ベトナム経済ニュース:2026年6月前半

T&T GroupがAIを活用したスマート物流モデルの推進を発表(6月1日)
T&T Group(ベトナムの民間複合企業)は、シンガポール物流大手であるYCH Groupとの合弁会社Vietnam SuperPortを通じて、AI、自動化、リアルタイム運営基盤を活用したスマート物流モデルを推進すると発表した。
ベトナム商工省が発表した「ベトナム物流報告書2025」では、物流業界が従来の物理的インフラ中心から、データやAI、自動化を競争力の中核とする新たな段階へ移行している一方、多くの企業は、倉庫・輸送管理や注文追跡など基礎的なデジタル化にとどまっており、大規模なスマート物流モデルを実現している企業は限られると指摘している。
同報告書では、2025年に稼働した代表的なスマート物流拠点としてVietnam SuperPortを紹介している。同施設では、AIによる貨物書類認証に加え、AGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)、OACT(Off-Airport Cargo Terminal、空港外貨物ターミナル)などを導入しており、その結果、運営生産性は約35%向上し、作業ミス率は最大50%低減した。また、OACTモデルは、通関や保安検査、保管、ULD処理などを空港外で実施することで、主要空港貨物ターミナルの処理負荷を長期的に約25%軽減する可能性がある。
さらに、Vietnam SuperPortはGoogleやKyndryl(ITインフラサービス大手)との連携によるAI活用や、YCH Group、SCALAとの協力による500人規模の物流人材育成も進める。T&T Groupは、Ramky、Hanwha、Kogas、Kospo、SK Innovation、丸紅、双日、JPower、BPなど、複数の国際企業と協力を進めており、今後は、金融や不動産に加え、港湾、マルチモーダル物流、航空、AIを活用した運営基盤など高付加価値分野への展開を加速するとしている。
Vinachemがフィリピン大手3社との戦略的協力を発表(6月2日)
Vinachem(ベトナム化学グループ)は、フィリピンの大手企業3社と戦略的協力に関する覚書を締結したと発表した。
今回の締結により、Vinachemは、Puregold Price Club、Planter Products、Sun Prince TBA Corporationとの投資・貿易連携を強化する。
Puregold Price Club(フィリピン大手小売企業)は、全国600超のスーパー、ハイパーマーケット、コンビニエンスストア網を活用し、洗剤やホームケア製品、FMCG(消費財)などの販売拡大を図る。Planter Productsとは、肥料や農薬の供給に加え、技術移転や持続可能な農業向けソリューションの共同開発を検討する。また、Sun Prince TBA Corporationとは、産業用ゴム製品、タイヤ、電池、バッテリーなど工業製品のフィリピン市場での販路拡大を進める。
Vinachemは、基礎化学品や肥料、工業用化学品からタイヤ、電池、消費財まで幅広い製品群を展開しており、今回の提携は、小売、農業、工業分野を横断した市場接続力の強化と、地域バリューチェーンへの参画拡大を示すものと位置付けられる。
各覚書は、長期的なパートナーシップ構築や市場拡大に加え、ハイテク分野やグリーン経済分野での協力促進を目的としており、同社が推進する技術革新、デジタル変革、グリーン転換、高付加価値製品の開発方針とも一致する。
Vinachemは、国際協力を競争力向上とグローバル・バリューチェーン参画の重要な推進力と位置付け、ASEAN展開の強化と地域の経済・産業・技術協力の拡大を目指すとしている。
ベトナム鉄道総公社が中国・青海省から南部ドンナイ省への国際コンテナ鉄道輸送を初実施(6月3日)
ベトナム鉄道総公社は、中国・青海省からベトナム南部ドンナイ省チャンボム駅までの国際コンテナ鉄道輸送を初めて実施したと発表した。
今回の貨物列車はPVC(ポリ塩化ビニル)約1,000トンを輸送するもので、中国・青海省西寧市の双寨駅を出発し、広西チワン族自治区の憑祥駅とベトナム・ランソン省のドンダン駅を経由した後、イエンビエン駅で通関し、ベトナム鉄道の貨車へ積み替えられた。総輸送距離は約4,000kmで、中国国内約2,178km、ベトナム国内1,700km超を走行する。
