000軒のうち3,400軒以上が登録されている。この取り組みにより、患者は病院から処方箋を受け取り、「Happy Body, Happy Wallet」のロゴを表示している登録薬局や認定された遠隔薬局サービスを通じて医薬品を購入できるようになる。
商務大臣は、この取り組みにより医薬品費が30%削減されると見込んでいる。また、同取り組みにより、正式な処方箋システムを通じて処方薬のより効果的な調剤が可能になることが期待されている。
関税局が電子商取引プラットフォームを通じた輸入税を徴収(11月5日)
関税局は、2026年1月から電子商取引プラットフォームを通じて購入された輸入品に輸入税を徴収する方針を発表した。
輸入税の対象製品は、海外から直接購入され、国内に付加価値をもたらさず免税となっている製品である。従来の規則では、輸入を円滑に
進めるため、1,500バーツ未満の製品は付加価値税(以下VAT)と輸入関税が免除されていた。2024年7月から関税局は全ての輸入製品に対するVAT徴収を開始しているが、正規ルートで輸入する国内事業者にとっては不公平な状況が続いていた。さらに、製品基準の検査が不十分であることも、安価で基準を満たさない製品の流入につながり、国内生産者に影響を与えている。
新たな措置では、関税免除対象の最低価格を1バーツに引き下げ、1バーツを超える商品には輸入関税とVATの両方が課される。この税収に
より、タイ政府は年間約30億バーツの歳入を得る見込みで、平均税率は約10%、VATは7%になるとされる。
将来的には、海外EC商品に対して単一の輸入税率を適用する法改正も計画するとしている。
タイ・ヤマハモーターは国内バイク市場の低迷が続くと予測(11月6日)
タイ・ヤマハモーターでは、タイのオートバイ市場は、今年の第4四半期まで低迷が続くと予測している。国内販売低迷の要因の一つに低額のバイクローンがあげられる。
銀行や自動車金融会社による融資基準の厳格化は、市場の成長を制限し続けている。これは、特に第4四半期において、業界に影響を及ぼす
大きなリスク要因となるとみられる。
国内金融機関は10月以降、経済の不透明感と不良債権への懸念の高まりを受け、融資条件を厳格化してきた。同社は、高額な家計債務と購買力の弱さが消費者需要を弱めていると指摘している。農産物価格の下落や洪水による混乱などさらなる圧力があり、これまでオートバイ需要の中心であった農村部で家計収入と支出が減少している。
こうした課題から、同社は長期的な成長に注力している。2025年の販売目標を28万台に設定し、市場シェアを現在の14%から16%に引き上げ、3年以内に20%に到達することを目指している。同社では、2024年にタイで23万2,000台を販売しているが、成長を支えるため、2026年に3機種以上の新モデルを発売する。また、販売店網も既存の全国300店舗と600ショールームに加え、30店舗拡大する予定としている。
Vietjet Thailand社が持続可能な航空燃料(SAF)を1%混合した燃料で運航を開始(11月7日)
Vietjet Thailand社は、タイの格安航空会社として初めて持続可能な航空燃料(SAF)を1%混合した燃料で運航を開始したと発表した。
同社のCEOによると、バンコクーフーコック(ベトナム)線でSAF混合燃料の使用を開始し、2026年にはバンコクーカムラン、バンコク-
ダナンなど他路線にも使用を拡大する予定である。同社は、国際民間航空機関(ICAO)の基準に従い、2030年までに全路線でSAF燃料混合率5%を目指しており、これにより今後6年間で約15万3,000トンの二酸化炭素排出量削減を目指す。また、将来的なSAFの安定供給確保のため、
PTT Oil and Retail Business社と覚書を締結する予定である。SAFの価格はジェット燃料A-1の2倍以上となるが、混合割合はわずか1%であるため、旅客航空運賃への影響は限定的と見込まれる。
今後、同社は全機をボーイングB737-8に置き換える計画で、新型機は既存のエアバスA320と比較して燃料消費量を15%以上削減できる。
しかし、新型機の納入は米国政府の影響を受け、今年で4回延期されている。最初の2機は11月中の納入を予定しており、年末までに運航を開始する予定としている。
