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フィリピン医療関連製品市場における海外メーカーのチャンス


はじめに
 フィリピンの医療関連製品の市場は2014年時点で3億ドルと、日本の100分の1以下の規模であったが、2019年には5.5憶ドル(日本の50分の1)と短期間で大きく成長した。なお、フィリピンの医療関連製品の98.9%が輸入によるものであり、輸入品目はカテーテル、縫合糸、医療用マスク、CT装置、X線装置、超音波診断装置、心電計など様々である。また、主要な輸入国としてはアメリカ、中国、シンガポール、ドイツ、日本などが挙げられる。
 日本においてはフィリピンの医療関連製品の総輸入額の6%を占めており、CT、MRI及び超音波診断装置などを主に輸出している。ただし、マレーシアやタイ、ベトナムなど他の東南アジアの国に比べるとフィリピンにおける日本のシェアは低く、まだシェアを伸ばしていく余地が残されている。

医療関連製品市場の主なプレイヤー
 フィリピンのメーカーは高度な技術を必要としない手袋、サージカルマスク、注射器、注射針など消耗品を中心に製造している。一方、CTやMRIなど診断機器、手術器具など高い技術が必要とされる製品については欧米メーカーなどの輸入品が中心となっている。なお、欧米メーカーにおいてはGEヘルスケア(米国)やFresenius(ドイツ)、Siemens(ドイツ)、Philips(オランダ)などがこれらの分野において高いシェアを有している。
 また、日系メーカーにおいてもアークレイやテルモ、JMS、アトム、横井定、トーカイメディカルなど多くの企業が現地に拠点を設け、フィリピンの市場に参入している。中でもテルモは20年に渡って現地で医療機器の製造を行っており、Laguna Technoparkに3,000名が勤務する工場を有している。
フィリピンの医療関連製品市場が大幅に拡大する要因
 フィリピンの医療関連製品市場が大きく拡大している要因としては①人口増と生活習慣病、②公的保険制度の改革、③医療ツーリズムの促進などが挙げられる。市場の成長率は9%/年と推定され、2024年には8.8憶ドルに達すると見込まれており、日本企業においてもビジネスチャンスが広がっている。
1.人口増と共に非感染症の拡大
フィリピン総人口の年間平均成長率が1.5%となっており、2021年には1.1億人超え、インドネシアに次いで東南アジアにおいて2番目に人口が多い国となっている。一方、近年、フィリピンの死亡要因に占める非感染症の割合が44.9%(1990年)から69.3%(2017年)に増加し、問題となっている。非感染症の増加の要因としては食習慣の変化、経済の発展に伴う大気汚染など挙げられる。特に食習慣の変化(欧米化)に伴う心血管疾患や糖尿病、腎臓疾患、ガンなどは増加傾向にあり、今後の経済発展に比例し、これらの病気の患者は増加していくと見込まれる。
 このため、フィリピンにおいてはこれらの非感染症の治療に必要な医療機器やCT装置、X線装置、心電計など診断機器の需要も今後ますます拡大すると見込まれる。
2.フィリピン保険制度の改革
フィリピンにおいては1995年に公布された共和国法第7875号に基づき、フィリピン健康保険公社が全国規模の公的医療保険(Philhealth:フィルヘルス)を運営し、フィリピンの国民に医療サービスを提供している。しかし、フィルヘルスは医療施設との連携や財政の管理の不備など様々な課題を抱えている。そのため、フィルヘルスの加入率は80%以上に達したが、2018年の医療費における自己負担比率は53.9%に達し、国民の大きな負担となっている。
 この状況を改善するため、2019年に当時のドゥテルテ大統領はユニバーサル・ヘルスケア法(Universal Health Care法、以下:UHC法)に署名した。UHC法は全ての国民を自動的にフィルヘルスに加入させる一方、医療費用の50%以上を国が支給することを目標とし、国民に等しく高度な医療機関を利用できるように定めている。
 本法律の成立により、医療施設の整備・充実化させる必要があり、その予算を確保するために、政府は多くの政策を打ち出した。
 一つは保険料の段階的に引き上げである。加えて指定された政府が運営する機関・団体において基金を募るというものであり、例えば、フィリピン慈善宝くじ事務局 (PCSO)が900万ドルを政府運営病院に寄付を行っている。さらにタバコ・酒などに課される税率も引き上げ、その費用を医療施設の整備・充実化に充てるというものである。
 こうした施策の実施により、医療施設への投資は促進されており、医療機器の需要の拡大に繋がっている。
3.医療ツーリズムの推進
フィリピンの健康省は自国の医療サービスの3つの利点を挙げ、医療ツーリズムを推進していきたいと考えている。
 ・英語で診断・治療できる医者がいる
 ・比較的安価な医療費(手術費用はアメリカの50%~90%程度)
 ・質の高い医学教育(レベルの高い欧米の大学への留学も盛ん)と高度なスキルを有する医療専門家の存在
 フィリピン政府は医療ツーリズムを一大産業に育成することによって、その収益を医療施設の充実や優秀な人材の雇用機会創出に充てたいと考えている。このため、2000年代半ばから、政府は医療ツーリズムを推進する計画を立てていた。また、近年フィリピンの観光省は医療ツーリズムの役割を再度強調し、現在の促進対策を改善する方針が発表された。具体的には観光省と健康省が連携し、医療およびウェルネスツーリズムプログラムを運営する。また、このプログラムに伴い、公的部門と民間部門の協力で医療機関及びサービスにおけるレベルの基準を定めることにより、医療ツーリズムにおいてフィリピンが世界的な競争力を持つことを目標としている。
コロナ禍で重要となっているIT医療
 フィリピンにおいては医療関連製品に留まらず、医療ITサービスのニーズも高まっている。
 専門家によれば、2022年に医療情報管理サービスの市場は前年比7.3%~10%の成長が予想されている。これはコロナ禍に伴い医療情報管理のIT化や遠隔医療のニーズが高まってきたためであり、今後IT医療の市場はますます拡大すると見込まれている。加えて、民間医療施設は臨床診療のレベルを標準化し、より優れた患者ケア管理を提供するために、IT医療の推進を図っている。これらの分野においてはデータサイエンス、電子医療記録、臨床意思決定支援システム等のニーズが高まっており、日系企業にもビジネスチャンスが眠っており、今後の市場参入が期待される。

(2022年12月)



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