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第二のシリコンバレー、イスラエル


スタートアップ大国・イスラエル
 パレスチナ問題など日本ではネガティブなニュースが報道されることが多いイスラエルであるが、世界有数の技術大国であり、「第二のシリコンバレー」、「中東のシリコンバレー」と呼ばれている。イスラエルの人口は868万人、面積は18,301平方キロメートル(四国は18,301平方キロメートル)と小さな国であるが、毎年多くのスタートアップ企業が生まれ、イノベーションが頻繁に起こっている。これらの企業はグーグルやアップルなど世界の企業から大きな注目を集め、イスラエル企業を対象としたM&Aが数多く行われている。

イスラエルでスタートアップ企業が生まれる理由
 国土も人口も少ないイスラエルで技術力を持ったスタートアップ企業が誕生する背景には、隣国との緊張関係の中で発達した軍事力や教育、イスラエルの人々の気質が関係している。イスラエルは情報技術、医療機器、生命科学、航空宇宙など様々な分野で高い技術力を持っているが、これらの技術は軍事目的の利用のために開発されたものが民間に転用されたものである。
 イスラエルでは情報教育が早い段階から重要視され、1970年代半ばに教育省が「Computing」カリキュラムを開発し、現在ではプログラミングが必須科目となっている。また、男女共に高校卒業後に兵役が課され、優秀な学生は軍の研究機関に配属となり、そこで最先端の研究に触れる。兵役を終えた学生は世界を回るなどして知見を広めた後大学に進学し、大学では更に深く知識を学ぶ。ネゲヴ・ベン=グリオン大学には軍の特殊情報ユニットのメンバーが在籍しており、軍と大学が共同で研究を行っている。隣国との緊張関係が続いているイスラエルでは軍事技術が大きな発展を遂げた。起業家たちはこのように兵役と学びの経験を経て、軍事技術の民間へのスピンオフを図っている。
 また、イスラエルの人々は起業精神が盛んで、失敗を恐れないといわれている。起業した人の中で成功する人は一握りであるが、一度起業して失敗した人が再度企業をするということは当たり前であり、多くの企業が誕生しているのと同時に、多くの企業が無くなっている。イスラエルは国の規模が小さいため、起業家の多くは国内市場ではなく海外市場に目を向けて起業する。しかし、スタートアップ企業は海外市場とのネットワークを持っていないため、技術力を売りに海外企業との提携を目標にする。日本市場にも関心を寄せており、日本企業との提携にも期待を寄せている。イスラエルの起業家は買収されることに日本ほどの抵抗感を抱いてはおらず、売却益を得た起業家は投資家として他の企業に投資をするか、もしくはまた新たに起業をする。

世界でも有数の技術力があるサイバーセキュリティ技術
 先述のようにイスラエルは様々な分野で高い技術力を持っているが、国防に大きく関わるサイバーセキュリティの分野では、世界トップクラスの技術力を誇る。近年では日本でもサイバー攻撃の件数が大幅に増加しており、2017年5月にはランサムウェアを用いた世界的な大規模サイバー攻撃によって国内企業の社内システムにも障害が発生した。このようなサイバー攻撃は国・企業・個人単位で大きな脅威となっており、サイバーセキュリティ技術に対して関心が集まっている。
 サイバー攻撃によって社内システムが被害を受けた日立製作所は2017年8月にイスラエルの企業と提携し、サイバー攻撃に対する訓練施設の開設と事業者向けの防衛訓練サービスの提供を開始した。

医療機器のIoT化にも力を入れる
 度重なる紛争の中で発達した医療技術を民間に転用することで、医療機器開発の分野においても世界の注目を集めている。近年では医療機器のIoT化にも力を入れており、指先など体のごく一部分に医療機器をつけることで血圧や血糖値などを計測し、その結果をサーバー上でグラフ化することによって体調の変化を簡単に”見える化”できる技術などがイスラエルの企業によって開発されている。測定された数値やグラフは必要に応じて医師に送信することができ、自宅にいながら医師とコミュニケーションをとることができる。このような技術は高齢化が進む日本においても有用な技術となる可能性がある。

イスラエルのスタートアップ企業は日本との協力に関心を寄せている
 イスラエルの高い技術力は、質の高い教育と軍事技術の民間へのスピンオフを成功させることによって発展してきた。それが失敗を恐れない気質と交わり、技術力を持ったスタートアップ企業が誕生したといえる。現在、イスラエルの企業は世界から大きな注目を集めているが、中でも日本企業との協力に期待を寄せている。国単位では日本・イスラエル間でビジネス推進のためのネットワーク設置が合意に至っており、2017年6月に開催されたJETRO主催の「日本-イスラエルセミナー」においてイスラエルの企業が講演を行うなど、今後両国のビジネス協力が活発化することが期待される。


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