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キャッシュレス先進国スウェーデン


世界的に進むキャッシュレス化

 近年、世界各国でキャッシュレス決済が普及し、財布を持たずに外出する人が増えている。一般社団法人キャッシュレス推進協議会によると、G7加盟国におけるキャッシュレス決済比率は2015年時点では40%に満たない国が多かったが、2022年には50~60%台の国が大半を占めており、世界的にキャッシュレスが拡大している。日本のキャッシュレス決済比率は2022年時点で36%と遅れているものの、2024年には42.8%と過去最高を更新し、政府目標である「2025年までに4割」を達成した。

 世界規模でキャッシュレス化が進んだ背景には、スマートフォンの普及とモバイル決済の浸透がある。総務省の調査によると、世界のスマートフォン普及率は2015年の31%から2021年には62%まで上昇している。スマートフォンを利用する人が増えたことでモバイル決済が生活に密着し、現金を使わない消費スタイルが定着した。さらに新型コロナウイルスの拡大により、店頭での接触を必要としない決済手段としてモバイル決済への注目が高まった。感染リスクを抑えるという観点でキャッシュレス決済の利便性と安全性が広く認知され、キャッシュレス決済の導入は加速することとなった。

 このようにスマートフォンの普及や新型コロナウイルスの拡大が相まって、世界規模でキャッシュレス化は進んでいる。さらに、キャッシュレス化は人手不足の解消や現金調達コストの削減などの社会課題を解決する手段としても注目されている。本コラムでは、こうした世界的な流れの中でキャッシュレス化を先導する国の一つであるスウェーデンを取り上げる。スウェーデンのキャッシュレス決済比率は2022年時点で47.5%となっており、8割を超える中国や韓国と比較するとそれほど高くない。しかし、この数字にはスウェーデンで活発な送金アプリでの取引が一部含まれておらず、実際のスウェーデンは現金の利用がかなり減少しており、キャッシュレス化が急速に進んでいる国である。

現金が消えた国スウェーデン

 スウェーデンは世界でもトップクラスのキャッシュレス国家である。スウェーデン中央銀行(リスクバンク)が2020年に行った調査では、「過去1か月間に現金を一度も使用しなかった」と回答した人の割合が50%を超えており、国民の多くが日常的に現金を使わずに生活している。

 スウェーデンでは、クレジットカード、デビットカード、モバイル決済などが主に利用されている。特に急増しているのは「Swish(スウィッシュ)」というモバイル決済であり、2020年時点で国民の7割以上が利用している。

 街中では「現金お断り」の看板を掲げる店も多く、公共交通機関においても現金が使えないケースが増えている。さらに、リスクバンクは2016年から中央銀行デジタル通貨である「eクローナ」のプロジェクトを開始しており、現金からデジタル通貨への移行も視野に入れている。このようにスウェーデンでは、現金からキャッシュレス決済への移行が急速に進んでいる。

 

スウェーデンでキャッシュレス化が進んだ背景

 スウェーデンでキャッシュレス化が進んだ背景の一つには、国民の高い金融リテラシーやデジタル決済への適応力がある。スウェーデンでは、子どもが両親の作った口座を自分用として保有し、幼少期からデビットカードを利用して買いものをすることが一般的である。日常的にキャッシュレスに触れる環境が整っており、お金の使い方や銀行の仕組みについての理解が進んでいる。その上、義務教育の中でも金利や負債、家計に関する内容が教えられており、金融リテラシーを身に着けるための教育体制が整っている。このような環境があったからこそ、スウェーデンはキャッシュレス化へとスムーズに移行することができた。

 さらに、キャッシュレス化を一気に加速させたのが、Swishの普及である。Swishは2012年にスウェーデンの主要6銀行によって開発された送金アプリであり、各銀行の共通IDと国民番号を紐づけた「Bank ID」という制度を基盤にしている。決済方法は、電話番号と金額を入力する方法とアカウントごとに割り当てられたQRコードを読み取る方法の2つがある。Swishのメリットは、他行間であっても無料で送金が可能である点で、これはSwishのビジネスモデルが法人からの手数料を主要な収益源としているためである。店舗での支払いや個人間の割り勘などで利便性が高く、スウェーデン国民に広く受け入れられていき、Swishは急速に国民に浸透した。

 その他にも、現金の輸送・回収による環境負荷を低減する目的や、現金が「不衛生なもの」と認識される文化的背景から、飲食店で現金使用を控える傾向が強まったこともキャッシュレス化を後押しした。このようにスウェーデンは社会全体がデジタル決済に前向きであり、国民の高い金融リテラシーとSwishの普及、文化的側面からキャッシュレス決済が定着していった。

スウェーデンが先進的に導入した決済方法

 スウェーデンではクレジットカードやSwish以外にも多様な決済方法が導入されており、その例として「BNPL(「Buy Now, Pay Later」)」というサービスがある。BNPLとは、ECサイトなどで商品を購入した後、品物を受け取ってから代金を支払うあと払い決済である。クレジットカードと類似したサービスであるが、信用調査が簡易的なことや限度額が利用状況に基づき徐々に増えていくといった点が特徴である。

 BNPL市場で注目されているのが、スウェーデンのフィンテック企業「Klarna(クラーナ)」である。Klarnaは2005年に創業し、現在は世界45カ国でサービスを展開している。同社が提供している支払い方法は複数あり、3~4回の分割払いである「Pay in 3 or 4」や30日以内に支払う「Pay in 30 days」などが無利息で利用できるのが特徴である。支払うタイミングを柔軟に選択できる利便性が評価され、スウェーデンを中心として世界各国で利用が拡大している。

 さらに、最先端の決済方法として「マイクロチップ決済」も話題を呼んでいる。スウェーデン企業「Biohax」は2018年時点で4,000人のスウェーデン人にマイクロチップを埋め込んでおり、手をかざすだけで決済ができる技術を実現させた。スウェーデンではそもそも現金が使えない場所が多いため、スマートフォンや財布を持ち歩かずに決済ができるマイクロチップ決済は、利便性の高い選択肢として注目を集めた。

 日本では人間にマイクロチップを入れる事例はないものの、犬や猫などのペットにマイクロチップを装着し飼い主の情報を登録する制度が導入されている。こうした事例を踏まえると、将来的に日本でもマイクロチップ決済が広がる可能性があるのではないだろうか。

キャッシュレス決済の今後

 世界的な少子高齢化と人手不足の深刻化に伴い、生産性向上の観点からもキャッシュレス化の意義はますます重要視されている。日本では現金に対する高い信頼があるため、依然として現金志向が強いことが課題となっている。キャッシュレス決済においても「チャージ式」が定着しており、現金を使用する機会が多いという現状がある。一方、スウェーデンのキャッシュレス決済は銀行口座から即時に引き落とす方式が一般的であり、現金の利用が極めて少ない。スウェーデンの取り組みをもとに、日本でもキャッシュレス決済と銀行口座との紐づけを推進することで、現金を使わない効率的なキャッシュレス決済を広げることができるのではないだろうか。

 また、今後のキャッシュレス業界では、マイクロチップ決済などの新しい決済方法やデジタル通貨の導入が進むことで、キャッシュレス決済の普及はさらに広がっていくと見込まれる。このような変化をビジネス機会として捉え、キャッシュレス決済における消費者の潜在ニーズを探っていくことが今後ますます重要となっていくだろう。

 

(2026年1月)

 

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