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各国情勢コラム

タイ:砂糖を含む飲料の課税と健康志向が変える飲料市場

コーヒーや緑茶でも甘いタイの飲み物

 タイでコーヒーや緑茶を飲むと、少し意外に感じるかもしれない。タイの飲み物はもともと砂糖が多く含まれており、甘い飲料が日常的な習慣となっている。2011 年から 2022 年までのタイ国民の砂糖消費量に関する調査によると、タイ人は 1 日あたり平均108グラム(ティースプーン26杯分)の砂糖を消費しており、世界保健機関 (WHO) が推奨した 1 日あたり25グラム(ティースプーン6杯分)以下の消費量を大幅に上回っている。なお、2023年の日本人の1日あたりの砂糖の消費量は40グラム程度(農林水産省HP)である。

 2022年には、タイの糖尿病患者は約330万人に達し、現在も引き続き増加傾向にある。この状況を受け、政府は、砂糖の過剰摂取を抑制することを目的に、2017年から砂糖を含有する飲料に対する物品税を導入した。マヒドン大学人口・社会研究所による「タイにおける砂糖を含有する飲料税措置の健康への影響」という研究調査では、この税によって、年間1億2,140万バーツの医療費削減が見込まれている。

砂糖を含有する飲料に課税する「砂糖税」

 砂糖を含有する飲料に対する物品税、いわゆる「砂糖税」は、飲料に含まれる砂糖の量に 応じて課税される。砂糖税の施行には、5年間にわたり民間との協議や適切な税率の検討が行われ、2017年に導入された。

 タイの甘い飲み物に含まれる平均的な砂糖含有量は 100 ミリリットルあたり 9 ~ 14 グラムと非常に多く、主にソフトドリンク、コーヒー、緑茶、エナジードリンク、ヨーグルト、ジュース、豆乳などに含まれている。

 砂糖税は、段階的に税率が引き上げられており、現在第3段階に入っている。例えば、第3段階では、飲料100ミリリットルに対する砂糖含有量 8~10グラム以下の税率は 1 バーツ/リットル(1バーツ=約4円)、10~14グラム以下の税率は3バーツ/リットル、14~18グラム以下の税率は5バーツ/リットルとなる。

 2025年からの第4段階では、税率がさらに引き上げられる予定で、8~10グラム以下の税率は 3(+2バーツ) バーツ/リットル、10~14グラム以下の税率は5(+2バーツ)バーツ/リットル、14~18グラム以下の税率は5バーツ/リットルとなる。

砂糖税の導入に対する企業の対応

 砂糖税の導入により、飲料缶や飲料ボトルあたりの価格が1~3バーツの値上がりとなった。これに対応するために、飲料メーカーは低糖質や糖質ゼロ飲料を増やす、健康志向のトレンドを強調する、小型ボトルを導入するなどの対策を講じている。

 「Suntory」「PepsiCo」などのブランド飲料を販売するサントリー・ペプシコ・ビバレッジ(タイランド)社によると、第 3 段階の砂糖税の課税効果と健康志向の流れが加速したことで、低糖飲料市場は過去 5 年間で 2 倍に拡大し、年間で約 30% の成長を遂げている。同社は、低糖飲料が今後5年間でソフトドリンク市場のシェアを10%から 50% に拡大すると予測している。      

 ソフトドリンク市場のみならず、緑茶市場にも影響が及んでいる。タイの緑茶飲料の多くには砂糖が含まれており例えば、緑茶280 mlのボトルには100 mlあたり 6 ~ 8 グラムの砂糖が含まれている。緑茶飲料メーカーのIchitan Group は、砂糖税に対応するため、飲料の配合を調整し、課税されないレベルまで砂糖を減らした。また、緑茶飲料以外の製品についても糖分ゼロ商品のラインアップを拡大している。 

 この他にも、タイで50年間配合を変えずに販売してきた「ヤクルト」は、新たに糖質を大幅に抑えた「ヤクルトライト」を発売しており、消費者の健康志向に応えている。従来の「ヤクルト」は、糖質17~18%だったが、これを糖質1.75%に削減した製品を展開している。

甘さ控えめな飲み物を飲む健康トレンドに

 砂糖税の導入に加えて、タイ保健省保健局は甘くない飲料を推進するプロジェクトを進めている。このプロジェクトでは、消費者が注文時に甘さレベルを選べるオプションを導入しており、その結果、甘さレベルのオプションを追加する店舗数はプロジェクト開始前と比べて 5 倍に増加した。これらの店舗では甘味を抑えたドリンクメニューの注文割合が最大57%に達した。こうした取り組みは、甘さ控えめな飲み物を選ぶ健康志向の高まりを反映している。

 今後、2025年に砂糖税の第4段階に移行すると、製品価格はさらに上昇する可能性があるが、同時に砂糖を控えた飲料を選ぶ消費者が増えることが予想される。タイの消費者は健康上の利点や栄養価を重視し、食品の供給源にも関心を持つ傾向が高まっている。

今後、タイ政府は塩税(ナトリウム税)の導入を検討

 物品税局は塩分を含む製品への課税、いわゆる塩税(ナトリウム税)のロードマップを策定している。

 この塩税は、栄養価が低いとされるスナック菓子から課税を開始する予定で、同局は現在、民間部門との協議でその実施に関する意見を収集している段階である。塩税の導入に際しては、既に徴収されている砂糖税の事例を参考に、民間部門に適応期間を設ける予定であり、塩税も砂糖税と同様に、各製品に含まれるナトリウム量に基づいて課税される見込みである。なお初期段階では、スナック菓子などの必需品でない食品を対象とし、調味料やインスタントラーメンは現時点で対象外とされている。

 今後、タイでは『砂糖税』、『塩税』の導入と健康志向の高まりにより、これまで以上に低糖・低塩分の食料品・飲料の需要が高まっていくと見込まれる。

(2026年7月)

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