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タイの医療保険制度


タイの医療保険は大きく公的医療保険と民間医療保険の2つに分かれている。ここでは国民の大半が加入している公的医療保険に注目していく。
 タイの公的医療保険は、職業や雇用形式などに応じて種類が異なるが、誰もがいずれかに加入するという点では、日本の医療保険制度と共通している。タイの医療保険は日本のように保険者の年齢に応じて自己負担の割合が変わるという原則はないが、各医療制度の予算、担当する
機関、受診できる医療機関などが異なる。

タイの公的医療保険制度
 タイの公的医療保険は「公務員医療給付制度」、「社会保障制度」、そして「国民医療保障制度」の3つに分けることができる。
 「公務員医療給付制度」は、政府機関・公営企業に勤務する公務員やスタッフなどの本人または家族が加入している制度であり、財務省の
主計局が所管している。加入者が費用を拠出することなく、すべて政府が負担する。すなわち、税金が使われていることになる。2018年この
制度には、国民の7%にあたる約480万人が加入している。一人当たりの年間の医療費(2018年の公務員医療給付制度予算÷加入者数)は
15,249バーツ(50,830円)である。公立病院・全国の公立医療機関どこでも受診することができる。多くの場合は患者が先に医療費を
支払い、申請後に支払った全額が返金される。
 「社会保障制度」は社会保障法に基づき、労働省が所管する制度である。「公務員医療給付制度」と違って加入者本人のみが対象となる。
社会保障制度の対象者は大きく3種類(一般民間従業員、退職した従業員、自営業者/非正規労働者)に分けることができる。
① 一般民間従業員は、従業員1人以上の事業所に勤務する15歳以上60歳未満の民間従業員が対象となる。加入者は保険料(上限月額
 750バーツ)を社会保険基金に納付しなければならない。補償範囲は7項目で、病気/事故、障害、死亡、出産、児童手当、高齢者支援および
 失業である。
② 退職した従業員は、元一般民間従業員として社会保険に12か月間以上加入し、障がい者ではなく、退職後6か月以内で、社会保険基金に
 月額432バーツ(1,140円)納付すれば加入することができる。なお、政府が月に120バーツ(400円)負担している。補償範囲は
 病気/事故、障害、死亡、出産、養育費、及び高齢者支援である。 
③ 自営業者/非正規労働者は、上記の加入していない15歳以上60歳未満の自営業者/非正規労働者が対象となる。加入者は社会保険基金に
 月額100バーツもしくは150バーツを納付すれば加入することができる。100バーツのプランの保証範囲は病気、障害、死亡であり、
 150バーツのプランは100バーツのプランの病気、障害、死亡に加えて高齢者支援が保証範囲となる。
 
 2018年は社会保障制度に国民の17%にあたる約1,460万人が加入している。2018年の一人当たりの医療予算は1,500バーツ(4,500円)
である。「国民医療保障制度」はタイ国籍を持ち、上記の保険制度もしくはその他の公的医療保険に加入していない人が対象である。保健省の
国民医療保障局が所管する。2018年では国民医療保障制度に、国民の75%にあたる5,110万人が加入している。この制度の財源は主に税金
である。国民医療保障制度は、タクシン・チナワット首相の「30バーツ医療制度」から始まり、2002年にタイの国家健康安全法が施行された。この制度のカードは金色の為、「ゴールドカード制度」とも呼ばれている。加入者は医療サービスを受けるため、登録が必要となる。登録する際、治療を受けたい公立病院を指定し、指定した病院しか医療サービスを受けることができない。3つの公的医療保険の中で最も加入者数が
多く、2018年の一人当たりの医療予算は3,197バーツ(10,000円)である。この制度は任意加入であるため、この制度に加入する必要がない
富裕層や登録の仕方が分からない貧しい人など、加入していない者もいる。
 なお、緊急の場合、72時間以内であれば、どの医療機関でも治療を受けられるが、72時間以降は加入している制度の条件に従う。
各制度の格差
 各公的医療制度の一人当たりの医療費を比較するとわかるが、公務員医療給付制度の一人当たりの医療費金額が社会保障制度の約10倍、
国民医療保障制度の約5倍となっている。金額の面だけではなく、公務員医療給付制度は加入者本人と家族までカバーしている。一方、社会保険と国民医療保は加入者のみ、家族までカバーしていないという不平等問題がある。現在、各医療保険制度を所管している機関が異なるため、
各機関が独立に活動し、統一性はない。
 一人当たりの医療費が最も低い社会保障制度に加入している従業員は、会社の共同健康保険もしくは民間健康保険に加入することが多い。
その理由は、社会保障制度がカバーしている金額が低く、より良いサービスを受けたい場合、自己負担になるからである。また、社会保険の
手続きに時間がかかることも1つの理由である。
今後の医療保険制度
 今後の課題としては各制度の格差の是正があげられる。国民が平等で良い医療サービスを受けられるように社会保険と国民医療保険の条件を再検討または国民の健康を維持するため、医療サービスをより向上させる必要がある。
タイは格差が大きい発展途上国として知られ、富裕層や中間層は、高度かつ迅速な医療サービスを受けるため、公的保険と民間保険の両方に
加入、または民間保険のみに加入し、私立病院を利用している人が多い。
 今後、経済成長に伴って医療保険制度の整備が進み、最先端の医療技術や高度な医療サービスが求められていく。また今後、タイは高齢化
社会に突入し、高齢者向けの医療サービスの需要が増加していくと見込まれる。全年齢層に対する高度な医療サービスや健康食品などの
ヘルスケア製品を求める傾向はさらに高まっていくと見込まれる。
 次のコラムでは、タイの健康食品に関して記載していきたい。

(2021年9月)




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