青海省からチャンボム駅までのコンテナ鉄道輸送は初の取り組みで、青海省商務庁、青海チベット鉄道、ベトナム鉄道が連携して実施したものであり、ベトナムと中国の鉄道分野における戦略的協力を具体化する事例となる。直通輸送により輸送期間は約10日まで短縮される見込みで、ベトナム鉄道は今後、中国からの輸入貨物に加え、ベトナムから中国向け輸送も拡大し、空車回送の削減による運行効率の向上を図る方針である。
同社は今回の新ルートを中国・ASEAN経済回廊における戦略的な前進と位置付け、ベトナムの農産物、水産物、繊維製品などの中国市場への販路拡大に加え、ASEAN域内の越境物流や将来的な欧州方面との連結、地域経済統合の促進にも寄与するとしている。
ベトナム財政省統計局が1~5月の輸出入25%増と貿易赤字を発表(6月3日)
ベトナム財政省統計局は、2026年1~5月の貿易総額が前年同期比25.0%増の4,451億2,000万ドルに達したと発表した。
5月単月の輸出入総額は990億7,000万ドルで、前月比3.2%増、前年同月比25.8%増となった。1~5月累計では、輸出は19.5%増の2,156億6,000万ドル、輸入は30.8%増の2,294億6,000万ドルとなり、貿易収支は138億ドルの赤字となった。
輸出では、国内企業が435億ドルで全体の20.2%を占めた一方、FDI(海外直接投資)企業は1,721億6,000万ドルと全体の79.8%を占め、前年同期比24.7%増と高い伸びを示した。また、加工製造品は1,937億1,000万ドルで輸出全体の89.8%を占めた。輸入では、国内企業が642億6,000万ドル、FDI企業が1,652億ドルとなり、生産財の輸入額は2,159億9,000万ドルと全体の94.1%を占めた。国別では、米国が最大の輸出先で輸出額は696億ドル、中国が最大の輸入元で輸入額は926億ドルとなった。
5月単月の貿易収支は52億1,000万ドルの赤字となり、1~5月累計でも前年同期の51億ドルの黒字から138億ドルの赤字へ転じた一方、FDI部門は69億6,000万ドルの黒字を維持しており、輸出入の拡大を引き続きけん引している。
AMACCAOグループが廃棄物処理・発電施設2案件を同時着工(6月5日)
AMACCAOグループ(ベトナムのインフラ・環境関連企業)は、ハノイ市とヴィンロン省で廃棄物処理・発電に関する2つの環境インフラ案件を同時に着工したと発表した。
対象は、ハノイ市スアンソン固形廃棄物処理区の「AMACCAO-Thanh Cong廃棄物処理・発電工場」と、ヴィンロン省フータン坊の「Ben Tre固形廃棄物焼却発電工場」で、いずれもAMACCAOが投資主体となる。両工場では、ドイツのMartin(廃棄物焼却発電技術大手)の焼却発電技術を採用し、ドイツのエンジニアリング技術と米国の厳格な運用基準を組み合わせた先進的なシステムを導入する。
排ガスや粉じんは欧州基準2010/75/EU(EU産業排出指令)に準拠し、処理後の排ガスは無色・無臭となるほか、排水もベトナムの工業排水基準「QCVN 40:2025/BTNMT」のA列基準を満たし、工場内で再利用することで外部へ排出しない設計とする。また、各排出指標はオンライン監視システムで管理し、データをベトナム農業環境省へ直接送信するとともに、工場入口で公開し地域住民も確認できる仕組みを整備する。
両施設は、廃棄物処理に加え、国際基準に沿った景観・建築設計を備えた環境配慮型インフラとして整備される。AMACCAOは廃棄物発電分野への投資拡大を通じて、ベトナムの近代的な環境インフラ整備と循環型社会の構築を推進するとしている。
PV GASがLNG・LPG約12万トンの受け入れを発表(6月11日)
PV GAS(ベトナムガス総公社、Petrovietnam傘下のガス事業会社)は、国内エネルギー需要の高まりを受け、LNG(液化天然ガス)とLPG(液化石油ガス)計約12万トンを受け入れたと発表した。
カナダから約7万3,000トンのLNGを積載した船舶がチーバイLNG港に入港し、ガス火力発電所向けのクリーン燃料供給を補完するほか、次回はオーストラリア産LNG約1万5,000トンの受け入れも予定している。また、米国から輸入した約4万5,000トンのLPGも到着し、民生、商業、産業分野向けの供給と備蓄能力の強化を図る。さらに、同社は2026年6~7月向けに約14万トンのLPGを手配済みで、冷蔵LPGと加圧LPGを国内生産分と組み合わせることで、国内顧客およびPetrovietnam Gasブランドの販売網への安定供給を確保する方針である。
