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代替肉産業をリードするシンガポール


食糧自給率の低い国、シンガポール
 シンガポールは華人系、マレー系、インド系などさまざまな民族で構成されており、公用語は英語、中国語、マレー語、タミール語など多言語であり、7割以上がバイリンガルである。そんな多民族国家であるシンガポールは共働きの家庭が多く、食事を中食・外食で済ませる人が多い。一方、国土が東京都の面積と同程度(728.3km²)と小さいことから、食料自給率は低く、食糧のおよそ90%を輸入に依存している。このため、気候変動の影響や人口増加によって食糧需要が高まった場合、シンガポールでは安定的に食料を確保できるのか大きな問題となっている。実際、コロナウイルスの影響に伴いサプライズチェーンが遮断され、食料が安定的に調達できないケースが散見された。これを受け、政府では食糧の海外依存から抜け出し、食糧自給率の向上を目指している。

食糧自給率向上の切り札である代替肉
 シンガポールは現在の食糧自給率10%程度から2030年までには30%程度にあげる「30×30」政策の実現にむけ、代替肉の販売および開発に注力している。なお、代替肉は大きく分けると2種類あり、植物性由来のフェイクミートと動物の細胞を培養したクリーンミートがある。
 フェイクミートは大豆ミート、グルテンミート、えんどう豆ミートなどの植物性タンパク質から作られている。特に、大豆ミートは見た目や味、サシ、霜降り、食べ応えまでほぼ肉に近しいものとなっている。
また、フェイクミートは栄養価が高く、低カロリーであることから健康志向の人物には受け入れやすい。加えて、動物性食品を口にしないベジタリアンに対応している。
 一方、クリーンミートは動物の細胞を培養したものであり、培養肉とも呼ばれる。なお、クリーンと呼ばれる所以は動物を殺す必要がないこと、動物の飼育における環境負荷(飼料の確保、動物の糞尿処理等)が発生しないためである。
以下に畜産による食肉と比較した代替肉のメリットを挙げる。
 
1)食糧不足の改善
畜産の場合、家畜にエサである穀物を与えなくてはならない。しかし、その穀物は人間が食糧としているものである。一方、代替肉はそもそも家畜が必要ないため、エサとして与えていた穀物を与える必要がなくなることから、食糧不足の改善につながる。また、広大な牧場も必要ないため、国土が狭く、食料の確保に苦しむ国において代替肉の大量生産が可能となれば、食糧事情の改善が期待できる。
2)環境問題の改善
畜産は環境に様々な悪影響を与えており、代替肉によってそれらの改善が期待できる。
 ・放牧による土壌劣化や森林減少の改善
 世界では家畜の放牧のため、陸地の半分近くを使用しており、放牧によって土地の土壌汚染や森林伐採が発生しているが、代替肉の普及によりこれらの改善が期待できる。
 ・河川の水質改善
家畜の排泄物にはリンや窒素などの有害物質が含まれており、これらを河川に流すことによって汚濁が引き起こされているが、こうした問題の改善が期待できる。
 ・温室効果ガスの排出抑制
 国連食糧農業機関(FAO)によれば、世界全体の温室効果ガスの排出量(2013年)の内、畜産業が全体の14%程度を占めており、大きな排出源となっている。特に牛のゲップやおならはその大きな要因となっているが、代替肉はこうした問題を大幅に改善できる。
3)倫理的問題の解決
 動物の生命を奪っていることに加え、食肉の多くが食べられることなく捨てられてしまっていると問題も代替肉によって解決ができる。

 このように代替肉には大きなメリットがあり、食糧自給率の低さに悩むシンガポールでは国を挙げて代替肉の普及を進めている。

代替肉産業の育成を進めるシンガポール
 シンガポールでは代替肉の普及を進めるため、様々な施策を実施している。フェイクミートにおいては、その開発を支援する専門施設「プロテイン・イノベーション・センター(PIC)」を2021年4月に開設した。この施設では1時間あたり最大で50キロのフェイクミートを製造することが可能となっており、費用を払えばどの企業でも設備を利用することができる。このため、外資系企業を中心に施設の利用枠は常に埋まっている状況である。
 また、日系企業のネクストミーツはフェイクミートの販売を目的にシンガポールへ進出している。2021年にはシンガポール限定で「鬼滅の刃」とのコラボしたフェイクミート入りの「NEXTカレー」をドン・ドン・ドンキで販売した。販売開始後、約2か月で当該製品は約7,000個を売り上げるなど好調である。
 一方、クリーンミートは高度な技術を必要とするため、一般的に普及していないが、シンガポールでは世界で初めてクリーンミートの販売を承認した。現在、アメリカのイートジャスト社は鶏の細胞から培養された鶏肉を使用したナゲットを販売している。しかし、価格は、高級鶏肉と同程度の値段であると言われている。このため、安全性や味において実際の肉にさらに近づけていくことも重要であるが、今後、普及が促進され、どれだけコストを抑えられるかが課題となる。
 なお、日本ではクリーンミートの販売は認められていないが、日本ハムや日清食品などが中心となって開発に取り組んでいる。大学研究機関等では3Dプリンターを活用し和牛のクリーンミートの構築に成功した事例や、クリーンミートステーキの作成に成功した事例などもあり、徐々に開発は進展している。
 今後もシンガポールでは中長期的に代替肉産業を育成していく方針であり、南洋理工大学(NTU)では代替肉コースを設立するなど人材の育成にも力を入れるなど、引き続き代替肉産業をリードしていこうと取り組んでいる。
 2050年には世界の総人口は97億人まで増加すると見込まれており、それに伴い、肉の需要はますます高まり、代替肉のニーズは自ずと高まる予想されている。そうした中、代替肉産業をリードするシンガポールの動向には今後も注視すべきであろう。

(2022年7月)



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