タイ投資委員会(BOI)が31億ドルのデータセンター投資を承認(11月10日)
タイ投資委員会(BOI)は、総額31億ドル相当のデータセンタープロジェクト4件を承認したと発表した。
承認した投資には、ドバイのDAMAC Digitalによる267億バーツ相当・84メガワット(MW)のデータセンターと、国内企業による549億バーツ相当・200MWのハイパースケールデータセンターが含まれている。
同委員会はさらに、すでに承認されているプロジェクトの再開を促進するための新たな措置も承認した。停滞していた92億ドル相当の投資の加速を目指す取り組みの一貫として、電力供給、工業用地へのアクセス、ビザや労働許可の取得などの分野での遅延を抑制する6件のライセンスも承認された。
これにより、タイの投資環境に対する信頼が高まり、雇用拡大やより広範な経済発展に貢献すると見込まれる。
エネルギー規制委員会が電気料金の引き上げを検討(11月11月)
エネルギー規制委員会(以下ERC)は、電気料金を現行の1kwhあたり3.94バーツから4.58バーツに引き上げることついて、一般意見の聴取を行う予定であることを発表した。
新料金は2026年1月から2月に施行することを検討している。電気料金は、3.78バーツの基本料金と、燃料費および政策関連費用である燃料料金(以下FT)で構成されている。ERCは、電気料金を経済状況に合わせるため、FTを4ヶ月ごとに見直している。
ERCの事務局長によると、11月10日から23日まで開催される公聴会で、ERCの公式サイトを通じてタイ国民が投票を行う予定である。
同社によると、電力料金の一部は、タイ電力公社(EGAT)と国営石油ガス会社PTT(タイ電力公社)が過去に実施した電気料金補助金の返済に充てられ、EGATに470億5,000万バーツ、PTTに120億バーツを返済する義務がある。
第一の選択肢では、FTは1kwhあたり0.80バーツで、合計料金は1kwhあたり4.58バーツとなる。この料金であれば、EGATとPTTへの債務
590億5,000万バーツを来年4月までに全額返済できる。
第二の選択肢では、現在の1kwhあたり3.94バーツの料金を維持し、FTを0.16バーツに引き下げる。この計画では、債務のうち61億4,000万バーツのみが返済され、残りは後日精算される。
石油、ガス、石炭の供給過剰と世界経済の減速により、燃料費は低下すると見込まれている。ガスは引き続き発電の主要燃料となり、1月から4月までの電力供給量の55%を占める見込みとなっている。
なお、今後の平均ガス価格は4%下落、輸入石炭価格は10%下落、国内産褐炭価格は横ばいと予想されている。
タイ政府が米国産飼料用トウモロコシの輸入量を大幅に拡大(11月11日)
タイ政府は、米国との貿易交渉の一環として、飼料用トウモロコシの輸入量を増やし、関税をゼロに引き下げることで合意したと発表した。
政府報道官によると、タイは2026年2月~6月に米国から100万トンのトウモロコシを無関税で輸入する予定である。これは従来の年間割当量である5万4,700トン(関税20%)を大幅に上回るものである。
タイでは年間約900万トンの飼料用トウモロコシを消費しており、そのうち400万~500万トンを輸入に依存している。今後の計画は米国との交渉次第であるが、政府は農家への影響を最小限に抑えるための措置も取っており、輸入トウモロコシ1トンにつき国内産トウモロコシ3トンの購入を義務付けている。また、2月~6月までの輸入期間は、タイのトウモロコシの主要収穫期である第4四半期(4月~12月)と重ならない
ため、国内価格への影響を最小限に抑えることができる。
また、タイでは、焼畑農業による大気汚染を抑制するため、来年から焼畑農業を行う国からの飼料用トウモロコシの輸入を禁止することを
決定している。現状の輸入の大部分は、焼畑農業が一般的であるミャンマー、ラオス、カンボジアからであり、この措置により米国からの輸入が有利になると予想される。
なお、飼料業界の推計では、2025年のタイの飼料需要は2024年の2,110万トンから2,180万トンに増加すると予測されており、国内の飼料
原料(主にトウモロコシ、大豆粕、小麦)の約60%は輸入品と見込まれている。

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