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拡大するベトナムの電気自動車市場


ベトナムにおける自動車市場の現状

 ベトナムは二輪車大国として知られており、二輪車の販売台数は中国、インド、インドネシアに次いで世界4位となっている。一方、自動車は二輪車と比べると普及率は低く、人口の1,000人当たり23台程度に留まっている。これは自動車の価格に加え、購入者には自動車の輸入抑制や交通インフラの維持目的に、大きな税金(特別消費税等)を課せられているためである。例えば9人乗り以下のガソリン車を購入する場合、車体価格の30~150%(排気量によって変動)が特別消費税として課せられる。このため、ベトナムにおける自動車購入価格は他の国と比べ高いことも影響し、二輪車が交通手段として広く用いられている。
 ただし、国の経済発展に伴い、国民の所得水準が上昇したこともあり、自動車を購入する人は増加傾向にあり、2021年の自動車販売台数は2018年比で16.5%増加(約41万台)となった。今後も人口増加や所得の拡大等に伴い、自動車市場は拡大していくと期待されている。

拡大するベトナムの電気自動車市場
2021年におけるメーカー別の販売ランキングにおいては、ヒュンダイ(韓国)が1位、トヨタ(日本)が2位、起亜(韓国)が3位となっている。中でも人気があるのが、2017年に創業しベトナムの初国産乗用車のメーカーであるヴィンファストである。ヴィンファストは2019年から製品販売を開始し、約2年間で販売台数を国内4位までに拡大した。また、同社は国内で市場規模が小さい電気自動車(EV)に参入し、2022年末から販売を開始し、2023年から製品の全てを電気自動車に切り替えることを発表するなど国内における先端企業として注目されている。


電気自動車(EV)の普及の始まり
 ベトナムにおいては排気量50㏄未満の二輪車の場合は、運転免許の取得不要で運転できることもあり、婦人や学生などによく使用されていることから二輪車の利用が多い。このため、電動化においても自動車からではなく、二輪車から先に電動化が始まった。販売が開始された当初は中国メーカーのものが多かったが、近年はヴィンファストなど国内の電動バイクメーカーが登場し、大容量のバッテリーやデザインの豊富さなどにより、現在は海外製のものよりも販売台数は多くなっている。また、販売台数は年々増加している。
 二輪車において電動化が進展したことに伴い、四輪車においてもベトナムでは電気自動車に対して好印象を持つようになった。その結果、電気自動車も徐々に普及が進み始めており、交通運輸省登録局によれば2019年における国内のEVはわずか140台であったが、2021年には1,000台以上となっている。
ベトナムのEV生産及び販売の促進政策
 ベトナムにおいてはタイとインドネシアに比較すると、自動車の生産台数が少なく、2021年は299,800台(2020年比9,1%増)となっている。これはタイの約1/6、インドネシアの1/3の規模である。
 また、ベトナムにおいては国内の自動車産業の技術レベルが高いといえず、自動車部品の過半数は海外から輸入されて、国内で組み立てられており、大きな課題となっている。
 そこで政府はEV生産・販売を進めることによって自動車産業の拡大を図るべく力を入れていく方針である。
 政府は「2050年ネットゼロ」のプログラムを基づき、2050年までに温室効果ガスの排出量をゼロにすると目標を設けており、その施策の1つとしてEV普及のための優遇策を決定した。具体的にはEVに課する特別消費税を2022年3月1日からの5年間は3%とし、大幅に低減した。また、登録料についても2022年3月1日からの3年間は免除とし、その次の2年間は同カテゴリーのガソリン車の50%に低減することとした。
 また、ベトナムはEVに欠かせないリチウムイオン電池の主材料であるニッケルの生産国であることから、政府は電池産業の育成にも力を入れていく方針である。ニッケルにおいては現在3つの鉱山があり、埋蔵量は合計で約360万トン以上と推定されている。政府はこの内、一部の鉱山の開発を承認し、2025年までに11.8万トンのニッケルを採掘する計画である。また、2025年に採掘したニッケルを製錬する工場を設け、年間8千~1.1万トンの生産を目指す。加えて、ヴィンファストなどの企業がリチウムイオン蓄電池の工場建設を予定している。こうした取り組みを行うことにより、まずは電池産業の育成を図り、最終的にはEV生産の拡大にも繋げていくことを目指している。
成長が期待されるベトナムのEV市場
 「2050年ネットゼロ」に向けて、ベトナムの中央・地方政府は排出ガス削減する政策を検討している。ベトナム交通運輸省は、「再生エネルギーに変換・炭素とメタンの排出を削減するための行動計画」の草案を作成しており、その中においては2050年までにバスやタクシーの100%がEVを導入することを検討するなど、EVの普及を推し進めていく計画である。
 また、税金および登録料の優遇政策によってEVの購入者は増加すると見込まれており、国内自動車メーカーであるヴィンファストはガソリン車の生産から撤退し、EV生産に注力していく方針である。
 このように、ベトナムにおいては徐々にEVの市場が立ち上がりつつあり、国もEVを産業として育成していく方針であり、今後大きな飛躍が期待できる市場といえるだろう。

(2023年4月)



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