ベトナム経済ニュース:2026年8月後半

Vietjetがフィリピン・タイ・日本向け新路線を開設し国際ネットワークを拡大(8月17日)
Vietjet(ベトナムの格安航空会社)は、フィリピン、タイ、日本を結ぶ新路線を開設し、東南アジアを中心とする国際線ネットワークを拡大すると発表した。
フィリピンでは、ホーチミン―セブ、ハノイ―セブ、ホーチミン―クラークの3路線を新設し、それぞれ週3往復で運航する。新路線により、ベトナムとフィリピン間の観光・ビジネス需要への対応を強化する。
タイでは、ホーチミン―チェンマイ直行便を週4往復で運航する。飛行時間は約2時間で、ベトナム南部からタイ北部へのアクセスを拡充する。また、日本向けでは、12月20日からダナン―大阪(関西)線を週4往復で新設し、ベトナム中部と日本を結ぶ国際線ネットワークをさらに拡大する。
国内線では、ダラットとハノイ、ホーチミン、ハイフォン、ビン、ダナンを結ぶ各路線の運航を再開する。Vietjetは、新たな国際路線の開設と国内線の再開を通じて、年末の旅行需要を取り込み、ベトナムとアジア主要都市間の観光・商流の拡大を図るとしている。
QualcommがSwinburne Vietnamと提携、ハノイに「Qualcomm x Arduino Innovation Lab」を開設(8月20日)
Qualcomm(米国の半導体・通信技術大手)は、Swinburne Vietnam(ベトナムの大手ITサービス企業FPT傘下の国際大学)と協業に関する覚書を締結し、ハノイに東南アジア初となる「Qualcomm x Arduino Innovation Lab」を開設したと発表した。
同ラボは、学生が最新技術を実際に活用し、IoT(モノのインターネット)、組み込みシステム、AIoT(AIとIoTを組み合わせた技術)、ロボティクス、スマートオートメーションなどの分野でプロジェクトを開発するための実践的な学習・研究拠点である。QualcommとArduino(電子機器の試作・開発向けオープンソースプラットフォーム)の技術支援を受け、大学の教育基盤と産業現場で使用される技術プラットフォーム、開発ツール、技術リソースを組み合わせる。
また、FPT社も実務導入のノウハウや最新の技術課題、ビジネス活用に関する知見を提供し、大学と企業の連携を強化する。同ラボでは、アイデア創出からプロトタイプの開発、試験、完成まで一連の技術開発プロセスを支援し、学生や研究者が革新的なアイデアを実用的なソリューションへ転換する能力を養う。Swinburne Vietnamは、教育、研究、イノベーション、技術ソリューション開発の連携を強化し、企業の実際の需要に対応できる実践的なテクノロジー人材の育成を目指すとしている。
Nestlé Vietnamが高付加価値コーヒーの輸出生産能力を強化(8月21日)
Nestlé Vietnamは、ドンナイ省のNestlé Tri An工場で、インスタントコーヒーをガラス瓶に充填・包装する新たなガラス瓶包装ライン(Jar Line)の稼働を開始したと発表した。
Jar Lineは、原料受け入れから完成品までを高度に自動化した一貫生産方式を採用している。NESCAFÉ GOLDやNESCAFÉ Classicなど複数の商品に対応し、市場ごとに異なる包装仕様を柔軟に生産できる。稼働初期の生産能力は1日35万本超であり、ベトナム国内のインスタントコーヒー生産・包装能力を大幅に拡大する。
同ラインはNestlé Tri An工場のDXの一環でもある。センサー、カメラ、リアルタイムデータ管理システムを導入し、生産工程を継続的に監視することで、データに基づく迅速な意思決定と運営効率の向上を図る。
品質管理では、充填前のガラス瓶を検査するスマートカメラ、高感度金属検出装置、電磁誘導によるシール技術、最終工程での産業用X線検査システムなどを導入し、製品品質と食品安全を確保する。
同ラインで生産するガラス瓶入りインスタントコーヒーは現在11カ国・地域へ輸出されており、今後さらに輸出先を拡大する計画である。これにより、Nestlé Tri An工場はNestléの世界的なコーヒー生産・供給ネットワークにおける役割を一段と高める。
Nestlé Vietnamは設備投資と並行し、高度技術人材の育成も進めている。稼働前にはベトナム人エンジニアや従業員が英国、スペイン、オーストラリアで研修を受け、国際専門家とともに設備設置、試運転、工程標準化に参加した。現在では、現地チームがNestléのグローバル基準に基づき独立してラインを運営できる体制を整えている。
また、包装材、原材料、物流、設備保守、品質検査などの分野で国内企業との協業機会も拡大する。これにより、ベトナム企業の高水準なサプライチェーンへの参画を促し、地域産業の競争力向上につなげることを目指している。
FPTがPVFCCo-Phu Myの工場にDigital Twinを導入、設備・運転データを一元管理(8月22日)
