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外国人が働きやすい国 シンガポール


シンガポールの発展を象徴するマリーナベイ・サンズ

ビジネス環境、世界第2位
 シンガポールと言えば、アジアのネットワーク拠点として機能し、さまざまなルーツ、バックグラウンドを持つ人びとが、ともに働く国際的な都市国家として知られている。
世界銀行が2018年に発表したビジネス環境のランキング(Ease of doing business ranking)では、シンガポールはスコア85.24を獲得し、前年に引き続き第2位となっている(世界銀行グループ「Doing Business 2019」2018年10月発表)。ちなみに、第1位はスコア86.59のニュージーランドで、日本は昨年34位から更に順位を下げ、190ヵ国中、第39位(スコア75.65)となっている。

働きやすく、住みやすい国づくり
 なぜシンガポールは〝選ばれる〟のか。シンガポールは、1965年にマレーシアから分裂して以来、初代首相リー・クアンユー氏の指示のもと、経済発展を徹底的に追求してきた。シンガポールの面積は東京23区よりやや広い程度(719.9km2)しかなく、資源となるような原料を持たないうえ、国土も人材も限られている。そのため、経済を発展させるためには外資企業を積極的に誘致していくことが不可欠であるとの考えのもと、自由貿易を推進し、汚職のない行政制度と「ゴミひとつ落ちていない」と称される環境政策を行ってきた。
JETROが行った「2017年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」によると、シンガポールの投資環境上のメリットとして、現地日系企業が挙げたのは、「安定した政治・社会情勢」(対象企業中、この項目を挙げた企業は81.4%)、「駐在員の生活環境」(同50.5%)、「言語・コミュニケーション上の障害の少なさ」(同47.4%)が回答結果の上位3つを占めており、この他、「インフラの充実」(同41.6%)、「整備された法制度、明確な運用」(同39.5%)が挙げられている。つまり、外国人が働きやすく、しかも住みやすい環境がさまざまな方面で整っているのだ。

日系企業はASEAN地域統括拠点を設置。小売業は旗艦店としての役割も
 シンガポール政府はこれまでに国の競争力を高めるため、特に地域統括拠点としての投資誘致活動を積極的に行ってきた。この結果、シンガポールに拠点を置く大手多国籍企業のうち、およそ6割が何らかの統括機能を有している(「シンガポールを知るための65章」明石書店、2016年)。
このような中で、日系企業の地域統括拠点設置の動きは2014年頃をピークに一旦の落ち着きを見せているが、直近では2017年4月にパナソニックが冷蔵庫用コンプレッサーの本社機能をシンガポールに設置、同年6月には江崎グリコがASEAN地域統括会社を設立するなど、シンガポールに対する注目度は依然として高いことが伺える。
また、小売・飲食企業の進出は年々増しており、2017年7月には無印良品を運営する良品計画が大型ショッピングモールのプラザシンガプーラ内に〝ASEAN旗艦店〟として「MUJI Plaza Singapura」を開店。総合ディスカウントストアであるドン・キホーテも「Don Don Donki」1号店を開店している。

昨今、日本でも外国人人材が急増しており、日本人及び外国人双方の視点に配慮した共生社会の実現、外国人を含めた全ての人が能力を最大限に発揮できる社会づくりが不可欠である。大手の外資企業や、優秀な外国人人材から〝選ばれる〟国であるシンガポールは、まさにこの分野におけるスペシャリストだ。もちろん、人件費の高騰や、地価・賃料の上昇など、近年日系企業にとり懸念される点もあるが、シンガポールの〝働きやすさ〟には依然として世界中から熱い視線が注がれている。外国人人材と共存し、成長し続けるシンガポールの先進的な事例や取り組みを学ぶことは、海外進出を検討する日系企業にとっても、また、少子高齢化によって人手不足が深刻化している日本でも国内で更なる挑戦を続ける企業にとっても、有意義であることは間違いないだろう。


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