ベトナムのビジネスニュース:2026年1月前半

T&T Groupがラオスで風力発電所「Savan 1」の商業運転を開始
T&T Group(ベトナム大手民間コングロマリット企業)は、ラオスで開発を進めてきた風力発電所「Savan 1」の商業運転(COD)を開始したと発表した。同案件は、国境を越えた再生可能エネルギー供給の実現例として注目されるとともに、エネルギー分野における民間企業の役割拡大を象徴するプロジェクトとなる。
Savan 1の商業運転開始は、同プロジェクトが投資・建設フェーズから電力販売を通じた収益化フェーズへ移行したことを意味する。T&T Groupは、法制度整備、発電設備建設、送電インフラ整備、市場参入までを一体的に進め、計画通りの運転開始を実現した。
同プロジェクトは、ベトナムとラオス間のエネルギー協力の枠組みに基づき推進されてきた。2024年8月には、ベトナム政府がSavan 1からの電力輸入方針を承認し、2025年1月にはT&T Group傘下のSavan 1 Wind Power LLCがラオス政府から25年間の事業権を取得した。さらに、ベトナム電力(EVN)との電力購入契約(PPA)締結により、ラオス産再生可能電力をベトナムへ送電する制度的枠組みが整備された。
Savan 1は、総出力495MW、総投資額7億6,800万米ドルに及ぶ大規模陸上風力発電所である。発電設備と送電インフラを同一プロジェクト内で同時に整備した点が特徴で、T&T Groupは約70kmの専用送電線を自ら建設し、再生可能エネルギー事業で課題となりやすい「送電網接続待ち」のリスクを回避した。
ラオス・サワンナケート州からベトナム・ラオバオ変電所(220kV)までの送電線が完成し、国境を越える電力供給体制が確立された。全工程は約16か月という短期間で完了し、ベトナム企業による対ラオス風力発電投資案件の中でも先行して商業運転に入った。
Savan 1は、エネルギー安全保障と脱炭素化を同時に追求する両国の国家戦略を具体化したプロジェクトである。ベトナム企業が隣国で電源開発から送電までを一貫して担い、自国の電力系統に供給するモデルは、今後の地域エネルギー連携の新たな形を示している。
Nafoods GroupがFPTと戦略的提携を締結し、SAP ERP導入を開始(1月8日)
Nafoods Group(ベトナムの大手農産物加工・輸出企業)は、FPT(ベトナム最大級のIT・デジタル変革企業)と包括的な戦略的提携を締結し、SAP S/4HANA Public Cloud(財務・生産・調達・物流などをリアルタイムで統合管理する基幹業務統合システム)の導入を正式に開始した。同提携により、Nafoodsはデータを中核とする国際水準の経営管理体制を構築し、デジタル農業企業への転換を加速させる。
両社は、持続可能な成長を共通目標に、全社的なデジタルトランスフォーメーション(DX=業務・経営のデジタル化)、データ活用、AI(人工知能)応用を軸とした長期的パートナーシップを構築する。FPTは、広域・多拠点・多市場にまたがるNafoodsの複雑な農業バリューチェーンに対応したDX戦略の策定と実行を一貫して支援する。
今回のプロジェクトでは、SAP S/4HANA Public Cloudを経営の中核基盤として導入し、グループ全体のデータを一元管理する体制を整備する。これにより、経営の可視性と意思決定の迅速化を図る。あわせて、FPT Smart Farm(農地・生産データをデジタル管理する農業向けプラットフォーム)を導入し、圃場、生産、物流、市場情報をリアルタイムで把握する。これにより、生産履歴の追跡、需給予測、サプライチェーン全体の最適化を実現する。
今後は、SAP Analytics Cloudや、FPT独自の経営管理、温室効果ガス排出量管理などのデジタルソリューションを段階的に統合し、データドリブン経営を強化する方針である。併せて、デジタル経営やAI活用に関する人材育成を進め、社内DX人材の内製化を図る。
同提携によりNafoodsは、農業バリューチェーン全体を貫くデジタル基盤を確立し、国際市場での競争力向上と持続可能な成長を目指すとしている。
PV GASがShellとLNG長期供給契約を締結(1月9日)
PV GAS(ベトナム国営エネルギーグループPetrovietnam傘下のガス事業会社)は、Shell(英国・オランダ系世界最大級エネルギー企業)と2027~2031年の5年間を対象とするLNG長期供給契約を締結したと発表した。契約数量は年間約40万トンで、輸入拠点はPV GASが運営するチーバイLNG基地である。
同契約は、PV GASにとって初の本格的なLNG長期契約であり、これまで主流であったスポット取引から長期契約へと調達戦略を転換する象徴的な案件である。燃料調達の安定化や価格変動リスクの低減に加え、電力部門の財務安定性向上、地域におけるLNGフローへの影響という点で戦略的意義が大きい。
