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介護ビジネスに熱視線!少子高齢化進むタイ


歩道を歩く僧侶に道を譲る市民

タイで進む少子高齢化。〝長寿国〟日本の知見に注目!
 日本が「長寿大国」と呼ばれるようになって久しい。世界銀行の発表によると、2016年における日本人男女の平均寿命は83.98歳で、香港(84.23歳)に次いで世界第二位となっている。日本人が長生きである理由については、食生活等の生活習慣や医療技術の進歩等が考えられるが、「介護」もまた重要なキーワードと言えるだろう。一方、日本人の長寿化と切っても切れない関係にあるのが少子高齢化問題。年々着実に進んでおり、政治・経済・社会等あらゆる面において大きな課題となっている。
 ところで、少子高齢化は何も日本特有の問題ではなく、東南アジアのタイでも近年少子高齢化が急激に進んでいる。タイ人の平均寿命は75.3歳(世界銀行、2016年)で、日本(83.98歳)より約8.7歳下回るものの、タイ情報通信技術省統計局が行った調査によれば、2014年時点で6.5人に1人が60歳以上となっており、2030年には4人に1人が高齢者になるとの予想もある。また、2016年の女性の合計特殊出生率の平均は1.48と日本(1.44)と同レベル。少子高齢化の進行スピードはかつての日本を上回っていると言われている。
このような状況下において、近年タイでは少子高齢化問題の先端をいく日本のノウハウや技術、サービスに注目が集まっている。

なかなか普及しない「老人ホーム」
 そもそも、タイでは日本の「老人ホーム」のような介護施設が極めて少ない。というのも、タイという国は「両親(祖父母)のケアは家族・地域で行うもの」という価値観が非常に根強いのだ。実は、このような考え方は日本の「親孝行」とは少し意味合いが異なっている。読者の皆様もご存知の通り、タイには熱心な仏教信者が多い。彼らにとり、「タンブン」(徳を積むこと)は生活の一部。寺の修繕のために寄進したり、朝には托鉢僧に食糧を提供したりすることが現世・来世の幸福につながると考えられており、ひいては道徳観にもつながっている。そして、「親を大切にすること」もまた、タイの人々が重視する善行のひとつとなっているのだ。逆に言えば、「親不孝者」は「徳のない人」であり、周囲からも厳しい目で見られてしまう。
 タイではケアの行き届いた介護施設そのものが少ないこともあり、高齢者用介護施設は「金銭的に苦しい人」「身寄りのない人」「死期が近づいている人」のための施設であるとの認識がまだまだ強いのが現状となっている。そのため、高齢になった親を自宅で介護せず、施設に入居させる行為が「親不孝」と見なされてしまうことが多いのだ。
 しかし、近年では少子高齢化の進行に伴い、家庭内での介護では人手が足りなくなってきており、これまでとは異なるアプローチが必要とされ始めている。

〝親孝行な介護〟で海外進出!日本型介護サービスの可能性
 タイには高レベルの医療機関があり、国民も健康への関心が高い。このことは、タイの街中を少し散歩しただけでも窺い知ることができる。というのも、町中薬局だらけなのだ。これが高所得者層となると医療費・薬代もさらに高額となり、介護をする場合には自宅に海外の介護用品を取りそろえ、月に何万バーツもかけたケアを行うこともざらにある。
 ここに注目したのが、介護福祉サービスに商機を見出した一部日系企業。主に都市部の高所得者層を対象に、高齢者ひとりひとりに合わせたケアを行っている。このような日本型介護施設の入居料は決して安くはないが、高所得者層にとってはこれまでの在宅介護と同等、もしくはより安価な介護費で利用できる。なにより、専門スタッフが24時間体制で常駐し、必要に応じて歩行訓練や痰の吸引等を行うことによる日常生活動作の改善効果は着実に表れているという。
 日本政府も日系介護業者の進出支援に取り組んでいる。国際協力機構(JICA)では、介護プランの作成方法等を指導することで、日本型介護サービスの普及に取り組んでいる。
 また、タイの大手銀行カシコン銀行(Kasikorn Bank PCL)は、東京のタイ大使館にて「タイ企業との高齢者産業ビジネスマッチング会」を開催しており、公益財団法人である東京都中小企業振興公社もこのマッチング会を支援している。
 もちろん、「介護は家族・地域が行うべきもの」との考えはまだまだ根強いことに加え、少なくとも今のところは、このような日本型介護サービスの利用者は一部高所得者層に限られている。しかし、「他者による介護」に付きまとうネガティブなイメージを払しょくし、「介護施設を利用する方がむしろ親孝行だ」と思われるような充実したサービスを提供できれば、介護用品だけでなく、日本型介護サービスが受け入れられるチャンスは多分にある。

 少子高齢化は何も日本だけの問題ではない。専門家によるきめ細かいケアにより高齢者が毎日を快適に過ごしていける可能性を提示できれば、バンコクだけでなく、北京や上海等の他地域でも日本型介護サービスが受け入れられる可能性がある。今後の動向に注目したい。


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