イギリスのGDPは、ヨーロッパではドイツについで2位の経済規模があり、ヨーロッパの中でも日本人や日系企業が多い国である。イギリスは、2016年の国民投票で欧州連合(EU)からの離脱を決定し、2020年にはEU単一市場および関税同盟からの脱退プロセスを完了した。その結果、当初はEUとの貿易が減少し、さらに同年には新型コロナウイルスの感染拡大によりGDP成長率が鈍化したが、経済活動の再開とともに回復を見せた。イギリスの産業構造は三次産業が大部分を占めており、特に不動産業や専門サービス業を中心に、比較的順調に成長している。近年の貿易の傾向は、輸出額、輸入額ともに増加傾向にあり、中国との貿易額が増大している。
EU離脱や新型コロナウイルスの感染拡大により、イギリスの社会や経済にはさまざまな変化が生じており、その動向を的確に把握することが必要である。日系企業がイギリス進出を検討する際に、市場動向や製品・サービスのニーズ、参入企業の状況、流通チャネル、価格動向等の市場に関する情報の把握は不可欠である。また、業界によって、ニーズや課題は異なるため、業界動向調査・ニーズ調査をしっかり行うことが重要である。マーケティングリサーチの方法としては、インターネットで情報を収集することもできるが、インターネットだけでは得られない情報も多くあり、イギリスの市場を十分に理解するためには、現地企業や消費者へのヒアリングが必要な場合も多くある。
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イギリスの2023年の名目GDPは世界銀行のデータによると3兆3,808億ドルで、世界第6位、ヨーロッパ地域でもドイツに次ぎ第2位の経済規模である。2013年以降は年率2%程度の成長率を記録しており、2019年には2兆8,500億ドルに達した。2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響でGDP成長率はマイナス10%となったが、2021年のGDPは力強い回復を見せた。一人当たりのGDPも、新型コロナウイルス感染拡大以降は上昇傾向にあり、2023年の一人当たりのGDPは、49,463ドルとなった。
イギリスの失業率は、イギリス国家統計局のデータによると2014年の6.2%から2019年の3.8%まで減少傾向が続いたが、2020年は新型コロナウイルス感染拡大の影響で4.6%に上昇した。2022年から2024年までの失業率は平均4.1%である。
GDPの内訳は他の先進国と同じく個人消費が大きな割合を占めており、全体の60%以上となっている。次いで政府支出が約21%、投資支出が約18%である。新型コロナウイルス感染拡大の影響により、2020年はイギリスのGDPおよび個人消費はともに減少したが、2021年に個人消費はコロナ禍前の水準に回復している。
イギリスの人口は、国家統計局のデータによると2013年には約6,410万人であったが、2023年の推計では約6,830万人に増加している。一方で出生率は低下が続いており、2023年には1.56であったことから、この人口増加は移民によるものが大きく影響していると推測される。年代別の人口の構成比は、66歳以上の人口がやや増加しつつあるものの、全体として大きく変化はしていない。
イギリスの産業別のGDPは、国家統計局のデータによると2022年は、一次産業が約0.7%、二次産業が約19.2%、三次産業が約80%を占めている。2013年から2022年の間の二次産業のGDPの伸び率は約32%であったが、三次産業のGDPの伸び率は約50%であった。金額ベースで見ると、2022年の二次産業のGDPは2013年と比較して約1,060億ポンドの増加であったが、三次産業のGDPは6,070億ポンド増加しており、三次産業の成長がイギリスの経済全体に与える影響の大きさがうかがえる。
