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世界でも評価が高いシンガポールの医療保障制度


 

膨らむ日本の医療費、国財政の課題
 多くの先進国では医療費が高騰しており、国の財政が厳しい状況に直面している。厚生労働省の調査によると、2015年度における日本の総医療費は、約41.5兆円まで伸びており、我が国が直面している大きな問題の一つであると言わざるをえない。無論、高齢者が増えれば、総医療費が高くなるのも当然だ。しかし、現状のままだと、医療費は将来日本の経済社会に大きな禍根を残すことは十分に考えられる。「国民皆保険」とされる日本の医療保障制度について、抜本的な見直しもしくは大幅な修正が必要になってきている。

世界でも高評価のシンガポールの医療保障制度
 同じアジアに位置するもう一つの医療先進国である。シンガポールは日本と同じように、医療環境がよく、医療技術も高い。WHOが公表した2015年医療制度世界ランキングでは、シンガポールが6位と評され、アジアでは1位となっている。にもかかわらず、国の医療費は日本ほど負担になっていない。一体、なぜシンガポールは医療費負担を低く抑えられるだろう。
実はシンガポールには、日本の年金や医療保障制度のような社会保険制度がないのだ。シンガポール政府による医療保障制度は主にMedisave, Medishield, Medifundという三つの方式がとられている。これを3Msともいう。
 Medisaveは、CPF(中央積立基金)という政府による強制積立貯金制度である。この制度は、すべての被雇用者に適用され、雇用者と被雇用者が、月々被雇用者給与の6~8%に相当する金額を拠出し、個人が持つ口座内の積立金を当人やその家族の医療費の一部に充てることができる。しかし、重病や難病を患い、高額な治療が必要な場合、Medisave だけでは治療費や入院費をカバーしきれない可能性が高い。
 そこで適用されるのがMedishieldである。Medishieldは重病医療費保険制度であり、Medisave加入者すべてが対象となる強制的な制度である。国が指定した重病など、ごく稀な状況でしか適用できないため、保険金自体は比較的安い。年間費用は12 Sドルから249 Sドルと、対象の年齢などによって異なる。例えば、45歳の健康な方であれば大体114 Sドル前後となる。また、Medisaveの対象者は、病気によるリスクに対する備えをしたいのであれば、保障金額を増額することができる。その場合の年間総費用は36 Sドルから1200 Sドルとなる。
三番目のMedifundは、政府が出資して立ち上げた医療基金である。その主な目的はMedisaveやMedishieldを使用しても医療費が支払えない低所得者への支援である。政府はMedifundの年間予算として総額1億Sドルを各公立病院に交付しており、受給資格が認められた患者に対し治療費を無償提供している。ただ、総額1億Sドルとなると、国にとってかなり負担になる。実は、この出費は次のようなシステムによって賄われている。

病室のランク付け「医療費再分配としての機能」
 シンガポールの公立病院では、病室がA、B1、B2、Cという4つのランクに分けられている。ランクによって病床数、広さ、設備、看護師の人数が異なっており、ベッド代をはじめ、治療費用なども違う。例えば、整形外科で比較的一般的な手術の一つである全人工股関節置換術(THA)を受けるとしたら、約10日間の入院が必要なので、手術費も含めると、Aランクの病室であれば、総費用は大体14,000~17,000 Sドルになるが、Medisaveは適用できず、全額自己負担となる。B1の場合、総費用は大体11,000~15,000 Sドルであり、そのうち自己負担となるのが8,000~12,000 Sドルである。B2の場合、総費用は3,500~5,700 Sドルであり、自己負担率が約35%なので、患者自身には1,300~2,000 Sドルの出費となる。また、Cランクの病室なら、自己負担率は約20%となるため、さらに金額が抑えられる。高所得層に質の高い医療サービスを提供することによる収益は、MedifundやMedishieldの資金に充てられ、国の医療費負担の軽減や、低所得者への支援という役割を果たしているので、ある意味医療費再分配の機能を果たしているといえる。
 このようにシンガポールの公的医療保険は個人積み立てを行っており、低所得者に対しては、多様なニーズに応えた医療サービスで得た収益を低所得者の医療費に充てることによって国の負担を軽減している。一方、日本では、公的医療保険は個人積み立て式になっておらず、低所得者の医療費は主に国が負担している。
今後、更なる少子高齢化が予測される日本では、医療費の抑制が大きな課題である。医療費の抑制には、様々な方策が検討されているが、シンガポールのように国の負担を軽減する医療保障制度の導入も、解決策の1つではないか。


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