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市場が拡大するインドネシアのコールドチェーン


 

コロナ渦に大活躍するコールドチェーン物流 
 コロナ感染防止に推奨されているワクチン接種は、実際どのようにメーカーから各地域の医療機関まで輸送されているのか?ワクチンを安全に送り届けるには非常に特殊な方法で保管、輸送される必要がある。例えばファイザー社の新型コロナワクチンの適正温度は-70℃となっており、一方モデルナ社のワクチンは-20℃で冷凍保管されている。この様な低温状態を保ったまま製品を輸送することをコールドチェーンと呼ぶ。
 コールドチェーンとは医薬品のワクチンに限らず、生鮮食品、冷凍食品、乳製品、青果、化学品、電子部品など温度管理が必要な製品の品質を確保するために特定の温度で保管、輸送、販売する物流の仕組みを指している。温度管理が求められる製品は温度変化に敏感なため、所定の温度から外れてしまうと劣化が始まり、製品の品質自体が低下してしまう。とりわけ、厳格な低温管理が求められるワクチンは最悪の場合効力が失せることから使用不能となり、廃棄処分が基本となる。しかし、コールドチェーンを利用することで品質維持が可能となり、ロスを防ぐことができる。

インドネシアのコールドチェーン市場は続伸する
 インドネシア中央統計庁のデータによると、2014年のインドネシアの冷凍食品の消費量は508万トンであったが、2018年の消費量は663万トンまで伸びており、4年間で155万トン増加している。2020年は、新型コロナウィルスの感染拡大の影響による外出自粛の長期化で増加する巣ごもり消費は冷凍食品消費の増加につながると考えられ、更なる拡大を促進させるというのである。ちなみに、日本の冷凍食品の消費量は、日本冷凍食品協会によると289万トン(2018年)である。
 近年、インドネシアのコールドチェーン物流の市場規模の年間成長率の平均は6~7%を維持していたが、2020年はパンデミックの影響で年間成長率は3.1%になったというのだ。2021年は、経済活動の回復に加えて冷凍食品の需要の急増とワクチン配布によって市場の成長が促進され、この年の成長率は6%を記録しており、2022年の成長率は9%まで伸びると予測されている。
 現時点のインドネシアのコールドチェーン物流は主にB to B(Business to Business)であるものの、B to C(Business to Consumer)の需要も非常に高まっている。その要因としてはパンデミック中におけるEC(エレクトリック・コマース)の利用拡大と若者の都市への人口流出による生活様式の変化があげられるが、それに加えて温度管理された流通及び保管された生鮮食品の安全性に対する意識の高まりも影響を及ぼすと考えられる。
 しかしながら、今までインドネシアのコールドチェーン物流は十分に規格によるシステムの標準化ができていなということから、作業品質が一定ではないという課題がある。そのため物流現場の作業品質の向上を目指し、コールドチェーン物流の標準化に本格的に取り掛かる政府の動向がここ数年見られた。インドネシア・コールドチェーン協会によるとコールドチェーンの国家規格(Standar Nasional Indonesia: SNI)の策定は順調に進んでおり、2022年の5月~6月ごろには制定される予定だと述べた。各当局は日本の国土交通省の協力を得て、日本式コールドチェーン物流サービス規格のJSA‐S1004を活用し、規格の策定を進めている。
現地の日系企業の例
 インドネシアのコールドチェーン物流の主なプレイヤーは国内企業が大きな割合を占めているが、近年この事業に参入する企業が続出している。コールドチェーン物流の大手企業としては、PT. MGM BOSCO、PT. Diamond Cold Storage、Mega Cold Storageがあげられる。また、日系企業では、PT. NISSIN TRANSPORT INDONESIA、PT. NITTSU LEMO INDONESIA LOGISTIK、PT. Mitsubishi Logistics Indonesiaなどがインドネシアのコールドチェーン物流事業に参入している。
 その中で近年、積極的な動きを示している企業として、日系企業の川西倉庫の子会社であるPT KAWANISHI WAREHOUSE INDONESIAがあげられる。同社は2017年に倉庫業及び冷凍・冷蔵倉庫業の事業を現地で開始し、総額20億円投じて倉庫を建設した。そして、ジャカルタ都市圏において高まる冷凍冷蔵倉庫需要に対応できるように、2019年には国土交通省管轄の海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)との共同企画で今後の事業拡張の一環として取扱い倉庫の能力を4倍に高めるために冷凍冷蔵倉庫を増築した。既存棟の約5,600m2の倉庫につぎ、延床面積約7,900m2の拡張棟が2022年に完工する予定とされている。また、一昨年はインドネシアのハラール認証機関である、インドネシア・ウラマー評議会・食料・薬品・化粧品研究所(LPPOM‐MUI)から倉庫業務のハラール認証を取得し、国内でのハラール物流サービスの提供を可能にした。ハラール物流とはイスラム法に則った物流プロセスで、ハラール商品などをイスラム教徒にとって安全、安心で輸送する物流を意味している。この認証を取得することでイスラム教徒の人口が大半以上を占める同国での更なるサービスの拡充が期待されている。
終わりに
 中間所得層の増加に伴い、食の多様化が進み、今後もインドネシアにおける冷凍食品及び冷蔵食品の需要は確実に伸びている。しかし、年々高まる冷凍冷蔵倉庫の需要に対し、国内の倉庫の容量が合わないということが現状である。コンサルティング会社のCIC(Capricorn Indonesia Consult)の調査によると、現在確保できる容量は370,200トンだけであり、人口が2億7,223万人のインドネシアの全国の需要に十分応えられていない。
 市場拡大の余地の大きいインドネシアが、この先も成長を維持できれば2030年時点では世界で7番目のコールドチェーン市場になると予測されている(マッキンゼー)。


(2022年6月)




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