FPT(ベトナムの大手ITサービス企業)は、PVFCCo-Phu My(Petrovietnam傘下の肥料・化学品メーカー)と、Dam Phu My工場におけるDigital Twin(現実の設備・空間をデジタル上に再現する技術)の導入を完了したと発表した。
同システムは2026年6月中旬から運用を開始しており、工場空間、設備資産、技術資料、運転データを一つのデジタルプラットフォーム上に統合することで、運転、保守、安全管理、教育などを支援し、データに基づく工場運営の高度化を進める。Digital Twinでは、尿素、アンモニア、NPK、CO2、Utility(工場の電力・水・蒸気などの供給設備)、UFC、生産品出荷エリア、倉庫、オフィスなどの工場空間を360度画像でデジタル化した。
各エリアや設備にはtag(情報をひも付ける識別項目)を設定し、設備情報、カタログ、技術図面、マニュアル、保守・修理・安全関連情報などを直接参照できる。さらに、静的データに加えてリアルタイムデータも接続し、設備の位置から技術仕様、保守履歴、運転状況などを一元的に確認できる。これにより、複数のシステムや資料から情報を個別に検索・照合する作業を減らす。
「Digital Twin 360」は、3D・360度空間管理、設備・データの可視化管理、コミュニケーション・共同作業、外部システム連携の4つの主要機能で構成される。また、FPTは運転、技術、管理担当者向けの研修も完了し、現場側でシステムを自主運用できる体制を整えた。
今回の導入完了により、同工場のDigital Twinは構築段階から実運用段階へ移行し、PVFCCo-Phu Myは資産管理、データ活用、部門間連携を高度化し、DXをさらに進めるとしている。
ACBとVINASMEがSME支援で提携し金融・デジタル・市場資源の連携を強化(8月25日)
ACB(アジア商業銀行、ベトナムの民間商業銀行)とVINASME(ベトナム中小企業協会)は、中小企業や個人事業者の成長支援に向け、金融、テクノロジー、知識、市場、パートナー網を連携する覚書を締結したと発表した。
今回の提携は、企業への資金供給を円滑化し、特にSME(中小企業)の資金アクセスを改善するという政府方針を具体化する取り組みである。ベトナムでは民間経済が重要な成長エンジンと位置付けられている一方、SMEや個人事業者は資金、技術、データなどへのアクセス面で依然として課題を抱えている。ACBはこれに先立ち、SMEや優先分野向けの融資プログラムを拡充し、通常より年1%以上低い金利を適用することで、企業の資金調達を支援している。
協定に基づき、ACBとVINASMEは長期的な協力枠組みを構築し、SME向け金融商品・サービスへのアクセス拡大に加え、経営能力の向上、DX(デジタルトランスフォーメーション)、イノベーション、持続可能な経営を支援する。
デジタル分野では、デジタルプラットフォームの連携、電子決済、企業管理、電子インボイスなどの導入を進める。また、企業経営、財務管理、リスク管理、DX、テクノロジー活用に関する研修、コンサルティング、知識共有も実施する。
市場開拓では、両者の会員・顧客・パートナーネットワークを活用し、商談促進、サプライチェーン接続、FDI(外国直接投資)企業や国内外の企業ネットワークとの連携を強化する。これにより、SMEの事業機会拡大とバリューチェーンへの参画促進を図る。
さらに、ESG(環境・社会・ガバナンス)やグリーンファイナンスに関する知識・実践能力の向上も支援し、国内外市場で高まる持続可能性基準への対応を後押しする。
ACBは、銀行の役割を単なる資金供給にとどめず、企業が必要とする資金を適切な時期・分野につなぐことが重要としている。VINASMEとの提携を通じ、金融、技術、知識、市場を一体的に結び付け、SMEの競争力向上と持続的な成長を支援するとしている。
BSRがズンクワット製油所の増強・拡張に向けEPC契約を本格実施(8月26日)
BSR(ベトナム精製・石油化学総公社、Petrovietnam傘下の石油精製企業)は、Dung Quat製油所の増強・拡張プロジェクトについて、EPC(設計・調達・建設)契約の本格実施に向けた準備を開始したと発表した。
BSRはChengda-BPE共同企業体(中国のEPCエンジニアリング企業連合)とEPC契約を締結した。同プロジェクトでは、Dung Quat製油所の処理能力を日量14万8,000バレルから17万1,000バレルへ引き上げる。あわせて、原油処理の柔軟性向上、EURO V(欧州の排出ガス・燃料品質基準)に対応する製品の生産、政府のロードマップに沿った環境要件への対応、投資効率の向上を目指す。
各社は「One Team, One Goal – Safe. On Time. Together」を共通方針とし、安全、工期、予算、技術要件を主要な管理目標に設定した。安全・品質を最優先とし、契約上の品質基準を順守するとともに、労働災害や重大事故を発生させないことを目標とする。工期では、承認済みの主要マイルストーンを達成し、初期検収を契約予定より1カ月前倒しすることを目指す。コスト面では契約価格の範囲内で厳格に管理し、投資効率と資源利用の最適化を図る。また、試運転、操業開始、人材・能力開発にも定量的な目標を設定する。
