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事前準備と信用がカギとなるロシア市場への進出


 

ロシア市場の現況

 日系企業のロシア市場への参入事例を紹介する前に、ロシア市場の状況について公表されているデータを基に見ていきたい。
 世界銀行の統計によると、人口は約1億4500万人、GDPは約1.7兆ドルである。都市別に見ると、モスクワ市の人口は約1,250万人で欧州最大の人口規模を誇る。さらに、欧州第3位の人口535万人のサンクトペテルブルク市を始めとして、人口100万人以上の都市は国内に15か所ある。クリミア侵攻後の経済制裁で落ち込みを見せたロシア経済だが、2020年1月に発表されたIMFのデータでは2018、2019(推計)の実質GDP成長率がそれぞれ2.3%、1.1%となっており、緩やかな成長傾向にあると言える。産業別にみると、2018年時点で一次産業が4.1%、二次産業が32.7%、三次産業が63.2%となっている。そのうち、卸売・小売業が占める割合が最も多く、全体の14.8%で、次いで製造業が13.2%、不動産業が10%となっている。卸売・小売業、不動産業がともに前年比の伸び率が減少しているのに対して、製造業はわずかではあるが伸び率が増加している。(経産省通商白書)伸び率が大きい業種は第二産業では、建設(4.7%)、鉱業(3.9%)、第三次産業では、宿泊・外食、金融が共に前年比6.2%の伸び率である。その一方でOECによる輸出データを見てみると、天然ガスや原油を始めとした天然資源が金額ベースで総輸出量の約6割を占めている。こうした状況を踏まえ、ロシア政府は今後6年間で約6000億ドルを、主にインフラや通商部門に投資していく構えだ(Bloomberg)。また経済特区を制定し、国外企業の誘致にも積極的に乗り出している。
 以上がロシア市場の概況だが、本コラムではこれまでにロシア市場に参入した日系企業の例やロシアならではの商習慣を中心に、政府が進める国外企業の誘致政策なども踏まえた同国での日系企業のビジネスの可能性を探っていく。

ロシアの経済特区

 ロシア政府は業種別に約20か所の経済特区を制定し、様々な優遇措置を設けることで国外企業を積極的に誘致している。ロシア市場への参入を目指す企業にとって経済特区での優遇措置は非常に魅力的である。詳細な優遇措置は特区ごとに異なるが、税率の優遇、インフラへのアクセス、関税の減免などがある。既に日本企業が進出しているリペツク経済特区を例とすると、10年間の固定資産税の免除、最長7年間は法人税2%、商品の輸出入の際の関税免除、土地取得費用の軽減、行政による工場建設などがあり、世界で最も成功が見込まれる経済特区として表彰されている。このリペツク経済特区で成功を収めているのが横浜ゴムである。
 2005年にタイヤ販売のために現地法人のYokohama Rusを設立し、2008年からリペツク経済特区へ進出した。2011年からは自社工場の操業を開始しており、年間160万本の自動車用タイヤを生産している。また、2019年には日産自動車のロシア製造拠点よりベストサプライヤーとして表彰を受けている。同社の代表は工場建設の際に20か所以上あった候補地の中からリペツク経済特区を選んだ理由として、整ったインフラ環境、モスクワへのアクセスの容易さ、現地行政の対応などを挙げている。
 この他にも光熱費の減免や、行政による現地企業の紹介、従業員が快適に生活できる施設を設けるなど各経済特区で様々なサポートを行い、国外企業がロシアでビジネスを行う際に様々なメリットを設けている。その一方で募集している業種や、どのような優遇措置が受けられるかは地区ごとに異なるので事前の調査が肝心だ。
ロシアで活躍する日系企業

 帝国データバンクによると、2016年時点でロシアに進出している日本企業は314社で、業種別では製造業が43%で最多となっている。また、年商規模では1000億円以上の企業が約34%で最多となっている。前述の横浜ゴムを始め、トヨタやユニクロなどの世界的な大企業がロシアでも成功をおさめている一方で、中小規模の日系企業も存在感を発揮している。極東地域でのサケ・マスの人工増殖システムで成功を収めているのが、札幌市に本社を置くフラット合成株式会社である。同システムで高い技術力を持つ同社は80年代から取引を開始し、20年前には20か所以下の導入実績であったが、高品質な商品を提供し続け、現在では52か所で導入されており、約6割のシェアを誇っている。また、ロシアで新たな事業に挑戦している例もある。徳島市に本社がある東海運株式会社は運送業や倉庫業を本業にする老舗だが、ロシアでは徳島の商品を販売する商社業を展開している。当初は東南アジア市場での展開を検討していた同社だが、検討していくなかで東南アジアより平均購買力が高く、大手商社の進出が少ないロシア市場をターゲットにした。
 その他にも除雪機、建築部品、農作物など様々な例があるが、ロシアでのビジネスの鍵として共通していることがいくつかある。まず高い品質をアピールするということだ。特に工業製品ではロシアで生産される製品と比較して割高だが、高品質・高耐久であり、なぜ高いのかという理由をしっかりと時間をかけて説明し、相手に納得してもらうことが重要である。次に現地の企業と取引する際には、現地でのパートナーを介して行うことである。2010年に実施された国勢調査では、英語話者は人口の約6%程度しかおらず、現地語での通訳等を介したコミュニケーションが重要である。さらにロシア企業との取引での傾向として多いのが、ロシア人を介してコンタクトを取った方が信頼されやすく、交渉が有利に行いやすいということだ。そのため、現地での通訳やビジネスパートナーなどと密接な協力関係を築くことが成功への近道である。

(2020年12月)


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