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北欧の教育大国・スウェーデンの今


高校も大学も授業料無償で奨学金制度も充実
 スウェーデンの学校教育は,義務教育の基礎学校(9年)、高校(3年)、大学(学士号取得は通常3年)からなっている。ここで特筆すべきは義務教育の基礎学校だけでなく、高校、大学も授業料無償であることだ。日本でも2010年度から公立高校の授業料無償化が始まっており、また、2017年1月には小池都知事が私立高校の実質無償化に向け、年収760万円未満の世帯を対象に、平均授業料(都内)の44万2,000円を国と都で給付する方針を明らかにしているが、すでに大学授業料までを無償化しているスウェーデンの取り組みは、まさに福祉大国・教育大国の面目躍如といったところだろう。
 しかもスウェーデンでは、学生の居住費や、低収入の家庭の学生の生活資金をカバーする奨学金制度も充実しており、例えば大学生の場合、フルタイムで勉強していれば給付型奨学金約1万円、返済型奨学金を約2万5,000円が毎週支給される。これらは所得水準に関係なく、希望者すべてに支給されるが、1学期間に必要単位の75%を取得しなければ、次の学期は支給されないこととなっているので、このような事態を避けるために学生は一生懸命勉強する。つまり、スウェーデンの奨学金制度は真面目に勉強をしたい学生をサポートする制度になっていると言えるだろう。
 なお、スウェーデンでは、高校は入学試験がなく、希望者全員が進学することができる。大学は入学試験と高校の成績のいずれかによる審査を経て合否が決まるかたちであるが、日本のように高校からダイレクトに大学に進むだけでなく、高校を卒業して一度就職した人が、数年後、大学に入学するといったケースも少なくないようだ。

“ゆとり教育”が学力低下につながる
 日本では2002年度の“ゆとり教育”の導入によって生み出された“ゆとり世代”問題が話題となったが、ゆとり度としてはスウェーデンの方が数段上のようだ。
 スウェーデンの基礎学校では、8月中旬から12月のクリスマス休暇までの秋学期と、1月から6月上旬の春学期という2学期制が敷かれている。6月上旬から8月中旬までの約10週間は夏休みであり、その他、2月にはスポーツ休暇、4月にはイースター休暇、11月には秋休暇がそれぞれ1週間、12月には2週間のクリスマス休暇があるため、年間登校日数は日本と比較してり約1ヶ月分短い。しかも夏休みには宿題もないので、子どもたちはノビノビと休暇を楽しんでいるようだ。
 このようにゆとりのあるカリキュラムが影響したのか、教育先進国として有名だったスウェーデンの子どもの学力は低迷。経済協力開発機構(OECD)が2012年に実施した各国・地域の学校に通う15歳の男女を対象に、「読解力」「数学的応用力」「科学的応用力」の3教科を評価する国際学習到達度調査(PISA)では、全3教科の得点がOECD平均を大きく下回ってしまった。2015年のPASAでは3教科とも前回より得点、ランキングが上昇するなど、やや持ち直したようだが、やはり、“ゆとり教育”が学力低下を招くという側面は否めないようだ。

スウェーデンの生涯学習の中心「学習サークル」
 スウェーデンでは「生涯学習」という考え方が浸透しており、学校を卒業した後もさまざまなかたちで学習を行うことが一般的である。その中核となっているのが国や地方自治体からの補助金で運営される学習協会が開講している「学習サークル」だ。「学習サークル」の活動内容は多種多様であり、美術、音楽などの芸術系のサークルを中心に、コンピュータ関連など実務に役立つものまで幅広い分野のサークルが活動している。ちなみに1つの「学習サークル」には通常5~10人が参加。週1回、1回あたり2〜3時間、1シーズンに8〜10週間続けて活動を行うかたちだ。成人の約4分の3が「学習サークル」への参加経験を持つという調査結果もあり、「学習サークル」が日常的な学習の場としてスウェーデン社会に根付いていることは間違いないと言えそうだ。


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