年間40万トンという調達量は、現在のチーバイLNG基地の処理能力の約40%に相当する。同基地は2023年に稼働を開始し、18万m³級タンク1基と再ガス化設備を備え、周辺のガス火力発電所向けに供給している。Shellは同基地向けの初のLNG供給者であり、2023年7月には初の輸入船が寄港している。
PV GASは今後、チーバイ基地の処理能力を年間300万トン規模へ拡張する計画を掲げており、長期かつ定期的なLNG調達体制の構築を進める方針である。
Petrovietnamグループ内では、PV GASがガス燃料供給を担い、発電部門のPV PowerがLNG火力を運営する分業体制が構築されている。両社はすでに、ニョンチャック3・4発電所(ベトナム南部の新設LNG火力発電所)向けに2025年から25年間のLNG供給契約を締結しており、当初5年間は年間約5.3億m³の供給を予定している。
ベトナムのLNG輸入量は依然として小規模ながら増加基調にあり、2024年は約4億m³、2025年は約5億m³に達すると見込まれている。今回の長期契約への移行は、スポット価格の変動リスクを抑制し、最終需要家であるガス火力発電所の燃料コスト安定化にも寄与するとしている。
ベトナムのカシューナッツ輸出が初の50億ドルを突破(1月11日)
ベトナム農業・環境省は、2025年のカシューナッツ輸出額が初めて50億米ドルを突破したと発表した。年末にかけての輸出が高水準で推移した結果、年間輸出額は過去最高を更新し、カシューナッツは同国にとって4番目の「輸出額50億ドル超」農産物となった。
2025年はコメ輸出の減少を背景に、カシューナッツの輸出順位が上昇し、コーヒー(約89億ドル)、果物・野菜(約85.6億ドル)に次ぐ第3位の主要農産物輸出品へとなった。輸出数量も76万6,585トンと過去最高を記録し、前年比5.7%増となった。一方、原料用生カシューナッツ輸入量は約290万トン、輸入額は45億ドルに達したものの、輸出超過は7億ドル超を確保している。
市場別では、中国が輸出額11億1,500万ドルで初めて米国を抜き最大市場となった。米国は9億7,500万ドルで第2位、オランダが4億9,500万ドルで第3位に続いた。
VINACAS(ベトナム・カシューナッツ協会)によれば、中国向け輸出の急増は、同国経済の回復や健康志向食品の需要拡大に加え、ベトナム企業の取引要件への対応力向上が背景にある。一方、米国向け輸出は減少傾向にあり、2025年4月以降、米国が相互関税の導入方針を示したことで、関税リスクを懸念する輸入業者が調達を控えたことが影響した。米国は過去10年以上にわたり最大市場であっただけに、業界にとって無視できない変化となっている。
こうした中、付加価値の高い加工カシューナッツの輸出拡大が重要な戦略として浮上している。米国市場では未加工品の輸入が減少する一方、加工品の需要が増加しており、ベトナムはインド、タイ、カナダと並ぶ主要供給国として存在感を強めている。
2025年の実績は、カシューナッツ産業が量・価値の両面で成長段階に入ったことを示しており、今後は市場の多角化と加工高度化が持続的成長の鍵になるとしている。
ベトナム農業・環境省がドリアンの生産標準化とトレーサビリティ強化を発表(1月12日)
ベトナム農業・環境省は、主力輸出品目であるドリアンの持続的成長に向け、生産標準化と品質管理の高度化、トレーサビリティ強化を推進する方針を示した。
2025年の青果輸出額は約86億ドルと前年比約20%増となり、ドリアンは約40億ドルと全体の40〜45%を占める主力品目である。2026年も戦略的輸出品目として位置付けられる一方、輸入国側では残留農薬や重金属、原産地証明に関する技術的規制が一段と厳しくなっている。
課題としては、農薬残留や重金属、特にカドミウム管理が挙げられる。土壌・灌漑水・肥料由来の汚染が果実に蓄積するリスクがあり、輸出停止などの障害につながりかねない。このため、地域区分や定期検査、リスクマップ整備など、上流工程での管理が不可欠とされる。また、病害虫対策ではIPM(総合的病害虫管理)や生物資材の活用を進め、化学農薬依存を抑えつつ品質と信頼性の向上を目指す。
トレーサビリティ分野では、同省がドリアンを対象に「ベトナム農産物トレーサビリティシステム」の試行導入を進めており、園地から収穫・選別・包装・輸出に至るまでのデータを標準化・デジタル化し、違反リスクの低減と国際基準への対応を狙う。企業側でも、買い付け中心から、産地での技術指導や栽培記録管理、栽培地域コード維持を含む連携モデルへの移行が進む。