PV GASは、チーバイLNG基地や大規模冷蔵LPG貯蔵施設などのエネルギーインフラを活用し、クリーンエネルギーの受け入れ・貯蔵・供給能力を拡充しており、2026年上半期のLNG輸入量は約35万4,000トンに達している。
今後も輸入LNG・LPGと国内産ガスを組み合わせ、発電、産業、民生向け需要への安定供給を通じて国家エネルギー安全保障の確保に取り組むとしている。
KIM LONG MOTORがVIETTEL POSTと戦略提携しグリーン・スマート輸送エコシステムを構築(6月11日)
KIM LONG MOTOR(ベトナムの自動車メーカー)は、VIETTEL POST(ベトナムの郵便・物流大手)と、KIMLONG車両の販売網、物流、技術ソリューションを軸とする包括的戦略提携を締結したと発表した。
今回の提携は、自動車生産と物流・テクノロジー分野の大手2社による協力であり、最適な輸送ソリューションを創出し、国内市場の競争力向上と海外展開を目指すものである。
合意に基づき、両社はKIM LONG MOTORがベトナムで生産する商用車の販売網を国内外で拡大する。国内では、VIETTEL POSTの顧客基盤を活用し、グループ内需要、既存顧客、物流、EC(電子商取引)、郊外(都市部以外)向けに販売を拡大する。海外市場では、Viettelグループの投資先国や海外拠点ネットワークを通じてKIM LONG MOTOR製品の輸出を進め、ベトナムブランドの国際展開を拡大する方針である。また、両社はVIETTEL POSTの全国郵便局・物流センター網を活用し、部品、補修部品、交換用資材の流通システムを構築する。これにより、アフターサービス能力を高め、供給時間を短縮する。
グリーン交通インフラ分野では、VIETTEL POSTが管理するエリアでEV(電気自動車)向け充電・バッテリー交換ステーションの整備を共同で研究・投資する。これは、エネルギー転換と持続可能な発展に対応するグリーン輸送エコシステム形成に向けた取り組みである。
あわせて、VIETTEL POSTの物流エコシステム内でKIMLONGブランドの電動バンやトラックを導入する。まずはハノイとホーチミン市で試験運用し、その後、他の地域への拡大を進める計画である。同社は、KIM LONG MOTORとの協力を通じて物流運営能力を補完し、物流エコシステムを多様化する。特にEVなど新たな輸送手段の導入により、運用効率を高めるとともに、両社が重視する持続可能な発展目標の実現を目指す。
KIM LONG MOTORがZF Groupと戦略提携しベトナム車の輸出拡大を加速(6月15日)
KIM LONG MOTOR(ベトナムの自動車メーカー)は、ZF Group(ドイツの世界的大手自動車部品・技術企業)と、駆動技術、トランスミッション、新エネルギー車向けソリューションに関する包括的戦略提携を締結したと発表した。
今回の提携は、KIMLONGブランド車の品質向上やスマート機能の強化、海外市場への輸出拡大を進めるとともに、ベトナムの自動車部品サプライチェーンの拡充と国際競争力の向上を目指すものとなる。
合意に基づき、両社はKIM LONG MOTORが生産する内燃機関車および電気自動車に、ZF Groupの主要部品・技術を導入する。第1段階では、ZF GroupがKIM LONG MOTORのバス向けに新世代6速オートマチックトランスミッションを供給し、商用車の運行安定性や燃費性能、製品品質の向上を図る。
次の段階では、ADAS(先進運転支援システム)、e-Axle(電動駆動アクスル)、ECAS(電子制御エアサスペンション)、電動化・コネクテッド技術、スマート車両管理ソリューションなどの研究開発・導入を進める。また、両社は国際基準に沿ったアフターサービス体制の構築にも注力する方針で、ベトナムや東南アジア、中東、アフリカ市場でZF製品のアフターサービス体制を構築し、純正部品供給や技術者育成を推進する。
さらに、両社は長期的には技術・トレーニングセンターを設立し、技術移転や高度人材育成、製品開発、自動車部品の国産化率向上を支援する計画である。
KIM LONG MOTORは、ZF Groupの先進技術を活用し、商用車の性能、安全性、実用性を高めることで、ベトナム、東南アジア、中東、アフリカなどへの輸出拡大を加速する方針であり、今回の提携をベトナム自動車産業の高度化と国際展開を後押しする重要な取り組みとしている。