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経済活動に大きな影響を与える環境規制動向


はじめに
 世界では、自動車や工場などからの排気ガスによる大気汚染や、CO2排出に伴う地球温暖化によって引き起こされる異常気象、プラスチック廃棄による海洋生物への被害やマイクロプラスチックの問題など、人間の経済活動によって引き起こされた環境破壊が、人間自身の生活にも大きな影響を与えるようになっている。
 その中で、環境保護は単なる道徳的な取り組みではなく、人々の生活を守るためのものとして、本格的な活動が必要と認識されるようになってきた。
 一方で、環境規制を強めることは経済活動に大きな影響・制約を与えるために、環境規制の動向を知ることは、事業展開において重要な要素となっている。近年の大きな動きとしては、大気汚染・温暖化防止のための自動車排ガス規制及び電気自動車普及促進や、再生可能エネルギーの促進、プラスチック使用規制などが挙げられるだろう。

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経済活動に大きな影響を与える環境規制動向
大気汚染の主要因となっている自動車への規制が強化されEV化が促進
 大気汚染の重要な排出源となっているのが自動車である。世界におけるCO2の排出量のおよそ4分の1を運輸部門が占めており、また、NOxの排出量についても、およそ4割を自動車が占めている。
 自動車の販売台数は、過去十数年間で大きく伸びている。2005年の自動車販売台数(四輪のみ。商用車含む)は約6,600万台であったが、2019年には9,500万台と、1.5倍近くに増えている。特にアジア地域における伸びが大きく、世界の自動車販売台数の伸び率は、アジア地域の伸びとほぼ同一となっている。
 こういった状況の中で、自動車に対する排ガス規制が強化されており(ヨーロッパにおけるEURO6など)、環境への負荷が少ない自動車の開発が進められ、特に今後はEV化が大きな流れとなっている。2014年はEV(四輪のみ。ハイブリッド含まず)の販売台数は20万台弱であったが、2018年には130万台となり、自動車販売台数に占めるEV販売台数の割合も、0.2%から1.4%に増加している。
 今後もEV販売台数は増え続けると見られている。IEA(International Energy Agency。OECDが加盟するエネルギー諮問機関)では、各国の電気自動車関連政策を基に電気自動車普及の予測を立てており、それによると、2030年には電気自動車の新たな配備数は3,000万台にのぼるとみられている。
経済活動に大きな影響を与える環境規制動向
再生可能エネルギーの導入が促進
 CO2排出規制や大気汚染物質抑制において、自動車分野に次いで重要視されているのが、再生可能エネルギーの導入である。
 CO2排出源の40%を電力分野が占めており(図「2017年CO2排出源別割合」参照)、石炭、石油、天然ガスなど化石燃料を燃焼する火力発電からの脱却が求められている。
 CO2を排出しないクリーンエネルギーとして原子力発電所が重要視されていた時期もあったが、2011年の東日本大震災における福島電子力発電所における事故を契機に、世界的に脱原子力の動きが大きくなっている。
 その中で、太陽光や風力といった再生可能エネルギーの重要性が増してきており、多くの国でエネルギーバランスにおける再生可能エネルギーの割合を高める政策が打ち出されている。世界における再生可能エネルギー発電量は年に3~4%の割合で増加しており、2017年時点では、エネルギー全体の14%を占めている。一方で、化石燃料系の発電量も増加を続けており、全体の80%を占めている。
 ここでの再生可能エネルギーには、太陽光や風力の他に、水力、地熱、バイオガスなどが含まれている。大きな割合を占めているのは水力や固形バイオ燃料/木炭(開発途上国を中心に使用されている薪やおがくず等の木材材料や木炭)であるが、近年太陽光、風力、潮力の割合が増えてきている。
 これら再生可能エネルギーの中で、近年大きく伸びてきているのが太陽光であり、1990~2017年にかけての年間成長率は37%となっている。それに次いで風力発電の成長率も高く、23.4%となっている。
 今後も再生可能エネルギーの発電量は増加するとみられている。IEAでは、各国の再生可能エネルギー関連政策を基に再生可能エネルギーの発電量の予測を立てており、それによると、2018年は6,800TWhであったものが、2030年にはおよそ倍の12,500TWhに、2040年にはおよそ3倍の18,000TWhになると予測しており、特にアジア地域での規模拡大が大きくなるとみられている。
経済活動に大きな影響を与える環境規制動向
プラスチックゴミ含めた廃棄物の3Rを促進
 近年、エネルギー問題と共に大きな注目を集めているのが、プラスチックごみの問題である。利便性から様々な包装に使用されるプラスチック包装(Plastic Packaging)は、近年増加の一途をたどっている。例えば米国やヨーロッパにおけるプラスチックごみの発生量は、2000年と比べて1.5倍前後に増加している。また、G20における都市ごみの発生量の中で、プラスチックごみの占める割合は平均で15%となっている。
 ごみの排出量が増える中で不法投棄などによる環境への負荷も高まっており、3R(Reduce, Reuse, Recycle)が重要視され、ごみを発生させないための規制作りや、リサイクルの取り組みが活発になってきている。
 先進国においてはごみの処分(埋め立てや焼却)やリサイクルの仕組みが発達している一方で、開発途上国においてはそういった設備・システムが十分に整っておらず、屋外への投棄が多くなる傾向がある。
 今後、開発途上国においては経済発展が見込まれプラスチックゴミを含めた廃棄物の量が増加していく中で、廃棄物を適切に処理するための法整備やインフラ整備が重要となってくると言える。




 環境規制の動きは、先進国のみならず新興国においても活発な動きがみられており、例えばインドにおいてはビニール袋の使用を禁止する動きや、自動車販売におけるEV販売率を2030年までに30%にするなど、具体的な目標・数値を含んだ政策が打ち出されている。このような動きはインドのみならず様々な国においてみられており、こういった各国の環境規制動向を知ることが、今後の海外事業展開において重要となってくると言える。

(2020年6月)


 なお、当サイトの運営会社(株式会社工業市場研究所)では、現在、『海外環境規制の実態と動向 2020年度版』に関する企画調査の実施を検討しております。

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