2026〜2030年は制度整備と拡張の段階とされ、2026年後半以降は主要農産物へ適用拡大を計画している。将来的にはAIを活用した監視や早期警戒システムの導入も視野に入れる。ドリアン産業は、「量」から「質」へと転換し、長期的な輸出競争力の確立が求められる局面に入っている。
Viettelが海外投資7市場で首位を確保(1月14日)
Viettel(ベトナム最大手の通信・テクノロジー企業)は、海外投資先10カ国のうち7市場で首位を獲得し、国際市場での成長を維持していると発表した。
2025年の同社の海外売上高は33.4億米ドルとなり、海外事業で9年連続の2桁成長を記録した。海外のモバイル契約数は5,600万件となり、国内契約数を上回った。首位を獲得した市場は、Unitel(ラオス)、Metfone(カンボジア)、Mytel(ミャンマー)、Telemor(東ティモール)、Lumitel(ブルンジ)、Natcom(ハイチ)、Movitel(モザンビーク)である。
海外投資の収益性も改善し、2025年に海外市場からベトナムへ還流したキャッシュフローは3億8,550万米ドルで計画比120%を達成した。2025年末時点で海外投資の回収率は91%となり、目標より前倒しで進捗している。加えて、難市場とされるペルーでは子会社Bitelが世界的通信大手との競争下で2位へ浮上し、目標より2年早く達成した。
同社の海外展開は、先進国の成熟市場ではなく、通信インフラが未整備で成長余地の大きい新興国を優先する点に特徴がある。ハイチでは2010年の大地震直後から投資を継続するなど、短期収益ではなく長期コミットメントを重視する姿勢を示した。また、MetfoneやUnitelなど各国ごとにブランドを構築し、料金体系やサービスを現地ニーズに合わせる「ローカライゼーション戦略」を推進している。通信サービスに加え、電子決済、電子政府、教育・医療のオンラインサービスなどデジタルプラットフォームも展開し、生活インフラとしての価値提供を強めている。さらに、現地に技術者や人材を派遣し、政府・パートナーと連携しながら持続的な運営体制を構築してきた。社会貢献活動も並行して進め、教育・医療・デジタルインフラ分野での取り組みが評価される例もある。
Viettelは2030年までに「グローバル技術企業」へ成長する方針を掲げ、2026年は「より主体的に、より迅速に、より大胆に、より効率的に」を行動指針とし、顧客・社会・国家への貢献を伴う持続的成長を目指すとしている。
CRRC大連がベトナム・フーコックLRT向け車両供給を受注(1月15日)
CRRC大連(中国大手鉄道車両メーカー)は、Sun Group(ベトナム大手民間コングロマリット企業)と、フーコック島におけるLRT(都市型ライトレール)向け車両の購買契約を締結したことを発表した。契約に基づき、CRRC大連はフーコック都市鉄道LRT向けに専用設計の車両14編成を供給する計画である。
同案件は、2027年に開催予定のAPEC(アジア太平洋経済協力会議)を見据えた重要インフラプロジェクトと位置付けられている。フーコック特区で進められる都市鉄道フェーズIに相当し、APEC会場関連施設へのアクセス強化を目的とする。
路線はフーコック国際空港とAPEC会議・展示センターまでを結び、南部の観光・リゾート・娯楽エリアとも接続する計画である。沿線開発ではTOD(公共交通を軸に都市開発を進めるモデル)を活用し、都市空間の形成と新たな成長エンジンの創出を図る。フーコックはベトナムで初めてLRTを導入する都市となり、省エネ・環境配慮型の公共交通モデル構築を掲げる。
供給車両はフーコックの地域特性に合わせた専用仕様とされ、景観を意識した視界最適化の窓設計、大型手荷物ラックの設置、海風・塩害を想定した耐腐食仕様などを採用する。CRRC大連は、短納期での供給体制と品質・ローカライズ設計の両立が特徴である。Sun Groupは、同社の技術提案や保守・メンテナンス計画を評価しており、将来的な追加案件での協業可能性もあるとしている。
CRRC大連は、CRRC(中国国有の鉄道車両大手グループ)傘下の車両メーカーであり、ディーゼル機関車、電気機関車、新エネルギー機関車、DMU/EMU、都市交通車両、250km/h未満の高速鉄道車両など幅広い製品群を展開している。同社の製品は世界33の国・地域で運行実績があり、ラオスやマレーシアなどの越境鉄道プロジェクトにも参画してきた。また、中国側から中越鉄道連結プロジェクト(ラオカイ〜ハノイ〜ハイフォン線を含む)の車両供給を主導する企業としても位置付けられている。
今後CRRC大連は、ベトナム国内の国家鉄道・都市鉄道プロジェクト推進に向けた連携を進めるとともに、風力・太陽光などのクリーンエネルギー分野での協業拡大や、現地の保守拠点の整備可能性についても検討を進めるとしている。

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