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ASEANにおける電気自動車(EV)の生産大国を目指すタイの政策と課題


 

近年、世界的な共通課題である地球温暖化対策、資源問題への関心の高まりを背景に、低炭素化社会に向け、二酸化炭素の排出を大幅に
削減することができる『電気自動車(以下、EV)=BEV+PHEV+HEV』の開発・普及の動きが活発になっている。
注)本コラムにおける電気自動車(EV)には、BEV、HEV、PHEVを含む。
・BEV:Battery Electric Vehicle(バッテリーの電気だけを使ってモーターで走る自動車)
・HEV:Hybrid Electric Vehicle(エンジンとモーター、2つの動力を搭載している自動車)
・PHEV:Plug-in Hybrid Electric Vehicle(外部電源からの充電が可能なHEV)

タイの自動車産業の現状
 現在、タイの自動車産業はグローバルメーカー、特に日本企業によって推進されている。タイは、日系自動車メーカーの製造と組み立ての
拠点であり、また、自動車部品の製造拠点でもある。タイでは堅強な自動車と部品のサプライチェーンが構築されている。 
 タイ自動車協会の報告によると、2020年のタイの自動車生産台数は1,427,27台、そのうち、国内販売台数は792,146台、輸出台数は
735,842台である。2020年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、それぞれ29%、21%、30%減少した。過去10年間のタイの自動車生産台数の平均は約200万台/年である。
 近年、世界の自動車需要は、EVにシフトしている。これは、バッテリー技術が向上したことにより、EVの効率が向上し、価格が低下したためである。タイの2021年のBEVの新規登録数は5,781台であり、ハイブリッド自動車(PHEV+HEV)は42,800台であった。2017年からともに
増加傾向を示している。 

タイの新経済社会計画に追加された電気自動車(EV)
 2021年、タイの国家経済社会開発委員会(NESDC)は、第13次国家経済社会開発計画(2023~2027年)の枠組みの議論を始めた。
この計画の目標は、タイを持続的に価値創造型経済・社会へ変革することである。目標を達成するために13の方向性が示されており、その1つに、「ASEANにおける電気自動車の生産拠点になる」ことが明示されている。
 タイ政府は、PM2.5の排出を削減し、タイ国内のクリーン産業の促進を目指すため、2035年までにタイ国内で登録する新車を100%ZEV
にする、いわゆるゼロエミッション車ZEV@35を立ち上げた。
 タイ電気自動車政策委員会(EV委員会)は、2030年に自動車の総生産台数(250万台)のうち、EVの比率を30%(約75万台)とし、
そのうちBEVを50%、PHEVとHEVを50%生産することを目標に、電気自動車産業の発展のための30@30政策を策定した。
 また、EVに欠かせないバッテリーと充電ステーションに関しても、EVと同時に国内の需要を十分に満たせられるよう開発を進めていく。
充電ステーションは、2030年までに12,000ヵ所設置することを目標にしている。なお、2021年9月時点のEV用充電ステーションは693ヵ所
である(タイ電気自動車協会)。
電気自動車(EV)生産の推進策
 タイ投資委員会(BOI)は、EVの製造事業を奨励している。投資額の合計が50億バーツ以上の場合、BEVの生産事業者は、8年間の
法人所得税が免除される。同時に研究開発に投資すると、恩典を受け取ることもできる。また、PHEVの生産事業者は、法人所得税を3年間免除される。しかし、HEVの生産事業者は法人所得税免除の対象外となる。投資額の合計が50億バーツ未満の場合でも、基本的にBEV、PHEVの
生産事業者は、8年間の法人所得税が免除される。また、指定された追加条件に満たせば、法人所得税の免除の延長が可能である。普通自動車
以外のEV(バイク、三輪車、バス、トラック、ボート)の生産事業者は法人所得税を3‐8年間免除される。
 タイ政府は、2022年2月に、新たなEV振興策の大枠を閣議決定した。タイ国内に拠点を有する自動車メーカーが、国内でEVを生産することを条件に、EVの輸入関税や物品税率を引き下げ、また、EVの販売に補助金を交付することとした。この振興策は2022年から2025年まで実施する予定である。

タイにおける電気自動車(EV)プレーヤー
 今後、タイ国内のEVの生産を拡大する為には、EVの基盤となるバッテリー開発が重要となる。現在、タイでは電気自動車・バッテリーの製造に関して、十分な技術を有しているとは言い難い状況である。目標の生産台数を達成すためには、国内のバッテリーメーカーの育成が急務
であるが、当面は海外メーカーに頼ることが予測される。
 タイ高等教育科学研究イノベーション政策協議会事務局(NXPO)の専門家は、今後、海外メーカーが、タイのEV市場に参入する場合、
単独で参入するよりもタイのローカル企業と組んで、合弁企業を設立した方が効率的であると述べている。
 2019年、SCGインターナショナル(タイ)とBYD Auto Industry(中国)が、「電気自動車(EV)の事業開発」に関する覚書に署名した。これは、SCGインターナショナルが有する強力な販売チャネルと、BYD Auto Industryが有するEV製造の高度な技術の組み合わせにより、
EV事業を本格的に推進するためのものである。また、Foxconn(台湾)は、EVの生産拠点としてタイとアメリカを選択したと発表した。タイのPTTとの提携によるEVの生産に向けた準備を進め、2023年に製造を開始する予定である。年間約15万台のEVを生産する計画である。
 2021年の大きな動きとしては、中国の自動者メーカーGreat Wall Motorが、タイの東部にあるラヨン県で自動車製造(ガソリン車及び
電気自動車)の工場を建設し、タイ工場をハブ拠点として東南アジアに輸出することを発表した。
終わりに
 近年、タイでは徐々にではあるが、ガソリン車から電気自動車(EV)へ移行している。一方、現在、タイ国内の自動車メーカー・部品
メーカーの多くは、ガソリン車の製造に関わっており、ガソリン車の製造事業者への支援策も慎重に検討すべきであるとの声もあがっている。
 今後、EVとガソリン車が、どの様になるのか、政府と民間企業の間で非常に重要な時期を迎えている。タイでは日系自動車メーカーに対する信頼は非常に高いが、Great Wall Motorなど中国メーカーの参入によって、タイのEV産業の競争が厳しくなることが予測される。





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