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生卵を食べるのは日本だけ?台湾の卵事情


台湾の卵文化

 台湾では卵が食生活で多く取り入れられている。台湾全農インターナショナルによると、2021年の1人当たりの鶏卵消費量は20.4kgであり、日本の17.2kgを上回っている。こうした数値からも台湾で多く卵が消費されていることがうかがえる。

 台湾では主に、目玉焼きや味付け卵など加熱済みの状態で卵が食べられている。中でも特徴的なのが、台湾のコンビニエンスストアで販売されている「茶葉蛋」という大きな鍋で煮込まれた味付け卵で、どの店舗でも見かける定番商品となっている。

 一方、日本のように生卵を食べる文化はあまり浸透していない。これは、台湾産の鶏卵が日本ほどの衛生管理がされておらず、卵白や殻にサルモネラ菌が付着している可能性があるためである。殺菌処理がされていない卵を食べることは体に悪影響を及ぼすため、卵を生で食べる習慣が広がらなかった背景がある。

 筆者は、卵好きな台湾の消費者に日本の生食できる卵が浸透するのではないかと考えている。現状では台湾で消費されている鶏卵の自給率はほぼ100%となっており、日本からの輸入はごくわずかである。さらに、台湾に殻付きの鶏卵を輸入する場合は30%の関税が課されるため、日本産鶏卵は現地で高価格帯の商品として扱われることになる。しかし、日本と食文化が近く、安全で高品質な食品に対する関心も高い台湾市場であれば、価格差があっても生食可能な日本産鶏卵を広めることができるのではないだろうか。本コラムでは日本産鶏卵における台湾市場への展開可能性にスポットを当てていく。

台湾の卵不足問題

 台湾ではここ数年、卵不足の問題が起こっていた。特に2022年の1月~2月頃にかけて卵の消費が多くなる時期に卵不足が深刻化しはじめた。主な原因は、気温の低下と鳥インフルエンザの流行が挙げられる。卵不足は1年以上続き、台湾政府は短期的な対策として外国から鶏卵の輸入を行った。

 当時、日本産鶏卵の輸入は鳥インフルエンザ発生を受けて禁止されていたが、卵不足を解消するため輸入が認められることとなった。2023年2月には、台湾政府はオーストラリアからの輸入を開始した。しかし、オーストラリア産鶏卵は値段が高い上に輸送コストも重なり、台湾産鶏卵との価格差が大きいという問題が浮き彫りとなった。また、ブラジル産鶏卵の輸入に際しては生産日と賞味期限の記載ミスによる大量廃棄が発生し、台湾国内で波紋を広げることとなった。

 鶏卵の自給率が高い台湾では、基本的に国内供給で鶏卵需要を賄っているものの、供給体制が不安定になると輸入に頼らざるを得ない現状があり、このような問題が発生した。

 一方、日本は同時期に鳥インフルエンザの影響を受けていたため、台湾への輸出は消極的であった。しかし、今後は安定的に日本産鶏卵を輸入する体制を整えることで、リスク分散につながる可能性がある。日本産鶏卵であれば衛生管理が行き届いており、有事の際にも信頼性が高い。

日本産鶏卵の輸出事例

 日本産鶏卵における海外輸出について全体像を確認していく。一般社団法人日本養鶏協会によると、2023年の鶏卵輸出額は約68億円に達しており、主な輸出国は香港・シンガポール・グアムである。中でも香港向けが最も多く、金額ベースで全体の97%以上を占めている。

 農林水産省によると、香港は鶏卵供給を輸入に100%依存しており、約2割を日本から輸入している。日本から香港への輸出量は増加傾向にあり、日本産鶏卵は香港市場で広く受け入れられている。その背景としては、円安基調による日本からの輸入の有利性に加え、鳥インフルエンザの影響による中国産やタイ産の輸入停止や価格高騰といった外部要因がある。また、日本産鶏卵が持つ衛生面での信頼性も、香港消費者に高く評価された要因の一つである。濃厚さを感じさせるオレンジ色の卵黄や食感のなめらかさが香港の消費者に好まれた。

 さらに近年、香港では卵の生食も急速に広がり、2023年頃には、「たまごかけごはん」が「TKG」としてブームとなった。香港への輸出は「生食用」と「加熱用」で区別されており、賞味期限が2~3週間である「生食用」は空輸、賞味期限が2か月程度である「加熱用」は船便が利用されている。10個当たりの販売価格は350円~1,035円と幅広く、中国産と比べると価格競争力には劣るが、一定の市場を確保している。

 一方、台湾では日本産鶏卵の流通はごくわずかである。一部の富裕層向けに販売されている商品があり、2023年には愛知県産のブランド卵「まんげつ濃厚卵」が6玉入り約1,200円で販売されていた。これは台湾産と比較して1個当たり3倍以上の価格である。また、台湾の卵ブランド「大成」は、日本の昭和産業の協力のもと、「上品語鮮蛋」という生食できる卵を2023年に発売した。こういった動きは、台湾市場における卵の生食需要の存在を示唆している。

 台湾は卵の自給率が高く、鶏卵の輸入には30%の関税が課される。この点において、輸入率100%かつ関税がかからない香港とは大きく状況が異なるため、香港同様に日本の卵を浸透させるのは非常に難しい。しかし、日本の生食可能な卵の需要は台湾にも存在しており、日本産鶏卵の輸出によって新たな市場展開が可能となるだろう。

日本産鶏卵を台湾へ

 台湾への日本産鶏卵の輸出拡大には値段以外の製品価値に重点を置くことが重要である。最大の差別化ポイントは「生で食べられる新鮮さ・安全性」である。

 台湾では衛生管理上の理由から卵の生食文化が一般的ではないが、日本産鶏卵の高い安全性と品質を訴求していくことで、「たまごかけごはん」や「すき焼き」といった日本食に加えて、台湾食に生卵をトッピングするなどの新しい楽しみ方が広がっていくのではないか。

 そのためには日本産であること、かつ殺菌処理が施された生食対応品であることが一目でわかるロゴマークの普及などの対策も重要になってくる。

 日本産鶏卵を高付加価値のブランド食材として台湾市場に位置づけることによって日本の食材や食文化への関心を高めるきっかけとなるだろう。

 

(2026年5月)

 

 

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