フランスのサステナブルファッション

世界で注目されるファッション業界の環境問題
近年、世界のファッション業界では「大量生産・大量消費・大量廃棄」が環境に悪影響を及ぼすとして問題視されている。国連が掲げるSDGs目標12「つくる責任、つかう責任」では廃棄物の管理と削減が定められており、サステナブルファッションも具体的なアクションのひとつである。
国連環境計画(UNEP)によると、2000年から2015年にかけて繊維製品の廃棄物は倍増しており、現在では年間9,200万トンも発生している。さらに、国連貿易開発会議(UNCTAD)は、ファッション業界が毎年500万人分の生活用水に相当する水資源を消費し、約50万トンのマイクロファイバーを海洋に流出させていると指摘している。地球温暖化の原因とされる二酸化炭素の排出量においても航空業界と海運業界を合わせたものより多くなっており、石油産業に次いで、世界で2番目に汚染度の高い産業とみなされている。
ファッション業界が環境に大きな負荷をかけている原因の一つに、ファストファッションのビジネスモデルがある。ファストファッションとは流行を取り入れた商品を低価格で販売する業態であり、頻繁に品揃えを変更して消費者に買い替えを促す。さらに「ウルトラファストファッション」と呼ばれる1着1000円以下の商品をオンラインで購入できる通販サイトも登場した。消費者はSNSで拡散された情報をもとに、手軽かつ安価に服を入手できることから、環境に悪影響を及ぼすことを知りながらも利用を続けてしまうことが問題となっている。
このような背景から、ファッション業界では「大量生産・大量消費・大量廃棄」から「適量生産・適量購入・循環利用」へ転換することが求められている。本コラムでは、そうした変化をリードするフランスの政府・企業の先進的な取り組みに着目し、ファッション業界の展望を探っていく。
ファッション大国フランスの先進的な取り組み
世界的なファッションの都として知られるフランスは、サステナブル分野でも先頭を走っている。世界で初めて大量廃棄の問題を法的に規制し、2020年の「循環経済法」という法律では新品衣服の廃棄を禁止した。売れ残り商品は再利用・リサイクル・寄付が義務付けられ、生産者には過剰在庫の削減や在庫管理の改善が求められた。
その後、2024年の「ファストファッション規制法案」では、ファストファッションの広告禁止、極端に安価な商品への罰金措置などが導入され、対象ブランドは商品販売時に自社製品が環境に与える影響やリサイクルを促すメッセージの掲載が義務付けられた。
フランスでは街中に衣料専用回収ボックスが設置されており、2018年のEco TLC の調査によるとフランス人の約8割が利用している。また、2023年にはフランス政府が衣類と靴の修理費用を支援する制度を開始し、消費者にリユースの取り組みを促している。
フランスでは政府による積極的な取り組みが進められており、これにより消費者の循環型ファッションへの関心も高まっている。こうした背景から、サステナブルファッションの考え方が定着している国の一つとして、国際的にも注目されている。
フランスで拡大するセカンドハンド市場
フランスでは新品衣服の廃棄が禁止された影響から、セカンドハンド市場が盛り上がりを見せている。日本では古着などの中古品に対してヴィンテージ品などの高級なイメージがあるのに対して、フランスではアパレルを買う選択肢の一つとして日常的に利用され、幅広い価格帯の商品が扱われている。低価格で高い品質の服を手に入れることができ、サステナビリティにも貢献できるセカンドハンドはフランスの消費者に広く受け入れられている。
2009年に設立された「Vestiaire Collective(ヴェスティエール・コレクティヴ)」は、ラグジュアリーブランドの中古品を扱うオンラインマーケットプレイスとして注目を集めた。出品者の販売手数料を収益源とする委託販売サイトであり、個人と法人のどちらでも出品が可能である。出品者は、専用アプリを用いて写真と商品情報を送ることで出品ができ、商品が売れると、同社で検品が行われた後に購入者に発送される。発送前に第三者による入念な検品を行うことで品質を保証し、高級中古品をネットで買うという心理的ハードルを下げ、信頼あるショッピングサイトとして確立していった。
また、2003年に誕生した女性向けブランド「Ba&sh(バッシュ)」では、公式オンラインショップで購入したものを簡単に再販売できるサービスを提供している。マイページの購入履歴に表示される「再販ボタン」を押すだけで、商品情報の入力をせずに世界中のセカンドハンド市場に向けて出品ができるという仕組みだ。同社では再販売に限らず、レンタルや修理に関するサービス体制も整えており、アパレル製品のライフサイクルを延ばして持続可能な消費を実現する取り組みを行っている。
今後のファッション業界
今後のファッション業界では「大量生産・大量消費・大量廃棄」から「サステナブルファッション」への移行が進んでいく。そのためには、「服を捨てない」仕組みづくりが重要であり、選択肢の1つとしてセカンドハンドが広がりを見せている。
また、サステナブルファッションの実現には素材の見直しも欠かせない。近年では、リサイクルポリエステルやテンセル(木材パルプを原料とした再生繊維)、オーガニックコットンといった環境にやさしい素材が注目されており、素材選びそのものが企業の環境への姿勢を示す要素になりつつある。
さらに、サステナビリティへの取り組みはブランド価値の向上にも繋がっている。たとえば、愛知県一宮市に所在する株式会社リテイルは、使い古したセーターや裁断くずを原料として毛70%のリサイクルウールをつくる「毛七」という技術をブランド化し、「毛七」を使った生地やアパレル製品を販売している。従来は貴重な羊毛を無駄にしないために生まれた技術であったが、現在では環境に配慮したリサイクルウールとしての価値が再評価され、その価値を高めたことにより注目を浴びた。
このように、サステナビリティへの取り組みは今後のファッション業界において、事業の信頼性やブランド戦略の中核としてますます重要性を増していくだろう。
(2026年2月)
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