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観光大国フランスから学ぶ、観光業の取り組み


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観光客数1億人を目指すフランス

 観光大国として有名なフランスでは、観光客数が30年以上連続1位を記録しており、2017年は8,900万人(出典:World Tourism Organization)に達する見込みであることを発表し、観光大国の地位を保っている。しかし、そのフランスも2015年以降に連続して起きたテロの影響を受け、2015年から2016年にかけては8,450万人から8,260万人(出典:World Tourism Organization)に減少してしまったが、政府としてテロ対策を行い、安全性をアピールすることにより、すぐに観光大国としての勢いを取り戻した。また、2024年に首都パリでのオリンピック開催が決定し、フランスは観光客数1億人突破を目標として掲げており、今後更に観光業に力を入れていく姿勢を示している。
 一方、2020年に東京オリンピック開催が決まっている日本でも年々観光客数が増えていることを報じており、2017年の観光客数は約2,800万人(出典:日本政府観光局)に達し、統計を取り始めてからの最多記録としているが、フランスと比較すると約1/3である。
 フランス、日本共にその国独自の美味しい食べ物があったり、県や地域によって全く異なる文化を持つなど観光地として人気となるポイントは類似した点が多くあるが、観光客数にこれほど差が出来るのはなぜだろうか。それは、日本ではGDPの約2%を占める観光業が、フランスではGDPの約7%も占めており、国にとって重要な産業であるため、旅行会社などの民間企業だけでなくフランス政府も一緒になって観光業に注力しているからである。本コラムでは、フランスで行われている観光業の実態や観光客誘致のための取り組みに関して紹介する。

観光客の中でも重宝される「ビジネス観光客」の存在

 フランスを訪れる観光客の中で大きな存在感を占めているのが、「ビジネス観光客」である。「ビジネス観光客」は、訪仏観光客の約4割を占めるとしており、更なる観光客増加を目指すフランスとしては重要視している。フランスでは、政府として見本市やイベントなどで「ビジネス観光客」を誘致することに取り組んでおり、ファッション、グルメ、映画、スポーツなどあらゆるジャンルの見本市やイベントが開催されている。フランスで開催されている見本市として有名なものでは、「パリコレ」や「サロン・デュ・ショコラ」など新製品を発表する場が容易に思いつくが、それよりも実際に商談、ビジネスマッチングを行うタイプが多いのがフランスの見本市の特徴である。前述した2種類の見本市に並ぶ勢いがある見本市の1つとして挙げられ、実際の商談が進められることが多いのが年2回開催されている「メゾン・エ・オブジェ・パリ」である。インテリア・デザインの見本市として欧州最大の規模であり、来場者数が約85,000人のうち50%以上がフランス国外からの来場者であり、1つの見本市だけでも約40,000人が「ビジネス観光客」と呼ばれる状態にあることになる(出典:Jetro)。
 「ビジネス観光客」は、宿泊費や移動費などは会社の経費として処理することが可能であり、普通の観光客に比べ観光でお金を躊躇なく使う人も多いため、国が見本市やイベントの開催に積極的であり、ビジネス観光客誘致を重視しているのにも納得がいく。
「安全面」や「観光客に対する接し方」の改善による観光客数増加を狙う

 また、フランスでは「ビジネス観光客」以外の観光客を誘致するためにも様々な取り組みを行っている。フランスは、2017年のパリへの観光客数が3,380万人で過去最高の記録を更新し、訪仏観光客の約4割を占めており、フランスにとってパリへの観光客はとても重要である。そんな中、フランスはパリでのテロ発生を受け、安全面に対するマイナスイメージから抜け出せず、パリ市内やその周辺地域に警官を5,000人(出典:在日フランス大使館)近く配置し、警備体制を整えて安全であることをアピールするなど、パリに対するマイナスイメージを払拭する取り組みを行い、テロによる観光客減少を防いでいる。
 更に、「フランス人は外国人観光客に冷たい」という意見があることを受け、フランスの観光政策に精通した専門機関「フランス観光開発機構」が主体となり、「観光業に携わる人は観光客に優しく接するべき」とし、各国から訪れる観光客の特徴と、その特徴に対しどういった応対が好まれるかが記載された「接客マニュアル」を配布し、観光客への対応改善に取り組んでいる。日本でも訪日外国人観光客の多い地域では、オリジナルの接客マニュアルを配布しているところもあるが、フランスではフランス全体で1つのマニュアルを共有して取り組んでいるのが面白いところである。参考までに、日本人は「控え目だが要求は多い」と記載されており、よく特徴を捉えていると思われる。
 フランスは、観光客大国として揺るぎない位置にいるが、オリンピック開催に合わせて観光客数1億人を目指しており、前述したもの以外にも、簡易ビザ発行までの時間短縮や空港からパリ市内への交通網整備など様々な取り組みを行っている。日本でも観光客誘致の取り組みは数多く行われているが、前述した「ビジネス観光客」の誘致に力を入れてみるのも面白いのではないだろうか。日本でも既に大規模な展示会は数多く行われているが、日本の展示会はどちらかというと新製品の発表や製品の紹介が多い印象である。海外からの「ビジネス観光客」増加を狙うために、日本の優れた先端技術を使用した製品を紹介すると共に、より商談やビジネスマッチングが行われる環境に変えていけば、海外企業が日本に足を運ぶきっかけになり、「ビジネス観光客」の増加に繋がるのではないだろうか。

(2018年5月)


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