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ベトナム医療サービスの転機


ハノイの旧市街を通る救急車
 

医療ニーズが高まっているベトナム
 これまでベトナムでは、医療施設は国営施設が中心であった。ベトナム統計局のデータによると、2017年の国営医療施設は13,853件あるが、十分な“診療”が行える病院と総合クリニックは、その内の2割以下である。その他は、健康相談や簡単な救急処置などしかできない施設がほとんどである。国営病院は常に混雑している状態であり、多くの問題が発生している。患者を案内・フォローするなどの運営体制が不十分で、順番待ちが長く、予約を取るのが困難な状況であり、患者にとって、受診することが非常に大変である。また、病院側では食事を提供しないため、患者さんの家族が食事まで準備をしている。ベトナムの統計局によると2017年の、1病床当たり人口(総人口÷総病床数)は約300人である(ちなみに、日本では2018年の1病床当たりの人口は約80人である)。日本では考えられないが、ベトナムでは、複数の患者さんたちが一つの病床を共有することは珍しい話ではない。
 2018年に人口が9,500万人に達し、経済が6%以上の成長を続けているベトナムでは、急拡大している医療需要に対応するため、医療業界はこれまで以上の進化が求められている。世界銀行のデータによると、2015年のベトナムのGDPにおける医療費の比率は約5.7%を占めており、これは中国、シンガポール、タイ、マレーシアよりも高い数字である。このことからも、ベトナムにとって医療業界の向上が重要であると考えられる。

豊かになっているベトナム人が高質医療サービスを求めている
 国営医療施設の混雑を避け、良質な医療サービスを求めるニーズが高まり、最近は民間医療施設が増加している。ベトナム民間病院協会のデータでは、2016年の民間医療施設数は約3万件となり、国営医療施設の約2倍である。2017年では、入院施設を有する民間病院は212件あり、主に都会に集まっている。医療施設全体では民間の医療施設数が6割以上を占めているが、入院施設を有する病院では、民間の施設がわずか約16%しか占めていない。しかし、2016年から2017年までの1年間に設立された民間の入院施設を有する病院数は、その前の13年間の年間平均増加数の3倍以上であった。ベトナムの医療業界の発展が加速している時期だと言える。 
 ベトナムでは国民健康保険を利用すれば、8割から全額を国民健康保険が負担することになっており、患者にとって日本の制度よりもお得な制度に聞こえる。しかし実は、政府が定めた医療費用項目(定額)があり、国民健康保険の負担は、この項目に限られている。定められていない項目が多くあり、患者さんが自己負担しなければならない追加料金がたくさんある。ただし、国営医療施設は費用が安く設定されているため、民間医療施設の高価な費用と比べれば、追加料金があっても、費用を抑えることが出来る。
 一方、料金が国営施設より10倍も高い民間医療施設は少なくないが、いいサービスを提供し、最新設備も充実しているため、人気が高まっている。
 更に高度の医療を求めているベトナムの富裕層は、先進国に行って診療を受けている。最近のベトナム保健省の推定によると、2015年に海外に治療に行くベトナム人は年間約4万人であった。2018年のベトナム人の海外治療費は約20億USDとなっている。

良質の医療サービスの普及化
 ベトナム政府は、国民健康保険の加入率を向上するために多くの改革政策を図っている。2010年~2016年の間に、加入率は年間平均約3.6%拡大しており、2016年に81%に達している。2020年には人口の9割以上が国民健康保険に加入することを目標としている。
 以前、民間医療施設では、国民健康保険が使用できないなど、国営の医療制度との連携が弱かったが、健康保険の利用の促進や、国営施設の負荷を減らすために、官民共同が強化され、最近は民間医療施設においても、国民健康保険が利用できる施設が増えている。ベトナム民間病院協会によると、2018年には約600件の民間医療施設で国民健康保険が利用可能となった(この場合、国民健康保険は政府が定めた金額の範囲で負担する)。この動きにより、国民健康保険の加入率と民間医療施設の利用が更に拡大すると見込まれる。その一方、民間病院の料金に合わせ、多くの保険会社が民間病院と協力し、様々な高質健康保険プランを提供している。
 近年、ベトナムでは「財務独立化」という改革の動きがあり、従来政府の予算により運営されていた国営機関の財政を独自にする政策が進んでいる。所属制度では国営医療施設は公共であるが、財務運営が独立になるということである。この改革により、財務独立となった医療施設のインセンティブ認識が高まり、新しい医療設備導入やサービス改善を行い、よりよい経営を図っているポジティブな事例が相次いで現れている。ベトナム保健省によると、財務独立制となる施設が増えており、2017年では、財務が完全また一部独自となった国営施設は1,500件を上回っている。
 このような公共セクターと民間セクターの取り組みにより、ベトナムの医療サービスの品質が上昇し、国民がアクセスしやすくなっている。

医療の目的地になるベトナム
 ベトナムのホーチミン市の観光局によると、2017年では8万人の外国人が医療観光でベトナムを訪問している。医療観光の外国人は、主にラオス、カンボジア、アメリカ、オーストラリア、カナダなどから訪れている。ベトナムには優秀な医師が多数おり、物価と賃金の差で、先進国と比べ、安価に高度医療を受けることができる。設備や機材の不足が課題となっているが、民営化とともに、設備投資に力を入れ、国内の高度医療人材を活用し、高度医療サービスの提供に取り組んでいる。
 ベトナムの保健省によると、2018年の外国人の診療数は30万回であり、入院数は5.7万件であった。経済協力及び観光の促進に伴って、ベトナムに駐在している外国人及び観光客が増加しているため、ベトナム人に限らず、外国人向けの高品質医療サービスのニーズも今後、更に拡大すると見込まれる。
 2018年に、ベトナムの大都市ホーチミン市が観光業促進の一環として、バイリンガルの「メディカル・ツーリズム・ガイド」(医療観光案内書)を出版し、サイゴン総合病院において、外国人観光客向けの医療センターも設立している。

 継続的に経済が成長し、人口が多いベトナムでは、今後も医療業界の発展が見込まれている。しかし、現在は十分な医療サービスが広く提供されているとは言い難く、質の向上、全体的な底上げが必要である。近年、国営医療施設の民営化や民間医療施設の増加により、積極的な設備投資を行い、高度医療サービスの提供に取り組んでいる施設が増加している。今後、ベトナム医療業界で日本の高度な医療機器やシステムのニーズは、より高まっていくと見込まれる。


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