2022年の各産業のGDPをさらに業種別にみると、二次産業のGDPの中では建設業の比率が約31.7%であり、製造業が68.3%である。2013年から2022年の間の建設業のGDPの伸び率は約52%に対して、製造業の伸び率は約25 %である。また、三次産業のGDPの中では、配送・運輸・外食・ホテル業の比率が最も高く約20.8%、専門サービス業が約16.6%、不動産業が約16.1%となっている。2013年から2022年の間のGDPの伸び率では、不動産業が68%、専門的サービス業が65%、金融・保険業が63%、建設業が52%と高い伸び率を記録している。過去30年間で製造業は減少し、サービス産業は増加している。特に高い伸び率となった不動産業は、EU離脱問題を受けてのポンド安により、国外からの不動産投資が増加したことによる住宅価格の上昇の影響が大きいとみられる。また、専門的サービス業は、最大の産業の一つであり、2024年にイギリスの登録企業全体の15.3%を占めている。
イギリスへの海外直接投資額は、2021年を除いて毎年前年比で減少している。国家統計局のデータによると2013年から2015年までは150億ポンドから330億ポンド程度で推移していたが、2016年にEU離脱に向けての国民投票が行われると、約1,900億ポンドに急増した。この要因としては、いくつかの高額合併・買収が挙げられる。特に海外企業による買収はそれぞれ100億ポンドを超える規模であった。これには、ビール会社SABミラー社の790億ポンドの買収と、半導体メーカーARM社の240億ポンドの買収が含まれる。2017年からの減少は、イギリスのEU離脱、新型コロナウイルス感染拡大、世界的な景気後退、そしてそれに伴う投資活動の混乱に起因すると見込まれている。2023年の業種別の海外直接投資額を見ると、製造業では食品・飲料・タバコ製品と石油・石油精製、三次産業では卸売・小売業と専門的サービス業が引揚超過となっている。
イギリスの2024年の輸出額は、歳入関税局のデータによると約3,930億ポンドで、輸入額は約6,270億ポンドであり、2,340億ポンド程度の貿易赤字を計上している。貿易赤字は2017年から2024年まで続いている。国別では輸出入ともにアメリカ、中国、ドイツ、オランダが上位4か国であり、輸出額はアメリカ、輸入額ではドイツがそれぞれトップとなっている。イギリスの輸出の40%程度、輸入の50%程度をEU加盟国が占めている。イギリスとEUの貿易関係は、EU離脱を経て大きな変化があった。現在、イギリスはEUの単一市場や関税同盟の外にあり、物品の貿易には一定の条件下で関税が免除されているものの、非関税障壁は以前より高くなっており、EUとイギリス間の物品貿易はEU離脱前の水準を下回っている。また、2020年以降、新型コロナウイルス感染拡大、ウクライナ紛争、グローバルサプライチェーンの混乱といった他の要因も、イギリスとEUおよびその他の国々との貿易が複雑化し、貿易額の変動が大きくなっている。2023年の品目別ではStandard International Trade Classification(SITC)による分類で、輸出入ともに金、自動車、原動機、石油・石油精製品などが金額ベースで上位の取扱品目となっている。
2024年の対日貿易は、歳入関税局のデータによると日本からの輸入額が約87億ポンド、輸出額が約59億ポンドである。対日貿易赤字は28億ポンドとなっている。2023年の日本への主な輸出品目としては原動機、自動車、医薬品などで、日本からの主な輸入品は原動機、自動車、電機、原動機、電気機器などである。
日本の外務省のデータによると2023年時点の日系企業のイギリス拠点数は928拠点であり、在英邦人数は64,970人である。日系企業の拠点数はヨーロッパではドイツに次ぐ2位である。イギリスに拠点を置く日系企業の拠点数は2014年から2019年の間に減少し、1,084社から951社となった。この減少の大部分は、2016年のイギリスのEU離脱に起因している。それ以降も、減少傾向にあり、2023年にイギリスの日系企業は928拠点となった。
2021年の製造業の拠点数は336拠点であり、非製造業の2021年の拠点数は582拠点である。2021年の非製造業の拠点数の構成比は卸売・小売業が28%、金融・保険業が14%、運輸・郵便業が9%、情報通信業が8%である。
2024年、日系企業は英国への投資を活発に行い、特に住宅、エネルギー、製造業などの分野で注目すべき動きが見られた。また、今後も英国と日本は新たなパートナーシップを結び、さらなる成長を遂げると見られている。
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