日本とは違う韓国の栄養成分表示

韓国の栄養成分表示にカフェインの総量が記載されるようになったきっかけ
韓国の缶コーヒーやペットボトル入りコーヒーなどには、一本を飲んだらどれくらいカフェインを摂取するのかを示す総カフェイン量と、高カフェインを注意させる説明が記載されている。これは、2016年にコンビニで販売された、あるコーヒー牛乳がきっかけとなった。韓国の政府機関である食品医薬品安全処は、健康な成人のカフェインの1日当りの摂取量の基準を400mgとし、妊婦は300mg、子供は体重1㎏あたり2.5mgと定めている。そのコーヒー牛乳は、包装に描かれたキャラクターから子供や若年層に人気となったが、1本(500ml)で子供の基準量を超える200㎎強のカフェインが含まれており、子供や若年層の健康に悪い影響を及ぼした。そのため、高カフェインが起こす健康問題が社会的に議論になり、関連法が改正されるきっかけになった。
加工食品における韓国の栄養成分表示
韓国の栄養成分表示制度の法律は「食品等の表示・広告に関する法律」で定められ、国務総理傘下の食品医薬品安全処が施行・改正しており、加工食品は次のような23個の項目で分類されている。
また、韓国の加工食品は9つの栄養成分を表示しなければならない。表示義務がある栄養成分は、1)熱量、2)ナトリウム、3)炭水化物、4)糖類、5)脂肪(脂質)、6)トランス脂肪酸(不飽和脂肪酸の一種)、7)飽和脂肪酸、8)コレステロール、9)タンパク質、10)その他(1日栄養成分基準値に示された栄養成分)である。
食品の成分表示には、含まれる栄養成分の名称・量・一日当りの栄養成分基準値に対する割合(%)を表示しなければならないが、熱量とトランス脂肪酸の場合は一日当りの栄養成分値に対する比率を省略することが出来る。糖類は炭水化物の一部として表示し、トランス脂肪酸(不飽和脂肪酸の一種)と飽和脂肪酸は脂肪の一部として表す。この中で、義務表示栄養成分の一部と食物繊維、ビタミン・無機質に関しては、それぞれの基準を満たしている場合、強調表示が可能である。例えば、低/無、合有/高(豊富)と表示できる。それ以外ライト、少なく、強化、添加等の用語を使うこともできるが、栄養強調表示を行う場合、市場シェア率の高い3つ以上の類似商品を比較対象にしなければならない。また、類似商品より、義務表示栄養成分は25%以上の差、ナトリウム以外のビタミン・無機質は10%以上の差が必要である。例えば、カルシウムを強化した牛乳の場合、市場シェア率の高い牛乳1位、2位、3位の製品を選び、比較対象の牛乳3つよりカルシウムが10%以上多く含んでいなければならない。
韓国におけるカフェインとグルテンの表示
近年注目されている成分であるカフェインとグルテンに関する基準もそれぞれ2016年、2014年に改正された。カフェインの表示は1mlあたり0.15 ㎎以上のカフェインを含む液体食品等を対象にする。製品のよく見える面に「高カフェイン合有」、「総カフェイン合有000㎎」などの説明を追加し、また「子供・妊婦及びカフェインに敏感な方は摂取に注意してください」などの説明を表示することを規定している。
グルテンに関しては、小麦・ライ麦・麦・ライ麦又は交配種の原材料を使用しなかった食品またはグルテンを除外した食品の場合、「無グルテン」と表示できる。なお、グルテンの量が1㎏あたり20㎎以下でも「無グルテン」と表示することが可能である。また、2026年からカフェインとグルテン以外にも、糖アルコールの表示が義務化される予定である。
栄養成分表示における日韓の違い
加工食品の栄養成分表示義務において、日本と韓国の違いがある。日本では日替わり弁当などの、きわめて短い期間で原材料が変更されるものは表示対象から除いているが、韓国ではそのような規定が見られない。また、栄養成分表示義務において日本ではタンパク質、脂質、炭水化物、ナトリウム(食塩相当量で表示)、熱量の5つの栄養成分の表示義務があるが、韓国ではそれに加えて糖類、トランス脂肪酸、飽和脂肪酸、コレステロールを表示する必要がある。栄養強調表示に関しても、日本では比較対象が自由であるが、韓国では市場シェア率の高い3つの類似商品と比較して表示しなければならない。実際、日本は「自社商品比」と表記できるが、韓国では市場シェア率の高い3つの商品と比べなければならず、多くの場合は「他社製品比」として記載する。なお、日本ではカフェインとグルテンの規定はないが、韓国では前記した通り、関連規定がある。
詳細な栄養成分表示の必要性
日本では食品に対する安全意識や健康志向が高まり、消費において重要な要素の一つになっている。実際、日本政策金融公庫の農林水産事業が2024年に行った「食の志向等に関する調査結果」によると、食品において健康に配慮する消費をする、つまり健康志向の消費をすると答えた人は43.2%であり、最も多かった経済性志向の消費と1%の違いしかなかった。ほかにも、カフェインに弱いけどコーヒーが飲みたい、グルテンが多かったら消化できないからグルテンが少ないパンが食べたい、というニーズを持つ人も少なくない。このように、栄養成分に表示されないカフェインやグルテンの情報を詳しく見て選択する消費者がこれから増えていくと考えられる。グルテンを含む、最近注目されている栄養成分を消費者にわかりやすく表記することにより、選択の幅が広がるものと見込まれる。
(2025年12月)
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