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人件費が高騰する中国に代わる製造業の拠点として注目されるミャンマー


2016年3月、“事実上”の「アウン・サン・スー・チー政権」がスタート
 ミャンマー連邦共和国、通称ミャンマーの最近のトピックと言えば、何と言っても2016年3月のティン・チョウ氏を大統領とする新政権発足。そして、アウン・サン・スー・チー氏の国家最高顧問、外務大臣及び大統領府付大臣への就任であろう。
アウン・サン・スー・チー氏は、ビルマ(ミャンマーの旧国名)の独立運動を主導し、その達成目前に暗殺された「ビルマ建国の父」ことアウン・サン将軍の娘である。1988年に国民民主連盟(NLD)の結党に参加して書記長に就任して以来、長らく軍政が続いていたミャンマーの民主化運動を主導。1989年7月から複数回、自宅軟禁されるなど苦難の時期も長かったが、2015年11月の総選挙でNLDを圧倒的な勝利に導き、“事実上”の「アウン・サン・スー・チー政権」を樹立した。ちなみに自ら大統領とならなかったのは、外国籍の家族がいる人の大統領就任を禁じる同国憲法が、英国籍の息子を持つ同氏の就任を妨げているためであるが、同氏はNLDの圧勝後、「自らは大統領より上の存在になる」と宣言しており、また、実際にティン・チョウ統領が同氏の側近であることなどから、同政権の中心が同氏であることに疑問の余地はないであろう。

ミャンマー・日本が共同開発した経済特区(SEZ)に日系企業の進出が相次ぐ
 “事実上”の「アウン・サン・スー・チー政権」がスタートしたことは、ミャンマーと日本の関係にどのような影響を与えるだろうか。
 日本は1954年からミャンマーへの経済協力を開始。1988年に軍事政権が成立したことを受け、一時停止した時期もあるが、2011年3月に民政移管が実現したことから、2012年4月に経済協力方針を変更し、円借款を含む本格的な支援を再開している。“事実上”の「アウン・サン・スー・チー政権」による安定的な政権運営が実現すれば、経済協力がさらに活性化することは間違いないであろう。
 このような動きに呼応して日本の民間企業のミャンマー進出も加速している。2015年9月には投資許認可手続きなどが簡便化される経済特区(SEZ)としてミャンマーと日本の官民が共同開発をしてきたティラワ工業団地が開業しており、例えば、ワコールホールディングスは同団地内に現地法人「ミャンマーワコール」を設立し、2016年9月からブラジャーの製造を開始。また、王子ホールディングスも現地法人「オウジ・ミャンマー・パッケージング」を設立し、段ボール加工を含む総合パッケージング事業を行う新工場を建設するなど、この工業団地を受け皿とする製造業の進出が進んでいる。

管理職向け人材の採用コストは高騰傾向
 ミャンマーが製造業の進出先として注目されている最大の理由は、安価な労働力資源が潤沢なことだ。
 ミャンマーの労働力人口(15歳~64歳人口)は、全人口(5,141万人=2014年9月、ミャンマー入国管理・人口省発表)の約6割、3,000万人超に及んでおり、失業率も4%程度で推移していることから、労働意欲も旺盛だ。また、ミャンマーの一般労働者の月収水準は8,000円程度と言われており、今後、日本をはじめとする外国からの投資の拡大により、上昇傾向となることは間違いないとしても、当面は一時期“世界の工場”と言われた中国と比較しても、低水準で推移することは間違いないであろう。
 ただし、労働力の質という面では課題もある。ミャンマー人は熱心な仏教徒が多く、一般的に真面目で勤勉であると言われていることから、単純労働の従事者確保には大きな問題はない。しかし、政治体制の変化などによって1980年代から教育システムが劣化したことなどにより、管理職レベルの人材は不足。海外への留学経験者、海外就労経験者など、管理職向け人材については争奪戦が続いており、採用コストは当然のことながら高騰傾向にある。ミャンマーに進出する日本企業においては、このような人材を確保するだけでなく、中長期的な視点で現地ビジネスをリードできる人材の育成を図っていくことが求められるだろう。


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