BSRは、人員・資源の早期投入や政府機関との調整を進め、クリティカルパスに関わる書類や課題への迅速な対応を進めるとしている。
Mao Khe Coalがクアンニン省で年産250万トンの石炭選炭工場を着工(8月27日)
Mao Khe Coal – TKV(ベトナム石炭鉱産グループ、国有の石炭・鉱物資源企業TKV傘下の石炭採掘会社)は、クアンニン省Mao Khe地区で、年産250万トンのMao Khe石炭選炭工場建設プロジェクトを着工したと発表した。
同事業は、クアンニン省の中央直轄市移行を記念して同時着工された23件の重点プロジェクトの一つである。原炭の受け入れから製品出荷までを一体的に整備し、最新の選炭技術と集中監視・制御システムを導入することで、環境負荷の低減と生産効率の向上を図る。工場は2028年から稼働を開始する予定であり、稼働後は3,820億ドン超の財政収入への貢献が見込まれるほか、約115人の雇用と安定した所得を維持する。
TKVは、同プロジェクトをグループ再編方針および国家エネルギー計画を具体化する事業と位置付け、国家エネルギー安全保障における同社の役割を強化する。建設にあたっては、工期、コスト、品質を厳格に管理するとともに、労働安全、防火・消防、環境保護に関する規定を徹底する。早期に設計能力での稼働を実現し、投資効率を最大化する方針である。
今回の着工を通じ、TKVは石炭の選別・加工拠点を集約型、統合型、近代型へ転換し、製品の付加価値向上と資源利用効率の改善を進める。これにより、石炭産業の持続可能な発展とクアンニン省の経済成長への貢献を目指す。
Samsung Electronicsがベトナムで携帯電話の累計輸出額5,000億ドルを達成、R&D・高度技術拠点へ転換(8月27日)
Samsung Electronicsは、ベトナムのバクニン省とタイグエン省にある携帯電話生産法人の累計輸出額が5,000億ドルに達したと発表した。
同社によると、2009年4月にベトナムで携帯電話の生産を開始してから17年を経て、2026年6月末に累計輸出額5,000億ドルを達成した。2025年末時点のベトナムへの累計投資額は240億ドルであり、投資規模も継続的に拡大している。ベトナム政府は、Samsungが製造、輸出、雇用創出、経済・社会発展に貢献し、ベトナムを同社のグローバルバリューチェーンにおける主要生産拠点へ発展させたと評価している。
一方、ベトナムは今後のFDI(外国直接投資)政策について、単なる資本誘致から、高度技術、高付加価値、国内企業への波及効果を持つ戦略的投資の誘致へ転換する方針であり、半導体、AI、データセンター、R&D、イノベーション、DXを重点分野としている。政府はSamsungに対し、ベトナムを従来の「生産拠点」から「技術・R&D・イノベーション拠点」へ高度化するよう要請した。これに伴い、R&D投資、大学・研究機関との連携、高度技術人材の育成、技術・経営ノウハウの移転に加え、ベトナム企業のSamsungグローバルサプライチェーンへの参入拡大も求めている。
Samsungは、ハノイのR&Dセンターを中心にベトナムの主要大学との連携を拡大し、先端技術分野へのR&D投資や高度技術人材の育成支援を進めるとともに、商工省と連携した支援プログラムを通じて現地企業のサプライチェーン参入を後押しする方針としている。
TKVがNhan Coアルミナ工場の年産120万トンへの増強計画を推進(8月28日)
TKV(ベトナム石炭鉱産グループ、国有の石炭・鉱物資源企業)は、Nhan Coアルミナ工場の拡張・能力増強プロジェクトについて、事業化調査の検討を進めたと発表した。
同プロジェクトはAグループ・第I級工事に分類され、Nhan Coアルミナ工場に第2生産ラインを整備し、年間120万トンのアルミナ(アルミニウム製錬用の中間原料)生産能力を確保する計画である。製品はアルミニウム電解向けの砂状アルミナで、国内市場と海外市場への供給を想定する。主要設備には、アルミナ生産ライン、エネルギー設備、石炭ガス化設備、乾式赤泥(アルミナ製造時に発生する残渣)の処理・貯蔵システム、給水設備、110kV送電線などを含む。
生産には既存工場と同様に低圧溶解型Bayer法(ボーキサイトからアルミナを精製する製法)を採用するとともに、最新技術を導入して生産効率を高め、原燃料消費と排出量を削減する。第1期で整備した既存インフラを最大限活用し、2つの生産ラインの連携、熱・水・アルカリの回収、設備運営の自動化も進める。
TKVは同事業を鉱物・製錬分野の成長戦略における重要プロジェクトと位置付け、法的条件、技術・設備の選定、原料供給、水・電力・石炭の確保、環境対策、投資額、収益性、事業スケジュールなどを重点的に検討する。既存インフラを最大限活用しながら適切な技術を選定し、安全性、効率性、環境負荷の管理を確保することを目指すとしている。