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アメリカの食品廃棄から考える環境問題


 

フードロス半減を目指すアメリカの現状

 筆者がアメリカで食堂を利用した際に気付いたことがある。そこはビュッフェ形式だったのだが、食器の返却口に食べ残しが乗った皿が大量にあった。日本を含め、世界的に問題となっている食品廃棄・フードロス対策だが、アメリカも例外ではない。米国農務省の発表によると、生産される食料のうち30~40%、金額にして年間約1610億ドル、重量で約603万トンが廃棄されている。米国環境省の試算では一家族当たり年間約1600ドル、一人当たり年間約100キロの食品を廃棄している。また、食品廃棄は環境問題とも密接な関係がある。過剰生産に使われる土地、水資源、焼却する際に発生する地球温暖化ガスなど、その影響は多岐にわたる。
 しかし、一言で食品廃棄といってもその状況は各国で異なる。国連食糧農業機関のデータによると、発展途上国ほど輸送や保存の段階での廃棄が多く、一方先進国では消費段階での廃棄が多くなっている。ReFEDというNPO団体によると、アメリカ全体の食品廃棄のうち、重量換算で80%以上が小売りや消費者レベルで起きているとしている。
 こうした状況を踏まえ、米国農務省と環境保護庁は2030年までに食品廃棄半減を達成することを目指し、2015年に共同でUnited States Food Loss and Waste 2030 Championsと呼ばれるプロジェクトを発足させた。賛同した企業や団体などが自主的に削減プランを設定し、公表することで食品廃棄削減に貢献している。また、2019年から食品廃棄の削減に効果的な技術や、マネジメントに11万ドルの助成を行っている。しかし全米規模での食品廃棄量を削減するには、更なる努力を必要としているのが現状である。

小売・消費者段階におけるソフト面での取り組み

 前述のようにアメリカの食品廃棄問題において大きなウエイトを占めるのが、小売り・消費者などの部分である。そのため農務省は環境保護庁と共同でいくつかの指針を示し、削減を図っている。まず最も重要なのが廃棄される食品を出さないということだ。必要以上に買いすぎない、小売店、家庭での在庫を把握する、賞味期限などを正しく理解し使い切るなどが挙げられる。
 これらを達成するため、民間での取り組みも進んでいる。日本ではあまり見かけないが、アメリカでは外食した際に残したものを持ち帰るのが一般的である。また、Too Good to Goと呼ばれる消費者とレストランや小売店を繋ぐアプリを活用し、消費期限の近い売れ残りを安く消費者へ提供することで、店舗での食品廃棄削減に成功したケースもある。これらの例のように小売・消費者段階ではサービス・ソフト面からのアプローチが多く見られる。
ハード面での日本企業の可能性

 ハード面の改良でも廃棄量削減に貢献できる可能性は十分ある。例として食品容器や包装の改良が挙げられる。日本では様々な企業が包装やパッケージを改良する事により、鮮度や保存期間を延長する試みを行っている。例えばキユーピーはマヨネーズの容器を酸素透過率が低い層と酸素を吸収する層を重ね合わせ、さらに製造工程の見直しにより酸素をできる限り排除することにより、賞味期限を従来の7か月から12か月に延長することに成功した。また、生鮮食品の鮮度を保持することで店舗での廃棄を減らすことも可能だ。住友ベークライトが開発したミクロの穴が開いた独自の結露防止フィルムは、青果物の種類、重量、流通環境等に応じたパッケージの最適化し、青果物の呼吸を抑制することにより、鮮度保持期間の延長や、腐敗ロスの削減を可能にした。
 米国農務省も容器や包装の改善でフードロスを削減することも提案している一方で、現在のアメリカでの食品容器や包装は、生分解性プラスチックやリサイクル性の高いプラスチックを使用するなど、プラスチックゴミの削減に力を入れており、パッケージによる食品廃棄の削減はさほど重視されていない模様だ。こうした中で、容器や包装の分野で高い技術力を持つ日本企業が、環境問題への意識が高まっているアメリカにおいて、これらの技術を活かし、新たな価値を創造していくことも可能と考えられる。
 廃棄される食品を出さないというのが最も効果的な方法ではあるが、サプライチェーンの各部分で様々な理由により、やむなく廃棄してしまうということもあると思われる。こうした廃棄物をメタン発酵によりバイオガスを生成(メタン化)し、生成ガスを燃焼することによって、熱や電気としてエネルギー利用する取り組みが国内外で始まっている。この分野では欧州の企業が強みを持っているが、ある日系企業がアメリカでの実績を残している。カリフォルニア州で2018年から操業している日立造船子会社のHitachi Zosen Inovaの発電プラントは、廃棄食品やその他の有機廃棄物からバイオガス発電をおこなっている。3万トンの廃棄物処理能力がある同プラントでは約600世帯分の電気を供給している。
 また、廃棄される食品を飼料・肥料として再利用する方法もある。前述のフードロス削減への指針においても、廃棄される食品を出さない、まだ食べられるものについてはフードバンクなどへ寄付するといった優先順位の3番目に飼料・肥料化を挙げている。しかし、アメリカでの廃棄食品の再利用を規制する法律は州ごとに大きく異なるのが実情で、一部の州では完全に禁止している。日本企業が参入を目指す際は事前に現地の調査を行い、正確な情報を入手することが重要である。

 フードロスはグローバルな環境問題だが、解決に向けたアプローチは各国によって異なる。小売・消費段階への働きかけが重要となる日本やアメリカなどの先進国では、新たなサービスなどのソフト面に加え、パッケージなどのハード面でもフードロス削減への貢献が期待される。また、前述したように食品廃棄物をメタン発酵してバイオガスを生成し、電気・熱としてエネルギー利用していくことも期待されている。その一方でアメリカでの飼料・肥料化については州によって法律が大きく異なるなど事前の調査が必要な場合もある。各国の実情を理解し、適切にアプローチをすることがビジネス、環境問題双方で成功を収める鍵となるのではないだろうか。

(2020年8月)


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