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アメリカ・カリフォルニア州のZEV規制が自動車産業に与える影響


カリフォルニア州で進む自動車のZEV(Zero Emission Vehicle)化
 アメリカのカリフォルニア州で、2035年までにガソリン車の新車の州内販売を全面禁止にすることが発表された。2010年代からZEV規制の動きがあったカリフォルニア州だが、2020年9月にZEV規制の知事令が発令されたことで、自動車のZEVへの移行が本格化している。2022年には、カリフォルニア州大気資源局(CARB)が2年をかけて規制案を完成・承認し、2035年までの新車におけるZEV(電気自動車:BEV、燃料電池自動車:FCEV、プラグインハイブリッド自動車:PHEV)の目標シェア率を提示した。この規制では、新車の販売台数のうちZEVが占める割合を年間6~9%ずつ増やしていくことが決められている。尚、PHEVは、各年のZEV販売量に占める比率を20%以下とするというカリフォルニア州の制約のもとZEVに含めている。

トラックやバンなどの商用車においてもZEV化を推進
 ZEV規制は自家用車だけでなく、トラックやバンなどの商用車も対象となっている。2020年にCARBは、2045年までに州内で走行するトラックとバンをすべてZEVに変更する方針を発表した。また、この方針では自動車メーカーに対して2024年から2035年の間に、州内で販売される商業用トラックおよびバンのZEVの割合を段階的に引き上げることも義務付けられている。
 こうしたカリフォルニア州のZEV化への動きはアメリカの他地域にも広まっており、カリフォルニア州以外の15州とワシントン市では、州内・市で販売する商業用の中型・大型トラックに占めるZEVの割合を2030年までに30%、2050年までに100%へと引き上げる暫定目標を締結した。この規制に伴い、大手自動車メーカーはZEV生産へ注力する方針に転換しつつある。
 また、カリフォルニア州が進めるZEV規制のように、脱炭素・低炭素社会に向けた取り組みは世界中で見られるようになっている。


カリフォルニア州が36億ドルの投資計画を発表
 カリフォルニア州は、2022年11月にZEVとその充電設備へ36億ドルの資金を投入することを発表した。この計画では、スクールバスや輸送用バス、運搬用トラックへの投資のほか、低所得者層への支援を表明しており、低所得者層でもZEVを購入できる環境作りが行われている。
 具体的には、補助金額の増加が発表されており、新たにBEVを購入する場合は最大15,000ドル、古い車を廃車にしてBEVを購入する場合は最大19,500ドルを補助することが決定されている。これにより、補助金の金額は発表前のものから3,000ドルの増額となり、低所得者層のZEV普及率向上の一助となっている。
アメリカ・カリフォルニア州のZEV規制が自動車産業に与える影響
カリフォルニアで売れているZEVとは
 カリフォルニア州エネルギー委員会(CEC)のデータによれば、カリフォルニア州における2022年の乗用車販売台数の18.8%(34万5,818台)がZEVとなっている。2021年の年間販売台数25万279台から3割程度の増加が見られ、カリフォルニア州においてZEVが急速に普及していることがわかる。
 なかでも販売好調なのがテスラであり、ZEV規制を追い風にトヨタの販売実績を大きく上回り、カリフォルニア州のZEVにおける年間販売台数(2022年)では1位を獲得している。なお、カリフォルニア州におけるZEV販売台数の上位4車種をテスラ社が占めており、同州のZEVの年間販売台数の61%をテスラ社が占めている。
 テスラの販売実績の内訳をみると、販売実績が多いのは安価なModel3(94,683台)、Model3をベースにしたSUVタイプのModelY(93,872台)となっている。
 この他、テスラ初のSUVタイプで7人乗りが可能なModelXが13,319台、2012年より販売されているモデルであるModelSが10,712台となっている。
 このように、カリフォルニア州では、ZEVの研究・開発を早い段階から進め、豊富なラインナップを有するテスラの車種の人気が高く、高いシェア率を誇っている。一方、トヨタ(RAV4)やホンダ(シビック)など日系メーカーのシェアは低下傾向となっている。
アメリカ・カリフォルニア州のZEV規制が自動車産業に与える影響
BEV以外のZEV
 カリフォルニア州のZEV販売台数の内訳を見ると、BEVやPHEVのほかに、水素と酸素の化学反応によって電気エネルギーを得るFCEVも一部販売されている。但し、水素ステーションの数が少ないことや、販売価格の高さもありFCEVのシェアは低いのが現状である。
 ZEVの大半を占めるBEVは、電力の供給が追い付かないときに利用の自粛を求められる点や、航続距離が短いといった問題を抱えている。また、BEVの充電スポットの普及が追いついておらず、充電を待つ車で行列ができていることも問題となっている。このため、トヨタではFCEVや水素を燃焼させて動力とする『水素エンジン車』の開発を進めている。
 現在はZEVのシェアの大半をBEVが握っている状態であるが、電力や充電スポットの問題が深刻化した場合は、BEV以外の選択肢も視野に入れることが必要となってくる。今後はBEVだけでなくFCEVや水素エンジン車の動向も注視する必要がある。


(2023年12月)



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