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遺品を売りに出す?エステートセール


故人の遺品を売りに出す
 アメリカでは故人の遺品を売りに出す、エステートセールという文化がある。
 エステートセールは故人の家を一般公開し、服や家具の他に家までも売りに出す、さながら「遺品のフリーマーケット」としてアメリカでは一般的となっている。また、エステートセールを請け負う業者がおり、それぞれの遺品に価格をつけ、売上の一部を業者の取り分とする形でビジネスとして成り立っている。このような業者は遺族が故人の遺品整理を目的に利用するケースもあれば、一人身の老人が生前に自身の「終活」を目的に利用するケースもある。

エステートセール専門のオークションサイトも登場している
 エステートセールは遺品の販売を行なうため、その目的は「遺品整理」の他、「売上を上げること」である。しかし、故人の家を販売展示場として行う従来のエステートセールでは家の立地や、気候条件によって集客数が変動してしまい、売上を最大化することが難しい。
 このようなエステートセールの欠点をカバーするために、アメリカでは遺品専門のオークションサイトが登場し、立地、天候による集客のムラを解消することで、エステートセールの売上拡大が図られている。
なぜアメリカでは遺品を売りに出し、多くの買い手がつくのか?
 日本では遺品を単なる「モノ」以上の物として扱う。そのため、遺族が「形見分け」を行う・もしくは遺品を供養して焼却することが一般的で、「遺品を売買する」ことに対して抵抗感を感じる人も多い。
 一方、アメリカでも一部の遺品(時計など)は親から子へ代々受け継がれているが、多くの遺品を「モノ」として扱う風潮が強く、エステートセールが一般的になっている。
この遺品の捉え方の違いには、日本とアメリカの信仰の違いが影響していると考えられる。例えば、日本における仏壇(御本尊や位牌など)はそのものに「魂が入っている」と解釈され、仏壇そのものが礼拝対象になるために、閉眼供養を行ってから処分される。一方アメリカで広く浸透しているキリスト教の信仰対象は神であり、ロザリオやマリア像はそれらを介して神を信仰するための道具に過ぎないため、処分する上でやるべきことはない。
 このような宗教上の価値観の違いが、信仰道具以外の遺品に対する考え方にも影響し、遺品の売買に対する意識の違いに繋がっていると考えられる。
海外へ販路を開拓すれば、日本でもエステートセールがビジネスとして成り立つ可能性がある
 少子高齢化や核家族化を背景に、近年日本においても遺品整理を代行する業者のニーズが高まっており、遺品整理業者の数は増加傾向にある。そのような業者の中には遺族の了承を得て遺品の買取・販売を行う業者も存在している。
 しかし、こうした業者は遺品を「仕入れ値」で買い取るため、遺族と業者間では、実際の価値よりも低い価格で遺品が売買されており、遺族のもとに残る金額は少ないものとなる。また、日本国内では遺品の購入に抵抗感を感じる人も多く、価値がありまだ使える遺品の買い手がつかずにそのまま廃棄処分となってしまうこともある。
 しかし、ボーダーレス化が進んでいる昨今の世界では、ECサイトなどを利用して海外に遺品を拡販することも十分に可能だろう。特に趣味色の強い製品(フィギュアやカメラなど)が海外の熱烈なコレクターの目に留まればより高値で販売することができ、遺族のもとに多くのお金が残り、業者も十分な収益を上げることができ、ビジネスとして成り立つ可能性がある。
 「価値がある」「まだ使える」物が、遺品であるというだけで処分される、低い価格で取引されることが多いのはいささかもったいないように感じる。エステートセールのように使える物は思い切って販売し、得たお金で一つ格式の高い葬儀を行うことも、故人を偲ぶ一つの選択肢ではないか。

(2020年4月)


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